【ブログVol.30】事例の分析:自分の昇進を阻む障害を取り除く

たった3人しか回答がありませんでしたが、幸いにもどの回答も検討し議論する価値がありました。かなり反応が少なかったのは、事例としては個人的なもので、あまりTOCらしくなかったせいでしょうか? それとも、人が組織の目標達成にフォーカスすべきとき、昇進したいという自然な願望はまっとうではないということでしょうか? 私はゴールドラット博士から、他人が「天使」だと思うなと学びました。それは個人としての利益に反する行動だからです。この考え方は、「人はそもそも善良である」というゴールドラット博士の基本的な前提と衝突するものではありません。ゴールドラット博士の言葉を借りれば、人は、自分にとっての利害や間違った前提など、何か理由が無い限り、害を及ぼそうとはしない、ということなのです。

私は以前の記事で、何か将来に野心のある人は、その「夢」を実現するのに自分がやるべきことの輪郭を描いた戦略を作るべきだと言いました。明らかにClaudioには夢があり、上席副社長になることはおそらく最終的な夢ではなく中間目的でしょう。Claudioは、これまで自分の管轄を率いてきたとまったく同様、安定性を維持しつつ、より大きくより収益性の高い企業にすべく、CompAdvantage社を率いたいと思っていると私は信じます。

まず私は、幹部たちの懸念を端から考慮しなかったことが障害になり得ることを示したいと思っていました。Claudioは自分の管理スタイルへの批判に気づいていたが、自分の管轄を会社の中で最も収益性の高い地域にして非常に成功しことで、それを無視していたと思います。今では、その懸念が実際に障害になろうとしています。

Michael Bolanos氏は、Claudioの状況を非常に明確に表現しています:「Claudioの試練は、性格や管理スタイルを突然変えて乗り越えられるものではない。Claudioは、そう遠くないうちに、東欧と北米の事業をフルに活かして利益を得るために、その管理スタイルとリーダーシップを行使する必要が生じる。

言い方を換えれば、Claudioは、ラテンアメリカで優れた結果を達成した彼の管理スタイルとリーダーシップをベースにした彼自身の決定的な競争力(DCE)を周囲に知らしめて、それが他の地域でも必要であることを主張し認めさせなければならないと、Michael氏は言っているのです。

しかし、彼の一番のライバルMarthaにも、大きく速い成長をもたらす新しい動きが素早くできるという別の優れたDCEがあります。ところがそういう行動は、非常にリスクが高く、大きな不安定さを引き起こす可能性があります。

したがって、2人の有力な候補者のどちらを選ぶかの核心は、安定と成長の対立です。CEOのDaleは、おそらく安定を好んでClaudioを支持しています。TOCの知識はもちろん、彼自身のDCEの整備と強化は、CompAdvantageの強いDCEに裏付けられた野心的なマーケティング&セールス・プランの構築にClaudioを導いてくれるでしょう。しかし、我々はCompAdvantageの潜在的なDCEが何か知らないし、Claudioは十分前から彼の戦略を準備していなかったようです。彼がうまくやったのは、上級副社長たちの賛成を得るために重要なラテンアメリカの事業のサポートでした。そのサポートは、Claudioが同僚との協調能力と状況把握能力に優れている証拠です。その能力は、Claudioが上級副社長たちとしなければならない心理的な会話には重要に違いありません。

Claudioにとって一つの重大な潜在的障害は彼の後継者の指名です。Davidの回答を紹介しておきましょう:「Utkan氏が示唆したように後継者の育成も重要だろう。上級副社長たちから出そうな質問:「誰が候補者の後を引き継ぐことになっているのか? Claudioはこの問いに対する良い答えを用意しておかなければならない。またそれによって、彼の部下が、彼の昇進を支持し、彼のことを褒めるような働きかけになるかもしれない。

暴君だから、Claudioが自分の後継者を選んでいなかったと仮定するのは道理です。これは上級副社長たちからは深刻な問題と見られている可能性があります。最も収益性の高い地域を引き継ぐに相応しい人物の育成はClaudioの安定性の試金石です。適正な人を選択し、彼の後を引き継ぐ者として相応しい人物だと公にするのに、彼には2ヶ月の時間があります。

Michael Bolanos氏もClaudioの後任選びはデリケートな問題だと指摘しました。Michael氏のClaudioへの大胆な提案には、自分の後任として公にAvrahamを支持するというのも含まれています。それは、彼がそうするだろうと誰も想像しない、ひねりを加えたアイデアです。それは私にとっても、非常に大きなひねりだと認めざるを得ません。もし私がClaudioだったとしたらそんなリスクは犯さなかっただろうけれども、その分かり切った危険性も込みで検討すべきワクワクするアイデアなのは確かです。


著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: Analyzing the case: Removing the Obstacles from my Promotions

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