【ブログVol.92】オンラインストアが超えないといけない大きな障害

 Eli SchragenheimHenry Camp氏共同の投稿です。

電子商取引は、様々な多くの市場セグメントで実質の付加価値を提供しています。この新しい技術の価値については、「新技術に対する6つの質問をオンラインストアに当てはめたらどうなるか」という以前の記事で分析しました。その新しい価値は小売りビジネス全体を変えます。しかし、それは単に破壊的な技術というだけではありません。オンラインストアは、自分の生存を脅かす大きな脅威にさらされているのだから、自暴自棄になる危険性を抱えています

ひとつひとつのオンラインストアが一番に問われるのは、次の質問です:

他のオンラインストアと比較して、どんな付加価値を提供できるか?

この質問のネタは、時間が経つとどんどん危険になる巨大で邪悪な障害です。有望な顧客の視点から見て、そのオンラインストアで買うか、別のオンラインストアで買うか、違いは何ですか? 従来のレンガ造りやモルタル造りの店舗とは違って、デリバリのロジスティクスが整っている限り、所在地は問題ではありません。

ゴールドラット博士は、特定の市場セグメントではどんな手ごわい競合よりも勝っているという意味で「決定的な競争力(DCE:Decisive Competitive Edge)」という言葉を考え出しました。さらに、彼はそういうDCEを獲得する条件を示しています。

  • 他のどの競合も満たすことができない、または満たそうとしないニーズに応えること。
  • 同等の価値を提供するのは、通常、運用効率やコスト低減といった、従来のビジネスパラダイムと矛盾するという理由で、競合他社が追随するのを嫌がったり遅らせたりしている。
  • その市場セグメントにとって重要な他のパラメータについては競合他社と互角である。

強力なDCEが無い直接の影響は、顧客には価格以外に区別する手段が無くなることです。インターネットのこういう現実が、オンラインストア同士で価格を比較するサービスを後押してきました。だから、どんな商品であれ、顧客は素早く容易に最安値でそれを売るオンラインストアを特定できるのです。

オンラインで買い物する顧客の多くは、気に入った商品と価格が見つかると、条件反射的に買います。大多数のオンラインストアが競い合っているのはそういうところであって、お互いに相手に勝るものは何もありません。彼らは、共通して、幅広く豊富な品揃えで非常に安く商品を提供しており、マインドシェアの獲得または維持を期待して、過去来た顧客に電子メールを多量に送信します。さらに、見込み客が欲しがるものを推測するのに人工知能を導入しています。これってDCEですか? はい、もしあなたがライバルより遥かに勝っているなら。問題は、非常に競争が激しいので、どんな差も非常に短時間で縮まってしまうことです。

競合に対する頼れる差別化要因が価格しかないと、スループット率(マージン/売上)が低下して、そのオンラインストアは2つの選択肢の何らかの組み合わせを見つけざるを得なくなります:

1つは、経費を削減して現状の売上で利益を追求することです。しかし残念なことに、オンラインストアの主な経費は、迅速で信頼性の高いデリバリだけでなく、マーケティング活動にも充てないといけません。

明らかに経費の削減は良くないと思えるとしたら、ほとんどのオンラインストアが、売上が伸びるのを期待して、さらにお金を使って大幅に価格を下げるという、逆のアプローチを取る理由が解かるでしょう。スループット率が落ちてOEが上がるので普通は当期損失が出ますが、ひょっとしたら売上は大きく伸びるかもしれません… そうするうちいつか、そのオンラインストアの経済規模が利益が出るくらいの規模になるかもしれません。しかし、そのために必要な堅調な売上の伸びは、投資家の資金が潤沢にあって新しい競争相手の参入コストが非常に低いので、どんどん難しくなっています。そうなってくると、あるオンラインストアが破綻したとして、それ以外の生き残ったところは、今は無き競合から買っていた顧客を呼び込むマーケティングに惜しみなくお金を使うしかないと感じるのです。しかも、生き残ったところは、またちょっと価格を下げて、これまで以上に新しい客を呼び込もうとします。これがインターネット市場の悪循環です。

オンラインストアは、価格以外の決定的競争力をどうやったら獲得できるか?

初めに明白な事実を言うと、これまでのところ、オンラインストアの本当のDCEは唯一非常に大きいことです! それでAmazonとAliBabaは既に地位を得たが、他はどうすればそんなに大きくなれるのだろう? 成功した大きなストアが提供できる付加価値には3つのタイプがあります:

  1. 失敗するわけがないという自信
  2. 幅広い豊富な品揃え
  3. 低価格で商品を提供しても成功できる力   

ひいきにしてくれる顧客基盤を獲得するために、小規模なオンラインストアにできることは何か? これは、世界中で熾烈な価格競争にさらされているどのオンラインストアにとっても、最も重大な問題です。

この悪循環を断ち切ることが可能な方向性はいくつかあります:

強力なロイヤリティー・プログラムの構築

ロイヤリティー・プログラムがうまく機能することは航空会社が証明しています! 景品が貰える効果だけでなく、特別なVIP待遇が顧客に与えられるインパクトが示されたのです。このロイヤリティー・プログラムのコンセプトをオンラインストアに翻訳するのは、簡単だとはとても言えませんが、新たなチャンスを生みます。今の共通した考え方は、顧客が将来何か買ってくれる確信も無いまま、何か買った人に価値を提供しようと、闇雲にお金を投資しています。そういう考え方のせいで、特に利益が小さいオンラインストの現状では、そんなロイヤリティー・プログラムを真似るのは難しいのです。

