【ブログVol.103】MTA(アベイラビリティ保証の見込生産)とMTO(受注生産)が混在した環境にうまく対処する

2017年12月4日
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Staff managing warehouse logistics in an on-site office

2000年ごろ、TOCに次のような重要な洞察が現れました:

数量と納期を指定した顧客からの注文と
見込生産のための製造オーダーは、明確に区別しないといけない!

これは、顧客の注文で生産する数量と見込みで生産する在庫の数量を纏めて製造する、従来のやり方とはまったく違います。TOCでは、顧客からの納期が違う複数の注文を1つの製造オーダーに纏めるのはキッパリやめにしました。しかし、それ以前は、TOCの運用でも、見込生産(MTS:Make to stock)の製造オーダーに人為的な納期を割り当てていました。在庫の製造オーダーには納期が不要だと理解されたことで、TOCは真の意味で受注生産(MTO)と見込生産(MTS/MTA)の分離を達成しました。つまり、時間と在庫という2つの異なる種類のバッファを使うべき、2つの異なる種類のフローが存在すると気付いて、製造プロセスが大幅に単純になったのです。

売れ筋はもちろん、比較的よく売れて安定した需要がある標準品は、アベイラビリティを保証する見込生産MTAが適しています。そして、完全な特注品は、当然、MTOが適します。この2つのグループの間には、MTOかMTAかどちらかが適す製品があります。また、どちらにもなり得る領域もいくつかあります。たとえば、売れ行きは悪いが、市場からは多少時間がかかっても欲しいと思われている製品、または、求められる納入リードタイムは1日以上でも、今の製造リードタイムでは間に合わない場合。

時には、通常のMTA同様、同じ商品(SKU)にMTOとMTSを組み合わせて使われるケースで、在庫バッファ全体より大きいかもしれない非常に稀な大量の在庫生産は、MTOとして扱った方がよいでしょう。もう1つ割とよくあるケースは、自動車メーカーのような大手顧客との取引で、顧客からサプライヤーに数週間前に発注量の見直しが定期的に示されるが(ローリングフォーキャスト)、現場はそれと少々違う量で使うのが慣例になっているケースです。その場合は、MTOとMTAの組み合わせが解決の方向性として好ましいでしょう。

タイムバッファに従うMTOと在庫バッファでコントロールするMTAの製造オーダーを両方同時に処理するところでは、両方が同じリソースのキャパを取り合う状況がごく普通に起きています。TOCはそれらの分離を保つのに効果的で、そのお陰でどのタイプのバッファのものであれ、製造オーダーひとつ一つ、バッファ管理によって適正な優先順位が与えられます。

MTAMTO両方を含む製品構成の製造環境で、よくある問題は何か?

MTOのバッファは時間です。納期からバッファの時間分先行して製造オーダーが現場に投入されます。ですので、バッファの消費は線形で、毎日同じペースで消費されます。TOCの運用法で重要な進歩は、計画負荷、つまり最も弱いところ(制約あるいはCCR)の負荷を使って、新しく入る案件の「安全な期日」を決めることでした。これによって、新しく入ってくる需要に基づいて約束する納入リードタイムを長くして、一時的なピーク需要を均すメカニズムが提供されます。この安全な期日のメカニズムで負荷を均すことによって、安定した納入信頼性を保証するのです。オフピーク期は、会社の戦略によっては、短めの納入リードタイムを提示するのも可能でしょう。しかし、そういう提案は、いつも短期で納入してくれると顧客が勘違いするマイナスの副作用が生じ易く、本当に短い納期で適切な価格でも、割り増し料金を払うのを顧客が拒否する可能性もあるので、注意深く検討しなければなりません。

MTAのバッファは在庫量で測るので、バッファの状態は実際の売上に左右されます。その直接の結果として、1日で製造オーダーのバッファが緑から赤に一気に変わることもあり得ます。

その一方、売上が非常に少なくて、緑の製造オーダーが、非常に長い間、緑のままでいるかもしれません。バッファ管理の優先順位リストで見ると、全体として、MTOオーダーは安定したペースを保つのに対して、MTAオーダーの方は順位が大きく動くのが分かります。

この振る舞いの違いは、次の疑問には無関係です: MTOオーダーとMTAオーダーの2つが赤のとき、どっちがより緊急性が高いのか?

この場合は、次の洞察を頭に入れておかないといけません:

バッファ管理は、赤オーダーすべて約束どおり納入できるチャンスが公平にある限り、有効に機能する!

MTOもMTAも、市場に広く宣言した約束です。TOCは、オペレーションを安定させる能力があり、約束をすべて果たせるという信頼性を獲得して、それを決定的な競争力(DCE:decisive-competitive-edge)にします。そうなると、1つでも市場への約束を破れば、どのオーダーを遅らせるかで対立が生じて、次のような新しい問題が出てきます:

約束を破った場合、どのオーダーがよりダメージが小さいか?

