【ブログVol.90】新技術に対する6つの質問をオンラインストアに当てはめたらどうなるか

2017年5月11日
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Amazonは小売りに大きな変化をもたらし、大きな小売チェーンは皆それを感じとっています。それは小売チェーンを完全には淘汰できなくても、オンラインで購入できるのは破壊的テクノロジーです。問題は、経済的に存続可能な状態を維持するために、現在の小売店は一体どういう風に変わるかです。通常の店舗は、商品や顧客にオンラインストアでは満たせない付加価値を提供するのを重視しないといけません。それは、特定の顧客セグメントに喜ばれる人的なサービス独自の味を提供して、大きな店に囲まれながらもうまく生き伸びている小さな店に似ています。

ここでの焦点は、オンラインストアの一般概念です。そこでは、インターネット上で様々な沢山の商品を展示し、買った顧客に商品を発送します。他の店と差別化するのに特別な店である必要はありません。

質問1 その新技術・製品・サービスのパワーは何か?

オンラインストアには、インターネット上で、様々な商品を提案し、注文を受け付け、安全に代金を回収して、顧客が指定した住所に購入した品物を届けるという技術と物流機能があります

質問2 その新技術が取り除くまたは大幅に緩和するのは、現在あるどんな制限または障壁か?

オンラインストアが解消する制限は、買う商品を選び代金を支払うために実際店に行く必要性です。もっと細かく言うと、この制限には、3つの異なる制限があります:

  1. リアル店舗に実際行く必要がある。それには時間と労力とお金がかかる
  2. 店舗スペースとその使い方に応じて選択肢が限られ、欲しいものが見つかる確率が低下する。
  3. 値比べして選べる可能性が狭まる。買い手はその店の価格を示される。それより安い別の店を知っていても、追加の時間と労力を費やして安い方の店まで行かないといけない。

Amazonは、リアル店舗ではどこも確保できない幅広い選択肢の書籍やCDを世界中で提供することから始めました。しかも、外出せずに買えるのです。

新しい技術で解消または軽減する制限が見つかれば、それにより生まれる新しい価値が極めて高い価値を持つ市場はどこかを分析できます。

リアル店舗に行くのが負担だと思っていますが、ひょっとしたらそれ自体が欲しいものかもしれません。 「買い物(ショッピング)」という言葉は、多くの人々にとって、実際に店に行って展示された品々を見て回って楽しい時間を過ごすことに大きな価値があることを示します。そういう見込み顧客には、店に行く制限はごく些細なことです。その人々には、店まで行く時間や手段がないときしか、オンラインストアの付加価値がありません。また、「買い物嫌い」か仕事で非常に忙しい顧客には、たぶん夜家に居ながら買えるのはとても嬉しいでしょう。

行く価値のある店から遠く離れた場所に住む顧客にとっては、オンラインで買えるのは最も価値が高い。したがって、農村部はよいターゲットです。大きな都市の顧客でも、車が無く、大きなショッピングセンターから遠く離れている人々も悪くないターゲットでしょう。

最も安い値段で買えるところを探したい人には、オンライストアは大きなメリットがあります。なぜなら、特定の商品の価格を比べて最安値の店を見つけるのが非常に簡単だからです。

因みに、この第2の質問のゴールドラット博士の表現には、次の重要な部分が抜けているのではないかと私は思います:

その新技術で生じる新しい制限は何か?

言い方を変えると、その新しい技術によって今から生じる重大な悪い副作用(NBR:ネガティブ・ブランチ)は何ですか? 新しい制限にはそのうち消えるものもあります。しかし、それ以外の制限は当面解消しそうにないので、新しい技術の価値を削ぎます。ですから、今の制限の解消で大きな価値を引き出せる市場セグメントにとって、新しく生じる制限を事前にチェックすることは特に重要です。

新しく生じる可能性がある制限:

