【ブログVol.55】どうやって市場にTOCの価値を売り込むかの方向性の議論

前回の記事に活発な意見を頂いて、我々が既に成してきたことを多くの人々がもっと改善したいと望んでいるのを知って、私は楽観的になりました。

私は、最初の方向性としてある一つの構想を大雑把に示すつもりです。また、ブログの意見交換に加えてメールもやり取りするKevin Kohls氏の解決策と似てはいるが別の考え方を盛込みます。

Leo Lauramaa氏は「TOCは万人のもの」という隠れた仮定に異論を示しました。ここでは、その仮定は正しいと信じる(論理的に証明できないとき、私は「信じる」という言葉を使う)とだけ言わせてください。 TOCは、論理と良識ある観察に基づく合理的なツールを用いますが、感情や直感も大事にしています。私はTOCを包括的な経営手法だと理解しているので、リーンやアジャイルのように、十分大きな価値を生む他の方法論まで手を広げ、それらを分析してどういう場合にそれが有効で、どこを正すべきか判断したらよいと思います。私は、中規模以上の会社のマネージャーなら、理性的に議論できる能力があるはぜです。

次に挙げた私の基本的な仮定は、私が提案する方向性にとって重要なものです:

  • TOCコンサルタント同士で競争があるのは良いことだ!
    • 誰に依頼するか顧客が選べるし、TOCが正当に扱われ広く認知されるようになる。
    • 第一の競争相手は、組織をさも独立に振る舞う小さな部分に分ける現在の慣例だ。
  • TOCの真の価値は、未来永劫繁栄し続ける組織にすることだ。この全体的アプローチは、要するに、何をいつ実行すべきか組織のすべての部分が分かっていると保証できる適切な戦略を策定するということ。
    • 部分的なインプリメントでも価値が生まれることはあり得る。部分的なインプリメントから始めることを選択しても、時には、ホリスティックなインプリメントに繋がることもあり得るのは理解できる。私は、全体的な展望を持って始める方が成功する確率がずっと高いと思うけれども、それはコンサルタントと実際実践する人それぞれの戦略に属すところだ。
  • 市場にTOCを売り込む難しさの核心は、Kevin Fox氏が言うように「話が出来すぎで信じ難い」ことと、それが相当な不安を与えること。だから、売り込む相手の個人的な不安を和らげる方法を学ぶ必要がある。人は、自分以外の多くの人々が実際試して成功していることを知って初めてその不安を克服できる。

Kevin Fox氏やHenry Camp氏など、頂いた意見の多くは、もっと多くの大成功が知られることがTOC普及の突破口だという主張です。しかし、その成功を長く持続させることも必要です。TOCの手ごわい競争相手も成功例を公表しているし、持続可能な成功の証明は決して容易ではないことは、よく覚えておく方がよいでしょう。ですから、結局、成功事例はもちろん、そこに適用したTOCの洞察(知見)も知ってもらって、TOCが必ず大きな価値を生むことを、ちゃんと納得してもらわないとダメなのです。

成功への最初の障壁は、組織のトップに会って話を聞いてもらうことです。これは、少しでも注意する価値のある情報を何か聞き出せる機会を生む、有効なマーケティングの成果です。

次の障壁は、TOCの全体的な適用で著しく大きな価値が生まれることを経営者に納得してもらうことです。その達成には障害が2つあります。TOCは、特に、彼らの大々的に成功するよう助けることができて、彼らの不安を大幅に軽減できることを示さないといけません。それは間違いなく営業のミッションですが、顧客の組織の特性とそういう組織には何が決定的な競争力(DCE)になり得るかを考えた、マーケティングメッセージと万全な準備によって、しっかりバックアップされないとダメです。

3つ目の障壁は、インプリメントが必ず成功するという保証です。 これには、TOCの知識と経験が必要なのはもちろん、インプリメントを指導するTOCの専門家としての個人的な能力が求められます。また、TOCの専門家の関与が無くなった後も成功を維持するには、経営幹部はTOCの教育をちゃんと受ける必要があります。これがうまく達成できれば、もっと多くの組織が話を聞いてくれる可能性が高くなります。

では、これらの障害を克服するにはどうすればよいか?