この方向性を追求する本当の難しさは、景品と値下げだけでなく、お得意顧客に特別なVIP待遇を提供することです。それは、おそらく、Amazon Primeの高優先度出荷と無料配送、Zapposの無料返品、あるいはその他DCEの一般的なアイデアのような特権が与えられた、クラブ会員だけが買える最高の商品パッケージのようなものでしょう。

それでも、ロイヤリティー・プログラムもコピーされます。そうしなかった航空会社がありますか? 因みに、DCEの”D”は決定的という意味です。それは、また再び、少なくとも何年間は競争相手が真似できないか、その余裕がないように、競争相手を再び大きく引き離すために、累積の利益余剰金など大きな優位性を開発者が確保できるだけの十分に長い間、他の者がそれをコピーできないという意味です。オンラインストアでロイヤリティー・プログラムの排他性を維持するには、正にオンラインストアが意図的に起こした問題、あるいは、どの店も解決できていない問題、どちらかには対処しないといけません。

放置された市場セグメントについて一言コメント: 富裕層は、低価格しか口にしないオンラインストアは積極的にアクセスしていません。比較的豊かな人々は、払えるというだけではお金を出すのを嫌いますが、価値の高いものは高くても喜んで買います。会員を特別扱いするロイヤリティー・プログラムは、彼らが欲しがるものです。オンラインストアがこの客層に入り込む方法をもし見つければ、彼らはアンチフラジャイルになるはずで、そういう努力をする甲斐があるはずです。

適切な商品ミックスの選択

通常の店舗は、物理的に商品の在庫を持って展示しています。仮想店舗の方は、品物の写真しか見せられません。したがって、オンラインストアは、お勧めの商品ミックスを選ぶ必要はなく、非常に多種多様な類似品を展示して販売できます。その一方、どれだけ多く展示しようと事実上自由ですが、これまでの調査研究によると、買い物客は、気楽に楽しみたかったのに、欲しい針を干し草を掻き分けて探さないといけないのには、もうウンザリしていると分かっています。

オンラインストアが特定の商品の写真を表示しているのは、どういうことでしょう? 実際には、その商品は売り物だと言っているに過ぎません。その店の公式な推奨品ではありません。「それを買う人もいる。だから、我々はそれを表示している。」 と言っているだけです。

もしそのオンラインストアがこの商品は良質で価値が高いと明確に公言したらどうなるでしょう? 当然、消費者は、どうせ店が一番儲かる品物を推すに決まっていると思います。そういう利己的な行為の疑いを晴らすことができたら、個人の買い物客が自分に合うものを自分で選ぶのをちゃんと助けることは、特に非常に大きな付加価値があります。大きな小売店は、すでに顧客に合った選択に対する責任をすべて放棄しています。適切な選択を助ける必要性は、多くの商品の多くの売り手にとってまだまだ現実です。ですから、適切な商品ミックスが特定しら、純粋な意図を推測しながら、本当に客自分のニーズに合うものに顧客を導くのは、正に決定的な競争力です。

顧客支援の一部は仮想的な手段で行うことができて、どの商品がどのニーズを満たすか分かる情報を表示する、あるいは、リアルタイムでテキストメッセージを表示したり、買い物客とライブで話したりすることさえできます。このようなサービスは、オペレーションが複雑になりコストが増えて問題に見えますが、ひょっとしたら、その特定のオンラインストアをユニークな存在にして高レベルの顧客を引き付ける、独自の価値を確立できるかもしれません。

商品の引き渡しを特別な体験にする

オンラインストアの顧客は、受取るまでの時間は幾分融通が効くのは事実です。もし待つのが嫌なら、その商品の在庫を持っている地元の店から買うしかないでしょう。これは、商品をどう自宅や職場に届けるかに無頓着だという意味ではありません。殆どのオンラインストアは配送会社と提携して出荷します。これは、配送会社が配送する商品を他のすべての物とまったく同様に扱うということです。ちゃんと物を目的地に届ければそれで十分なのです。

高級品セグメントで、配送業者が本当にオンラインストアの代理を務めたらどうなるでしょう? もしこれが実現可能なら、必ず顧客が物理的に商品を確認してから、そのまま受け取るか返えすか決めることができるという、商品引き渡しのニーズを簡単に満たせます。たとえば、2〜3サイズの品物を一緒に届けて、顧客に最もフィットする品を選べるようにすれば、衣服のサイズの問題が解決するでしょう。買い手は、実際触って2つの競合ブランドから好きな方を選ぶこともできます。

これでは実際やるにはコストが高すぎないか?

これは、おそらくオンラインストアのマネージャーが自身に問う最も普通の質問だとは思いますが、正しくない疑問です。本当の問題は、そういうサービスに喜んでお金を払う顧客がいくらかでも居るかどうかです。このサービスを望む顧客がいるなら、価格だけの問題ではありません。これで一安心!

インターネットは大変化をもたらしました。我々はまだその影響を理解できていません。インターネット経済にはいくつか破壊的な側面があります。顧客数と顧客の詳細な情報が成功する十分条件だという信念はおそらく終わっていますが、タダで価値が得られると顧客に思わせたダメージは依然残っています。今まさに、因果関係を深く分析して、インターネットで私たちのニーズに応える価値、その真の価値をどうやって引き出すかを描くときです。一般的な電子商取引と個人向けのオンラインストアは、特にそういう分析を始めるに適す成熟した領域です。それをうまく素早くできている者は、売上を大きく伸ばすだけでなく、不釣り合いに大きすぎる利益が得られるDCEを獲得します。


著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: The huge obstacle digital stores have to overcome

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/