  • コンピュータの表示は、商品を間近で見て触る感覚とは違う。画面ではいくら美しく素晴らしいものに見えても、実際にはあまり魅力がないかもしれない。
  • 返品でいつもイライラする。品質が悪かったり商品が購入者の思ったものでなかったりが度々あると、顧客に嫌な思いをさせて失望される。
  • 商品を受け取るのに時間がかかる。時には長い時間がかかることもある。しかも、購入した商品が何も届かない可能性も常にある。
  • 商品の価格はリアル店舗よりオンラインストアの方が安いだろうが、配送コストを加えた全体の金額がリアル店舗で買うより高くなるかもしれない
  • あちこち様々なオンラインストアに膨大な数の選択肢があるのは、もしかしたら喜びより苦痛になるかもしれない。最良の商品を探そうと思うと長い時間がかかる。あまり選択肢が多すぎると、購入者は無気力になって、買う気を無くし、時間を無駄にしているという苦痛が増すのが普通。
  • 人とやりとりがないと、購入する安心感と喜びが減退する。

オンラインストアが解消または大幅に軽減する重大な制限が分かると、狙う顧客セグメントが明らかになり、その人々に高い価値をもたらす適切な商品とそれに付随する必要条件が定義できます。上記の制限がちゃんと解消または大幅に軽減されない限り、新しいソリューションで生じるそれら新たな制限で、却って元々の市場セグメントが縮小する条件が増すだけです。

しかし、わざわざ店に行かなくて済む潜在的な価値を完全に明らかにするには、さらに別の質問に答えないといけません。

質問3 その制限を回避するために今行っているルール、規範または行動にはどんなものがあるか?

普通こんな質問はされないので重要な質問です。今ある制限を特定すれば、それを解消することの潜在的な価値について重要な知識が得られますが、新しく生まれる価値の真の基準は、人は制限の悪影響を小さくする方法を見つけて今の制限に対処するという事実を勘定に入れて、新しい技術を導入する以前と以後の状況を比較することです。

実際店に行く必要性への顧客の対処は、ショッピングセンターやモールまたは大規模な店舗に行く序に欲しいものをまとめて買うことです。様々な売り場が入った大規模な店舗の出現は、まとめ買い狙いを強く裏付けるものです。それぞれ特売で値引きしている店舗が集まっていると、買い手は時間と労力を効率的に使えているように感じ易くなります。ショッピングモールは、駐車スペースが充実しており、レストランやコーヒーショップもあって、買い物の時間と労力を楽しく使えるのです。

オンラインストアは、商店街を見て最近の購買習慣の参考にする必要があります。色々なものを一度に買うまとめ買いは、オンラインストアを使う人々にも影響を与える習慣になります。

質問4 その新しい技術の恩恵にあずかるには、今行っているルール、規範または行動のどこを変えなければならないか? 

オンライストアのメリットを最大限に引き出すってどういうことでしょう?

インターネット接続環境の改善に伴って、コンピュータを使う基本的な専門知識が必要になるのは確かです。安全上の問題はすべてオンラインストア側で適切に処理し、オンラインでの購入が安全だという認識を広めなければなりません。購買行動を変えるということは、つまり、インターネットで欲しいものを検索するには、顧客側にも十分な知識がなければならないということで、特に、どういうときクレジットカード情報を入力しても安全かなど、新しい安全ルールを知っておく必要があるということです。

食料雑貨のように同じカテゴリーの品物をまとめて買うような場合を除けば、オンラインショッピングでのまとめ買いは大幅に減らすべきです。本の少しでもメリットがあるとすれば、買ったものをまとめて配送してもらうオプションですが、買った品物がすべてそのオンラインストアの倉庫にある場合しか利用できません。

オンラインで複数のものをまとめ買いする意味があるもう一つの例は、特定のオンラインストアの特別セールス全体を見て回るショッピングです。これは、特にバーゲンで「掘り出し物」を買うのが大好きな人には嬉しいはずです。

現実的な意味で言うと、大抵の場合、オンラインストアでまとめ買いすることに何も新しい価値はないということです。

ほとんどの顧客には自由な時間があり、外出するか何か仕事をしたいと思っていることを考えると、大多数の顧客にとって、オンラインストアは完全に小売チェーンに取って代るものではなく、特定の品物を自宅に居ながら簡単に買える素晴らしい手段を与えてくれるものであるのは明らかです。したがって、必要な行動の変化は、オンラインで買うものとリアル店舗に行って買うものを区別することです。ですので、本当に必要なのは、インターネットで検索することにメリットがあるのはどういう時か、それが私たちの購買習慣をどういう風に変えるか自覚することです。オンラインストアとリアル店舗の双方に利益になるのは、各々の独自の付加価値を潜在的な顧客に気付かせ行動を変えてもらうことです。