私のソリューションの方向性は、TOCの第一人者を集めて、仮に「The TOC Consortium」と呼ぶ団体を立ち上げ、TOCの様々多くのインプリメントをサポートすることです。そのプロジェクトには、国際的に評価の高い実力者を充てて、重大な問題に対する高レベルな助言をします。さらに、おそらく、S&Tのインプリメントが容易になるよう手助けして、障害と悪い副作用を見つけ出す監査を行って、それを克服する指針を示して指導するでしょう。

そのコンソーシアムは、他を差し置いて特定のコンサルタントを押しつけるようなことはしません。そうすると同一の組織に対して矛盾した内容を含む提案をすることになるかもしれないからです。

ゴールドラット博士は、興味のある企業の経営陣との2時間のミーティングに繋げるための一連のセミナーを立ち上げました。そのアイデアは今でも使えると私は思います。その2時間のミーティングには非常に経験豊富なTOCの人間が必要です。4年間で現在の売上高と等しい純利益を達成するという、ゴールドラット博士が掲げた途方もない目標にはとても及ばないとしても、約束するレベルは高い方がよいと思います。

サポートの大部分は、主に地元のTOCの専門家に対して遠隔から提供すべきです。時々は、特定の場所にトップコンサルタントの誰かを派遣して、S&Tのインプリメント、監査の実施あるいは重大な問題の解決を支援するのは可能です。要は、あくまで支援であって、現地のコンサルタントに取って代わるものではありません。

この考え方では、現地でインプリメントする人々とコンソーシアムのコンサルタントの間に密な関係が必要です。これは、顧客、地元のTOCの人々および国際的なコンサルタントの間での、ウィン・ウィン・ウィンをベースにしたビジネス的な関係です。その価値は、知識と経験の両方に対して正しいイメージを持ってもらい、実際インプリメントの過程でその両方を使うことで成功を担保することにあります。

ここに欠けているのはTOCの教育をどうするかです。私は、TOCICOが参加してくれるか、遠隔からの教育を手頃な価格で提供する別の国際コンソーシアムが立ち上がるか、どちらかを期待しています。

Kevin Kohls氏は、これとは違ったスコープを持つ同様のコンソーシアムを考えています。彼のソリューションの主な内容を紹介しておきましょう:

The Goldratt Consortium – ブレーンストーム

  • 定期的な電話会議と多分TOC-ICO前後に会って議論する仮想のグループ。
  • グループのゴールはTOCを主流の経営手法にすることで、必要条件はお金を儲けること。
  • メンバーは、上記のゴールを追求したい人なら誰でもよい。しかし、コンサルタント、学者およびTOCの顧客も含むべきだ。
  • グループには、スループット会計、思考プロセス、CCPMなど、TOCの重要な分野でチャンピオンと認められた者が参加して作成した、S&Tツリーをベースとするホリスティックなフレームワークがある。
  • その目的には、TOCは何であり何ではないかを明確に定義し、リーン、モチベーション、慣例と習慣、変化への抵抗など、TOCに含まれない他の視点やツールをちゃんと理解できるように説明し、TOCのソリューションにどう組込むかあるいは組込まないか理解することも含まれる。
  • 非営利での教育、特に内部のメンバー向けのものは、最重要課題の一つである。
  • 彼らは、常に、自分の用いる方法をインプリメントするリードタイムを短縮しようと務める。
  • スピードと品質の面で「最良」の方法を1つ2つ提案する。ひょっとしてそれは悪い副作用を2~3起こす可能性はある。
  • 彼らは、表から見えないホリスティックなアプローチを公開しつつ、一人の専門家から他の人々にその成果を引き継ぐために、非営利で何らかの貢献をすべきである。

そして、Kevin氏は次のFRT(Future Reality Tree:未来ツリー)を加えました:


著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: Discussing the Direction for Marketing the Value of TOC

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/