【ブログVol.102】私が思うHighX社の正しいフォーカシング

2017年11月16日
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この記事は、前回の記事の事例とそれに対する意見の続きです。この記事を読む前に、まず前回の記事をご覧ください。

前回掲載した架空の事例に対して、非常に興味深い意見がいくつも出ました。私はここでは私自身の分析結果だけを述べます。私は、記事に寄せられた意見のやりとり(訳注:原文に続いて掲載されているもの)を読者がすべて読み、その事例に対する自分なりの判断を下して、我々がどれに集中すべきか選択するときの、もっと一般的なジレンマを解消するにも役立つ教訓として、一般化してみて欲しいのです。

戦略・戦術(S&T)の構築とインプリメントのプロジェクトは間違いなくそうですが、TOCコンサルタントの慣例として、同時に実行する他の変革プロジェクトがあれば、どれより先にTOCのプロジェクトを実行するよう要求することになっています。その正当性は、TOCのプロジェクトは、他のどんなプロジェクトよりずっと大きく組織の未来に貢献するという仮定と、TOCのS&Tプロジェクトはパラダイムシフトに基づいたものだから、マネジメント(経営と幹部マネージャー)がそれにどれだけ注意を払うかが重要だという仮定が根拠です。

納入の信頼性と短納期オプションを武器にした決定的な競争力(DCE:Decisive Competitive Edge)の有効性は、市場にそれが満たされない苦しみが実際あるかどうかに依ります。それに、その苦痛を解消する価値が今ちゃんと理解されているかどうか、もしそうなら、TOCの専門家の助けを借りて、いかに短時間でHighX社が顧客の意識を変えられるかにも依ります。そうであればDCEは非常に有効でしょうが、そうでなければあまり効果はありません。

提案されたDCEへの期待値を左右する重要な変数は他にもあります。つまり、顧客の満足度に影響する他のパラメータが、どのくらい市場に評価されているか。どの競合にも真似できないほど顧客の重要なニーズを満すというDCEの定義からすれば、その他すべての点で会社の製品とパフォーマンスが競合他社と同等以上でないといけないのは当然です

ですから、既存製品に新機能を追加する7つのプロジェクトを再確認しないといけません。そのプロジェクトは待てますか? 答えは、その機能が本当に必要だと仮定して、それらの機能に関する競争状況に依ります。

それらプロジェクトのうち3つ4つが市場でHighX社の地位を維持するに必須だとしましょう。新しいDCEの市場への投入が整うまでそれを延期する気ですか? 納入の信頼性とリードタイムは根本的に改善するが、同時に、競合他社が提供済みの非常に望まれている新機能の投入を遅らせるとHighX社が伝えたら、かなり厄介な事になります!

答えないといけない重要な質問:

HighX社には、TOCの導入計画に加えて、必須な34つの新機能の開発にも注意を払えるだけの、マネージメントの集中力に十分なキャパがあるのか?

マネージメントの集中力(マネージメント・アテンション)は非常に曖昧な言葉です。そもそも、TOCの導入に相当の注意を払わないといけないマネージャーは誰でしょう?

そのマネージャーも、新機能の開発に相当の注意を払わないといけませんか?

TOC のS&Tツリー構築プロジェクトでは、最初の4~8日間完全に専念して、全体的な基本の考え方と関連するパラダイムシフトを理解し、導入計画に同意し、各部門それぞれに、必要な行動を洗い出し、どこに注意を払うべきか明らかにして、その実行スケジュールを立てるよう求められます。このプロセスの最初の数日は、参加者全員にプレッシャーをかけて注意を喚起し責任感を引き出すのですが、期間が限られているとしても、実行中のプロジェクトに深刻なダメージを与えるわけにはいきません。

S&Tツリーができてインプリメントの詳細な計画を立てたら出てきそうな結論の一つは、HighX社のイメージをそのまま維持するには必須でない3つ4つの開発プロジェクトを凍結することです。しかし、そうしたとしても、HighX社の現在のイメージを維持するのに必須な残り3つ4つのプロジェクトは緊急性が高いことに変わりありません。

マネージャーの注意力に対する負荷を分析するなら、S&Tのインプリメントにコンセンサスが得られた後は、注意を払う主な負担が先ず製造マネージャーの肩にかかることを忘れなでください。彼らは、投入を絞るという新しいパラダイムと、バッファ管理が示す優先順位に従って仕事を流すという、もう一つ別のパラダイムと向き合わなければなりません。

そのマネージャーたちは、新機能を開発しているプロジェクトにも、多くの注意を払わないといけないのか?

彼らは、試作品を制作して、製造上の問題を議論するいくつかの打合せに参加するよう要求されるのは確実です。そして、開発が完了したら、通常の製造プロセスにすべての変更を反映しないといけません。それは比較的ルーチンワーク的な仕事なので、製造マネージャーに大きな負担をかけるべきものではありません。

最初の結論: HighX社は、TOCSTのインプリメントと、並行で実行するいくつか必須なRDプロジェクトに労力を集中して、それ例外のR&Dプロジェクトは一端凍結し、実行中のプロジェクトがひとつ完了したら一つ再開する。

では、新しい2つの市場セグメントを探すという2つの大規模プロジェクトはどうなるの?

ここでは、マーケティングと営業の活動により大きな負荷が加わることは皆分かっています。製造におけるTOCのオペレーション、ポリシー、評価尺度のインプリメントを終えたら、S&Tのインプリメント・プロセスは、市場に新しい価値を提供するソリューションを開発するという、非常に重大な課題に直面しないといけません! しかも、そのプロジェクトでは、ソリューションの価値をちゃんと市場に売り込めるよう、営業部隊を教育・訓練しないといけません。

マーケティングのマネージャーと営業のネージャーは、新しい市場セグメントを開拓するという、もっと大規模な2つの戦略の準備をしつつ、いったいどうやってそんな難しい課題をやり遂げられるのでしょう? これは、担当のマネージャーの負荷が高くなりすぎる可能性が高いところです。3つはもちろん、同時に2つの重要なミッションに対応するのは不可能な気がします。

市場へのDCEの投入で、製造での手持ちのリソースのキャパシティへの負荷が劇的に増加する可能性が高くなるという、もうひとつ別の影響が現れます。ですので、S&Tの「収益化」の後に、卓越した納入信頼性をそのまま維持できるよう、需要の大幅な増加に備える「持続」の部分が続きます。新期の市場セグメントへの参入が成功すれば、大きな需要が生まれるのは明らかです。ですので、需要の大幅な拡大を狙う戦略的な計画を2つ同時に実行するのは、賢明とは言えないでしょう!

最終的な結論: 2つの大規模プロジェクトは、少なくともS&Tのプロジェクトの収益化の部分がちゃんと整うまで凍結すべきである。そうすれば、その時点でHighX社のイメージのカギを握る卓越した納入信頼性が需要の増加で損なわれないよう確認しつつ、その先に進むのを考えても大丈夫だろう。

 


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著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

70歳にもなってブログを書く理由

自己紹介

この記事の原文: My views on the right focusing for the HighX case

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

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