【ブログVol.116】ある中間管理職の不満 - エリ・シュラーゲンハイムの短編小説

2018年7月26日
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私の上司Christopher Logan博士は、何故MKM社にB12をちゃんと100台すべて納入できなかったのか、午後2時きっかりに彼のオフィスに来て詳しく報告するよう、私に命じた。私はその打ち合わせがどういう風になるか知っている。そういう打ち合わせは、一見友好そうに見えて、ちっともそんなもんじゃない。「我々は思いやりのある人間だ」という雰囲気かと思いきや、あなたは裁判にかけられる - あなたの無能さでその問題が起きたのではないと、一生懸に命証明しないといけない。

そんな厳しい取り調べが2ヶ月ごとに行われる。毎日よくないことがいっぱい起きるが、そんな扱いを受けるのはごくわずかしかない。そうなるのは、通常、非常に重要な顧客で大きいまたは新しい顧客がいて、そんな顧客から苦情がでて大事になり、誰かのせいにして罰するしかない案件だ。

まさにMKM社は大きくて新しい顧客だ。理由はともかく、100台中97台が合格し、正式の納期きっかりに納入したが、彼らには十分ではなかった。私は直ぐ足りない3台を5営業日以内に納入すると約束した。どうやらそれでは十分ではなかったらしく、Logan博士のオフィスに公式な苦情が入った。3%足りないだけでそんな大失敗になるほど、1台も欠かさず100台全部約束の期日に納めないといけないクリティカルなことである理由は、私には見当もつかない。

今となったら、大失敗へのFreddyの関与をあまり誇張しないように、私は自分の守りを固めるつもりだ。自分の部下のほとんどが彼と同じミスを犯す可能性が高く、そのミスではほんの一部しか納期遅延しないのは分かっている。MKM社からは2018年6月1日までに彼らの試験に合格する良品100台の納入を要求されたが、B12の生産でそんな高精度で品質不良を早期に特定できる実現可能な方法はないので、我々は120台生産することにした。Freddyの間違いは、1度未満なら基準より温度が高くても、管理限界内だと思い込んだことだ。それで通常は正しいが、MKM社の仕様書ではそうではない。それほど小さな乖離なら、非常に素早く温度が正常に戻るので、せいぜい5台しか影響を受けない。でも、安全余裕の20台のうちたった5台だと、MKM社の試験に97台しか合格しなかった唯一の理由にはなり得ない。ちなみに、我々は、自分たちの試験によって、様々な理由で除外した19台を除いた合格品101台を納入した。我々の試験に合格した4台が、なぜ同様の試験で不合格になったかは、まだ未解決の問題である。この事実に納得のいく説明ができる者は、誰一人いない。もう一度言うが、誰一人いない。

これが私が今直面している状況で、優秀な部下2人をレイオフする羽目になった去年の大失敗と同じくらい悪化しないよう、ただ願うばかりだ。その容疑は、高価な設備を破壊するという稀で不運な事故に対して十分な注意を怠ったことだ。そういう場合、Logan博士は誰が悪いのか探す権限を行使する。私は実は彼の行動は理解している。彼の上司は、他に生け贄を見つけ出せないと彼を責めるはずだ。だから、今は生け贄にならないようにするのが私のミッションだ。私は、Freddyがそんな不当な判決を下されないためにも、私がうまくやらねばと思っている。

我々現場が不快に思う部分は、顧客の真のニーズをもっと知っていたら、事態はもっとずっとましだったろうことだ。我々は顧客と直接連絡を取り合わないように言われているので、私が知ることができるのは、顧客から出てきた文書にあることだけだ。我々が見れるのは、顧客の名前、責任者の製品マネージャーの名前、詳細な説明なしの仕様一覧だけなのである。おまけに、その製品マネージャーも、顧客の真のニーズをほんの少ししか知らない。私は、MKM社担当の製品マネージャーLarry に、最初の50〜60台を5月16日、残りをその2週間後に納入すると提案した。なぜなら、いくつか技術的な問題があって、注文を2つのバッチに分けざるを得なかったからだ。Larryは、それを顧客に電話で連絡したが、何の説明もなく拒否された。

どうして?

なぜ私は、理屈がよく分からない厳しい指示に従って働かないといけないのか?

なぜ私は、Logan博士が報告する幹部には、公式の特別な儀式でしか会えないのか?

私から見えるのはLogan博士だけだ。他はずっと遠くにいるから、私とは積極的な対話はまったくない。

第一、私には妻と2人の小さな娘がいるから、この会社に留まっている。第二に、私は非常にいい仕事をしていると思っている。私はそれを証明することはできないが、経験と技術的知識が劣る他の誰かがやっていたら、MKM事件は3倍の大事になっていただろう。我々の適切な段取りと、何か良くない兆候に機敏に反応する部下の高い士気のお陰で、生産全般の品質は、ほとんど常に、私が思う非常に良いレベルを維持していた。

しかし、おかしな成果測定のせいで、我々の成績はまあ並み程度にしか評価されない。その成果測定とそこで使う怪しげなベンチマーキングによると、我々の製造コストは、同様の設備での「平均」よりやや高いそうだ。そんなのデタラメだ! 我々の意見に耳を傾けて、我々が何を何故そうするのか知ろうともせずに、我々に何をどう改善しろって言うんだ?

私は、この関係は「(我々)労働階級 対 (彼ら)支配階級」だと感じている。神の役を演じ、我々の成績を評価する人々と、その人々に逆らった仕事をする人々の関係だ。彼らは、どっかの演説で「我々は仕事をやり易く変えなければならない」と言い、彼ら自身も改善しようと思っているように見せかけている。Logan博士が自分を変えようとしているとは、私には思えない。彼は、私と私の部下を変えさせるだけだ。結局、教訓を学び、決して再びMKM事件が起きないようにするのは私だ。

そういうわけで、有望な行動プランはこうだ。事件の一切は、要求仕様をちゃんと満たせる能力がないという理由で、我々が注文を受けるのを拒否するだろうと心配して、営業が詳細な仕様の一部を意図的に隠していた結果起きたと、私は主張することにする。製品マネージャーのLarryは、営業のボスがMKM社には世界最先端の装置があると匂わせていると、我々に教えてくれた。私は当時その意味が分からなかったが、今となれば、そんな装置ならより正確な測定ができたことは明らかだ。そうだとすると、我々の装置はそんな精密な仕様は満たせないということで、我々には本当の仕様を伝えなかった可能性が高い。

そもそも、本当にそんな高い精度のスペックがMKM社の製品に必要だったのか?

事実97台は彼らの試験に合格している。それは、当社の設備でも要求のスペックを満たし得るということだ。しかし、我々の試験装置がMKM社の新しい試験装置と同じでないとすれば、どうやって最終的な品質を試験できるのか?

 


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著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

70歳にもなってブログを書く理由

自己紹介

この記事の原文: The Frustration of a Middle-level Manager – A short story by Eli Schragenheim

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

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