【ブログVol.114】ビックデータの重要性

Amir Schragenheimと私2人の投稿

ビックデータは重要ですか? どの組織もそこから大きな価値を引き出せますか?

Amirと私は、「大きな潜在性は認めるが、膨大なデータに溺れるのも問題だ」(ゴールドラット博士の著書The Haystack Syndromeから)というのが、ほとんどの経営者の究極の答えだろうと思っています。

まあ、ビックデータから見つかる価値はそう大きくないと思う人が一杯いいそうですね。ですので、非常に大きな潜在価値があると思う人々、多分私たちは、その主張を反転させないといけないようです。

狭い形のビックデータは、様々なデータベースと書式から特定のデータを抽出するクラウドソフトウェアツールを用いて、相当安価に大量のデータを蓄積し、人間であるマネージャーが本当に重要なものに集中できるよう、それらを整理するという、どこの組織にもある能力です。

もっとずっと広範なビックデータのアプローチでは、インターネットを介して自由にアクセスできる外部リソースから得られる膨大な量のデータがあります。Google、Facebook、LinkedInはそれを行うツールを提供しています。また、一定の費用でデータを検索して使える公開データベースもあります。

ここに挙げた遠隔データへのアクセスを提供する3社のように、ビックデータから多くの価値を引き出している組織、多分大組織、があるのは明らかです。それら巨大組織は、狙った特定の視聴者に広告を打つ集中的な手段を提供しています。非常に限定された市場セグメントに提案できる手段があれば、自分の顧客の好みに関する知識を得るのに使えるのです。

電子商取引部門、特にオンラインストアは、ウェブサイトにアクセスしたすべての人から取得した膨大なデータを使い、顧客の動きをすべて記録して、その顧客が何に興味があるか判断します。その蓄積したデータの分析は、さらに別の商品をその顧客に売れる絶好のチャンスを作る突破口になるのはもちろん、将来取引する新しい顧客の獲得にも繋がります。顧客一人ひとりの固有の好みを推論する以外に、買う商品を選ぶときの価格の働きなど、顧客集団の一般的な振る舞いの理解を深めることもできます。

一方、物理的な小売店は、売上実績をちょっと分析する以外、顧客の好みを反映したデータを収集することにあまり労力を使いません。顧客の情報に直接アクセスできず、もっと悪いことに、売上を伸ばすにどんなデータが役立つか知らないと、彼らはどうしようもありません。小売店は、もっと儲かるようになるに必要なデータを収集できないせいで多くを失っています。

したがって、極めて直接的な関連データを簡単に入手できる企業は、経営上の重要な問いに正しい答えが得られ、多くの価値を獲得できます。それ以外の組織はそうはいきません。

膨大な量のデータを蓄積して分析できる新たな技術が市場に登場すると、一見似ているが実は異なる2つの質問が出てきます。

  1. 既にその技術を所有しているとして、それが利益を生む使い方をできるか?
  2. 今ある障害を前提として、その新たな技術で我々はその障害を克服できるか? もしそうなら、その利益はどんなものか?

多くの組織は、重要な新技術がもたらす利益を直ぐには理解できません。つまり、最初の質問に対する彼らの答えは「No」です。

しかし、障害を克服し得るとすればそれはいったい何なのかを探る努力は、ちょっとはすべきだと私たちは考えます。組織は、今のところ、変え得ない厳しい現実と諦めていますが、新しい技術がその障害が課す限界を大幅に緩和するかもしれません。そうなれば、新たなチャンスが見えてきます。

ゴールドラット博士が提唱した、新技術の価値を評価する6つの質問の2番目は、次のように言っています:

その新技術が解消または大幅に軽減する今現在の制限または障壁は何か?

単に膨大なデータを蓄積する価値は明確でなく徒労に終わる可能性が高いので、記憶装置の分かり切った限界は、この質問の答えとして適切ではありません。それに、膨大なデータを収集して分かり易く整理する際の遅く厄介な処理のスピードを改善しても、必ず価値が増すとは限りません。

しかし、私たちには、組織が取り組む重大な問題について、より的確な情報を欲しいという願望が常にあります。決定しないといけないときでも、決して完全な情報は入手できません。ですので、変動と未知のせいで、意思決定には常に高い不確実性が伴います。この根本的な現実はずっと変わりませんが、正しく的確な情報を収集して意思決定者に伝えれば、未知は大幅に減少するに違いありません。

そこで、Amirと私は、次の制限あるいは障壁は、新たなIT技術が緩和するだろうと言ってきました:

今まで入手もアクセスもできなかったデータが必要な質問には、信頼できる答えは得られない。

たとえば、あなたの会社の今現在の製品で多くの顧客が見落としている機能・特徴は何ですか?

顧客にその質問をして答えをすべて記録するのも可能ですが、多くの人は答えてくれないかもしれないし、多分気付かず見逃したものも見たら分かります。様々な原因で突然ある商品の人気が出だしたとして、何が原因かについてのデータを分析すれば、この問いに答えられますか?