バッファ管理のアルゴリズムでは、オーダーの規模と得られるスループットは勘定に入っておらず、顧客の識別を無視します。しかし、(一時的にせよ)全部の約束は守れないことが明らかな時には、顧客は誰か? が本当に重要な情報になります。

その答えから、当該の顧客がどう反応するか、その顧客と取引のある他のビジネスにどんな影響が出るかについて、さらに多くの疑問が吹き出てくるはずです。

そのようにして、MTOオーダーとMTAオーダーのどっちのバッファが黒になるかで決着がつかない場合は、どれだけ損害が出そうかが決定因子になり、MTOオーダーかMTAオーダーのどっちを優先するか、ひょっとしたら容易に決まるかもしれません。

因みに、MTOとMTAの混合環境では、次の質問が重要です:

MTOオーダーとMTAオーダーは、最も弱いリンク(CCR、制約)のキャパシティを、どれだけの比率で消費するか?

たとえばMTOで40%、MTAで60%の「キャパシティを確保しておく」のは、前述の「安全な期日」のメカニズムを使って、MTO部分の負荷を平滑化しないといけないからです。私たちは、そうするために、平均として、毎日、使用可能な全キャパシティの40%をMTO専用に空けておくと仮定します。そうすれば、MTOオーダーの計画負荷、つまり今あるすべてのMTOオーダーを処理するのに最も弱いリンクがどれだけ時間がかかるか計算できるようになります。その時間は、日当たり全キャパシティの40%しか使わないとして日付に変換されます。その日付は、最も弱いリンクが今受けたばかりの新しいMTOオーダーの処理を委ねられるだろう日付を示します。また、そのオーダーの安全な期日は、上記で計算した計画負荷の日付にそのオーダーのタイムバッファの半分を加えた日付です。

MTOオーダーの安全な期日の計算のもっと詳しい説明は、他で探してください。この非常に簡単な説明は、混合環境では、その計算にMTOオーダー用に確保したキャパシティの平均の比率が必要なことを説明するためのものです。(訳注:たとえば、From DBR to Simplified-DBR

因みに、40/60の比率だと言うと、潜在的に能力制約リソース(CCR)になる可能性が高い、最も弱いリンクのキャパを100%使い切る計画になっていると誤解されるかもしれません。それは大きな間違いです。MTOの納入信頼性とMTA適用商品の優れたアベイラビリティを常時維持するという約束を守るには、一定レベルの保護能力(protective capacity)が間違いなく必要です。それに加えて、さきに述べたMTOの安全な期日を見積もるメカニズムをちゃんと機能させるには、予想外の故障、やり直し、そして主にキャパシティの不正確なデータによるロスをカバーする保護能力も必要になります。

MTAを適用する商品の優れたアベイラビリティを維持するには、負荷の偶発的な急増の影響も考えて、より高い保護能力が必要になります。

Goldratt博士は、混在環境も含めMTA環境では、どのリソースも、稼働率がキャパシティの80%を超えないようにしてほしいと言いました。ゴールドラット博士の懸念は、MTAを適用する商品の総需要の変動だけでなく増加にも対処できる十分な時間の確保でした。多くのシミュレーションで、需要が増加しているときに突然赤バッファのオーダー数が上昇したら、多くの品物が欠品するのは時間の問題だと分かりました。ですから、大きなバッファを確保していても、保護能力が不足すればその影響は短時間しか抑えられないことに注意してください。そんな時に動的バッファ管理(DBM:dynamic-buffer-management)を使うと、そのうち状況が却って悪化します。なぜなら、バッファを大きくすることでその時点の需要が増加して、余りに多くの赤バッファのオーダーが弱いリンクの限られたキャパを奪い合って、そこがボトルネックになってしまうからです(訳注: 通常の在庫補充に加えて、新しい目標在庫まで在庫を増やすための製造オーダーが追加投入されることになるから)。この段階での応急対策は、できる限り早くキャパシティを増やす手段を探す一方で、バッファを減らすことに違いありません。特にMTAの場合、保護能力に余り大きな耐久性を試そうとしない方が良いでしょう。

最も弱いリンクの平均の稼働率を80%に抑えた背後の考え方は、総需要が上昇しても、すべての約束を守る会社だという評判に傷がつく前にキャパシティを増せるチャンスを残しておくことです。

内部の能力制約リソースを理論的なキャパシティの80%までしか使えないという制限を守るのは、相当に難しい問題です。さらに潜在的な需要が見込めるなら、もっと制約から絞り出したい誘惑は相当大きいはずです。しかし、制約を過度に使うリスクは大きく、そのせいで卓越した信頼性という決定的な競争力を失う可能性も高いのです。

これに対してゴールドラット博士が提案したソリューションは、特段の約束をしない、あるいは非常に限定的な約束しかしない別の市場を持っておくことです! たとえば、制約がアイドル状態なら、先々のアベイラビリティの保証は一切せずに、その市場セグメント向けの在庫品を製造してもよいでしょう。それらのMTSオーダーは、間違いなく「最下位の優先度」のオーダーで、緑バッファのオーダーよりも優先順位が低くてよいのです。

このアイデアは、次回の記事でこのテーマを完結させるのに良い、下記の重要な洞察に基づいています:

顧客に高い価値をもたらす特別な約束は、特定の市場セグメントに向けるべきものである。
その外の市場セグメントには、もっと拘束力の弱い約束をすればよいだろう。

 


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著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

70歳にもなってブログを書く理由

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この記事の原文: Managing a mix of make-to-availability (MTA) and make-to-order (MTO)

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

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