【ブログVol.13】常識 - 直感とロジックの組み合わせ

特に文化として「最適化」を好む組織では、常識あるいは良識がまったく通じないのは皆よく知っています。私たちの常識では、最適な状態の達成は幻想で、むしろ害を及ぼす行動に人を駆り立て、ほどほど満足な状態さえ遠ざけてしまいます。

新しいアイデアの価値を評価する常識的な方法とはどういうものか?

最初の常識的な質問: アイデアを評価するに必要な情報は何か?

ゴールドラット博士が情報とは「訊ねられた質問への答え」だと定義したのを覚えておいてください。その意味で、私たちには知らないといけないものが何かあるということです。ですから、私たちが意思決定しなければならないときは、その判断材料として何かを探しているということで、まさにそれが必要な情報なのです。

例題:

あなたは、組織を代表して事務用品のサプライヤーを探しています。そして、大きなサプライヤーの担当者と新しいサプライヤーの熱狂的なオーナーとそれぞれ面会します。大きな会社の担当者は、ありきたりのセールストークをするだけの疲れた様子のあまり明るくない男です。新しいサプライヤーのオーナーは、見るから優秀そうで、彼は成功すると直感で分かります。

さて、あなたが探している情報/質問の答えはなんでしょうか?

  1. どちらと契約する方が全体的に有利な取引になるか?
  2. どちらと契約する方が全体的に良いサービスを受けられるか、特にどんな緊急な要求にもちゃんと対応してもらえるか?

最初の質問は、正確な数値的答えを求めます。最初の6ヶ月間は新しいサプライヤーの方が4%安い価格を提示したとします。その後の価格は同じです。また、組織の事務用品の総費用は、売上高の0.94パーセントだとしましょう。

2番目の質問は直観が必要です。なぜなら、将来についての質問に対しては、何も正確な数字は分からないし、あなたがこの特定の質問に合う統計モデルを見つけられるとは思えないからです。

おそらく人生経験といくらかの感情と先入観をベースにしたあなたの直感では、新しいサプライヤーの方がずっと良いサービスを提供しそうな気がします。大きなサプライヤーは「得になること」をしてくれる気がしませんが、成長意欲の高い新しいサプライヤーは特別な要求にも喜んで応じてくれそうです。

この判断は明らかに感情の影響を受けており、この場合は感情と直感が一緒になって新しいサプライヤーの方を選んでいます。

ということは、結論は明白なのか?

そこがまさに、必須の制御メカニズムかつより大局的に見る手段として、ロジックを使って考えることが重要な役割りを果たすところです。

要求した水準のサービスが提供されなかったときの被害はどれくらいで、そうなる可能性はどれくらいか?

大きなサプライヤーは、あちこちで注文品が届かなかったり遅延したりするかもしれないが、1日か2日でその間違いを正すでしょう。一方、新しい会社の方は、特に速く成長しようと焦っている場合、経営資源を使い尽くし、ひょっとしてキャッシュ・フローの悪化など、より多くの困難に直面するかもしれません。また、彼らはその分野の専門知識が劣っている可能性もあります。

さあ質問: 損失の大きさはどれくらいで、誰にその被害が及ぶか?

ほとんどの組織では、事務用品の偶発的な不足でそれほど大きな影響がでることはありません。とは言え、それはいざこざの元になり、いざこざが起きるとその責任を問われる人が必ずいます。ですので、組織の業績への実際の影響はごく小さいはずですが、意思決定者にとって幸福で常識的な判断は、より安全な選択肢を選ぶことで、それは大きなサプライヤーを選ぶことです!

この場合は、コストへへの非常に小さな影響よりも安全の必要性が勝っているのが普通です。まあ、私の直感では、それはコストワールドにどっぷり浸かった組織でもそうだろうと思います。

私の所見のまとめ

意思決定には感情と直感、そして論理的な分析が関わります。私が思うに、感情は組織の意思決定には悪い影響を与えます。しかし、直感は大事な入力情報として絶対に必要です。また、大局的に別の側面の判断材料を考慮に入れて、より広い視野で最終的な意思決定しなければなりません。そのためには論理的な分析も必要なのです。


著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: Common sense – combining intuition and logic

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