経営上重要な問いに答えられないのは、どの会社にとっても重大な制約です。多くの場合、本当に関係のある適切なデータを探しだして、効果的な分析をすれば、相当大きな価値を生むに違いない新しい情報が得られるはずです。

データと情報の間の微妙な関係をハッキリさせるために、ゴールドラット博士が1990年の著書「The Haystack Syndrome」の中で与えた「情報」の定義を挙げておきましょう:

情報とは、尋ねられた質問に対する答えだ。

この定義は2つの洞察を浮かび上がらせます。1つは、質問を投げかけることの力です。なぜなら、あなたが何か尋ねたとすれば、ほとんどの場合、自分が何かに悩んでいるときなので、その質問への答えは、どんなニーズを満たさないといけないかの答えでもあるからです。

もう一つの洞察は、質問に答えるには特定のデータが必要であり、質問を通してそのデータが情報になることです。

組織をうまく経営するには、質問して疑問を晴らさないといけません。それら一つひとつの質問は、次の2種類の経営ニーズのどちらかに必要なものを浮き彫りにします:

  1. 新たなチャンスを特定し、どうやればその価値を引き出せるか突き止めること。
  2. 新たな脅威を特定し、どうやればそれを排除または抑制できるか突き止めること。

1番目は、成功するための新たな取り組みです。2番目は、身を守ることです。両方ともすべての組織に必要不可欠です。

さて、ゴールドラット博士の6つの質問の3つ目は次のとおりです:

その制限を回避するために今行っているルール、規範または行動はどんなものか?

多くの情報源からデータを収集する手段がなく、意思決定者が決定を下さないといけないとすると、次に挙げたものを基本にしたやり方のはずです:

  • ERPまたは組織のレガシーシステムから得られた、習慣で使っているお決まりのデータを使う。
  • 問題のテーマに関して組織の中で最も詳しい幹部の直感を頼りにする。
  • 未知と本能で感じるリスクのせいで、どこでも行われている超保守的なアプローチを採用する。  

ここで最も重要な要素は、自分の経験に基づいた直感の使用です。確かに重要なデータには違いありませんが、品質には疑問が残ります。客観性の欠如、様々な個人的偏見、どんな変化であれ受容れるのが非常に遅いことは、直感の悪い面です。

直感はこれからも大きな役割を演じ続けます。しかし、真のビックデータ出現以前は入手できなかったデータに基づく確かな分析は、当初の直感(特に隠れた前提)の妥当性を確認するだけでなく、新しい直感を誘発する新たな知見を生み出す能力をもたらし、厳格な分析と直感の新しい関係を根付かせ得る可能性があるのです。

TOCの仲間は、直感だけでなく、実際のデータが最小限しかなくても、優秀なマネージャーが正しい推測ができるような因果関係の分析法があるはずだと主張しています。これは時には真実でしょうが、どの因果関係も、必ずしも本当の事実とは限らない観察結果に基づくものなので、最も頑強な論理であっても、頼れるデータなしでは、あまりに未知が多いと太刀打ちできません。

そうだとすると、膨大なデータにアクセスできるITの新たな機能を用いて、新たなチャンスと脅威を発見する能力をどうやって強化すればよいのでしょう?

このITの新たな機能を使う大きな落とし穴は、フォーカスを見失って、データの探索と分析に膨大な労力を費やしたが、結局ほとんど何も見つけ出せないことです。多くの組織にとって、これは現実の脅威です。

私たちが提案する解決の方向性は、本社機能として運営される高レベルの戦略的プロセスを構築し、特別チームがそれを下記の手順に従って運用するというものです:

  1. まだ満足できるレベルまで達成していないが達成する価値のある目標の優先順位付きリストを決定する。
  2. それら目標それぞれに、実行を阻害する重大な障害とそれを克服するために必要なものを特定する。それら障害の多くは未知が原因だと、我々は思っている。
  3. 上記に基づいて、今は十分確信を持てる答えはなく、的確な答えが欲しい具体的な質問の優先順位付きリストを提示する。
  4. 質問に答えるのに必要な特定のデータを探す。普通は外部のデータから検索するが、得たデータは中央の内部ストレージにインポートする。
  5. 最上位の目標をどうやってより多く達成するかの全体像を作る。この問いの答えは、因果関係の分析と直感を合わせて、可能なアクションの対案を示したものにする。最終的な分析結果を意思決定者に提出する。

このプロセスは、情報機関が他国に対してするのと同様です。もちろん優先順位と手段は違います。国にとって、最も重大な質問は新たな脅威であり、新たなチャンスの方はもっとずっと重要度が低く、彼らのデータ収集手段は、通常政府から特別な許可を得ないといけない違法なものです。

そのプロセスをカスタマイズして真のビジネス・インテリジェンスのプロセスにするのは、容易ではありません。上記の基本的な違いを無視して、ただ模倣するのは重大な間違いです。しかし、既に確立したプロセスとの類似性とそれから学ぶチャンスを見過ごすのも、もう一つ別の大きな間違いです。倫理、優先順位、手段の違いを前提にすれば、基本的なニーズと分析手段は相当に似通っており、ビックデータの出現は、その潜在的な価値を具現化する絶好のチャンスをもたらします

この努力の追求を価値あるものにしているのは、その根底にある新たな洞察が、大企業のどんな深遠なパラダイムとも衝突しないという単純な事実です。

私たちAmirと私は、そのような取り組みに参加できるのをうれしく思います。ビックデータの価値をもっと深く探るというテーマでウェビナーを開催しました。その録画ビデオは、TOCICOのサイトhttps://www.tocico.org/page/replayで見れるんじゃないかと思います。

私たちは、新たな洞察を得て非常に厄介な質問に答えるシミュレーションの潜在的な価値について、別の記事で取り上げるつもりです。実際どんな新技術もでそうすが、ビックデータみたいに、シミュレーションは、極めて大きな価値をもたらす可能性を秘めていますが、その深刻な落とし穴に引っかからないよう特別な注意が必要です。


著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

70歳にもなってブログを書く理由
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この記事の原文: The importance of Big Data

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