店自体の選び方も見直すべき習慣です。沢山のオンラインストアを見て回るのは時間がかかるので、時間の節約が大きな価値だろうと思われます。リアルかオンラインかに関わらず、ひとつ重要な因子は、ブランドとその店での過去の体験です。リアル店舗では美しさがさらに大きな感動を与えますが、オンラインストアが感動を与える因子はそれとまったく別です。オンラインストアは、来るべき人々が何度も来たくなる感動を得られる必須の要素を見つけなければなりません。

初めての客を引き寄せて何度も来てくれる客として繋ぎ止めるのが、あらゆるオンラインストアの課題です。それには、顧客が本当に欲しいのを見られる特別で集中的な体験ができるのが必須です。それには顧客に興味がない大部分のものを省かないといけません。

オンラインストアで買うのが適切なものには次のような特徴があります:

  • 画像とその説明だけで明確に分かるもの。つまり、買うものを顧客がよく知っている。
  • 普通は地元の小売店では手に入らないもの。
  • 比較的高価で、オンラインストアなら輸送費込みでも値ごろな値段で売れるもの。
  • 重い品物で、どっちみち顧客のところに配送しないといけないもの。

質問5 抵抗されずに上記の変化を可能にするには、その新技術をどう使うべきか?

オンラインストアへの抵抗を引き起こす重要な因子は、次の4つです:

  1. 安心・安全の問題
    1. 購入者の期待通りのものがちゃんと手に入る。
    2. クレジットカードの情報が別の目的で使われたり、そういう情報を欲しがるオンラインストアやハッカーに盗まれないという信頼がある。
    3. 購入者の個人情報を他者に売ったり、プライバシーを侵害したりしない。
  2. 効率的で分かり易いナビゲーションおよび取引と支払いの成立
    • 時間と手間が節約できたと感じる使い勝手でないといけない。
      • 最初に表示する商品を何にするかが非常に重要。
  1. 商品の適切な説明。選んだ商品の使い勝手や用途が購入者の望むものだという確信できるものでないといけない。
  2. 納期と品質を守った信頼できる出荷プロセス

現在のオンラインストアは、未だこの抵抗因子に苦しんでいます。インターネットでのクレジットカード決済に対する信頼度の問題は、まずまずの答えが得られそうですが、他の問題はどれも未解決のままです。商品の特徴や外観の説明は難しく、一見似たもの同士の違いを説明するのは特に厄介です。配送も取り組み中の問題で、ドローンを使って目的地まで最早かつ便利な方法で品物を運ぶ新しい手段がいくつか出てきています。

質問6 それを武器としたビジネスを、どう構築して、どう収益化し、どう持続するのか?

オンライかリアルかに関わらず、どの店舗も自分の戦略を見直す必要があります。重要な出発点は、その価値が必要で他では絶対買わない明確な顧客にとっての特別な価値を突き止めることです。ここまでの質問は、新技術の全般的な貢献の輪郭を描いて、それを必要とする様々な市場セグメントと重要な課題は何かを指摘しました。今ここで必要なのは、その店が狙う具体的な市場にどんな価値を提供するのか詳細に定義するという、もっと的を絞った取り組みです。それは正に、TOCで言う「決定的な競争力」は何なのかを明らかにすることです。

決定的な競争力のアイデアが出たら、6つの質問に基づいた分析によって、それが解決すべき具体的なニーズが絞り込まれ、それをどう解決すればよいか、どこにビジネスチャンスがあるかが暴き出されます。

最終的には、その戦略を立てることで、経営上の意思決定に重要な次の質問に答えることになるはずです:

  1. 何を売るか? それを売るに付随して必要なサービスは何か? いくらで? 誰に売るか?
  2. どういう方法でデリバリすれば、狙いの顧客にとっての価値が最大化するか
  3. その独自の価値をどうやって市場に売り込むか? その独自の価値を真似る競合が多くなりすぎるのをどう防ぐか?
  4. 顧客のすべての懸念と躊躇にどう応えるか? 

ここで紹介したオンラインストアは、市場に参加する全プレーヤーが、慎重に分析して、より早くよりよく順応しないといけない、グローバルな変化のひとつの例です。この6つの質問は、そういう重要で不可欠なプロセスの指針になる良いツールです。

 


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著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: Applying the six questions of technology to digital stores

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

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