【ブログVol.69】TOCの視点: ある偉大な実践的思想家に敬意を表す

2016年8月23日
/ / /
Comments Closed
Share

Dr. Alan Barnard氏と私Eli Schragenheim2人の執筆

私たち2人はゴールドラット博士に会うずっと以前からHerbert Simon教授という名前に出会っていました。1978年にノーベル経済学賞を受賞したHerbert Simon教授 (1916-2001)は、米国の政治学者・経済学者・社会学者・心理学者・コンピュータ科学者です。また、Simon教授は、人工知能、情報処理、意思決定、問題解決、組織論、複雑系、コンピュータシミュレーションなど、今日最も重要な多数の科学分野を築いた祖の一人でした。

彼は限定合理性(bounded rationality満足化(satisficingという言葉を造りました。

限定合理性とは、私たちが決定を下す際、私たちの合理性は、自分の決定の結果を予測するに必要な情報と(または)知識が十分でないことだけでなく、自身の気持ちの認識限界と意思決定に使える限られた時間に制限される、という考え方です

また、Simon氏の満足化(‘satisfy:満足させる’と‘suffice:まあ十分’の組み合わせ)という言葉は、不十分な情報と(または)知識しかない難しい決定を素早く下さなければならないとき、我々が好んで使うヒューリスティックな方法を表現したものです。

Simon教授は「人はサティスファイザーであってオプティマイザーではない」と度々言っています。つまり、困難な問題や決定に直面すると、我々は事前に決めた基準をほぼ十分満足する解決策を探します。そういう解決策に出会えばそれ以上探す必要はありません。我々はもう十分納得のいく解を得たのです!

最近、マネージャーが直面する制約で制約理論とそのアプリケーションが緩和または解消し得るものの研究を始めたとき、私たち2人はSimon教授の驚くべき洞察を再発見しました。問題解決と意思決定を行うときの目標(目的)の対立によるだけでなく、複雑で不確実な環境が強いる制限もあるのです。

以下は、私たちの「再発見」中に見つかった3つの重要な点です。

1971年、世界は情報技術(IT)の大規模な進歩と情報へのアクセスの指数関数的な増大が始まったばかりでした。ところが、そのときすでにSimon教授には、情報へのアクセスの急速な増大による深刻な悪影響のひとつを我々に警告するという先見の明がありました。

彼は1971年の講演で次のように警告しています:

「情報の豊さは、その情報が消耗させ欠乏する何か別のものを失うことです。どんな情報を消耗させるかは非常に明らかで、その情報を受け取る人々の注力(関心)を消耗するのです。ですから、豊富な情報が、注力の欠如を生み、豊富すぎてその力を消耗させる情報源に注意を効果的に配分する必要性を生じさせるのです。」

さらに彼は一歩踏み込みました。1973年の「Applying Information Technology to Organizational Design:組織デザインへの情報技術の適用」と題した論文でSimon教授は次のように述べています:

「現代の情報処理システムは、非常に豊かな情報のスープに浸っています。その種の世界では、情報は貴重なリソースではありません。貴重なのは情報に注意を払う処理能力です。その注力はまさに組織活動で最も重要なボトルネックであり、そのボトルネックは、私たちが組織の上位に行けば行くほど、どんどん狭くなります。」

これって、どっかで聞いたことありませんか?

ゴールドラット博士も同じ様な警告をしました。まず彼は、著書Haystack Syndromeで、データと情報(質問に対する答え)を区別する重要性と、重要な意思決定をするマネージャーに適正な情報だけを提供する真の情報システムを構築する必要性について警告しました。彼は、その後、すべての組織の最終的な制約は、経営層、特に経営トップの限られた注力だという彼の洞察を皆に共有しました。

また、ゴールドラット博士は、「Standing on the Shoulders of Giants:巨人の肩の上に立って」という論文の中で、フローを改善するには、過剰生産、つまり不要なものや少なくとも今要らないものを作るのを防ぐ実用的なメカニズムが必要だということを理解してヘンリー・フォードと大野泰一が始めた仕事を、彼は単に発展させたにすぎないと述べています。

私たちの考えでは、ゴールドラット博士はSimon教授が始めた仕事も発展させました。彼は、どんな組織にとっても貴重なリソースである経営幹部の限られた注力(マネージメントアテンション)を最大限に活用し無駄遣いしないために、マネージャーがフォーカスすべきところは何か(より重要なのは、何がそうでないか)を決める助けになる実用的なメカニズムを示しました。

ビッグデータの成長を考えると、今日のマネージャーの問題解決や意思決定に対するこれらの警告はどんなことを示唆するのか

その大胆な変化は、本当にマネージャーと業務分野の専門家にとって、意思決定の質とスピードを向上する力を得る助けになるのか?

さらに、もしそうだとしても、それで十分なのか?

そして、第3の洞察:「Making Management Decisions the role of intuition:経営判断での直感の役割」と題するSimon教授の論文から引用:

「これら意思決定の状況すべてに共通して存在するのは、理由の追求からの回避行動を強いる強力なパワーとなるストレスです。これらは、マネージャーがしばしば明らかに非生産的な行動を取るような、もっとずっと一般的な状況の集合に含まれる例にすぎません。」

私たちAlanとEliは、マネージャーの意思決定と組織運営の仕方に恐怖がどう影響するかに深い興味を持っています。私たちは皆、自分の決定と行動のせいで非難されるのを恐れていますだから行動しない方が安全ですしかし、それと同時に我々は、(データの海の中で)何か見落とすことを恐れ、何も行動しなかったせいで非難されるのを恐れています。(行動を)すべきか、せざるべきか、行くも地獄帰るも地獄なのです。

恐怖はストレスになります。しかも、人がストレスを感じると、しばしば震え上がって、すべき事をしなかったり、過剰反応して、すべきでない事をしたりするのを、私たちは知っています。つまり、恐怖によるストレスを感じると、私たちはしばしば不合理な行動を取るのです。

またSimon教授は、しばしば、予期しない結果に対する過度な恐怖に対しても警告しました。彼は、そのような恐怖を克服する最良の方法は、実験して何が起こるか見ることだったと助言しました。

私たちには、Simon教授のコンセプトと今日のマネージャーに対するその影響に関して、4つの疑問があります。

  1. 組織内の意思決定も、最適化ではなく満足化を目指すのか? 私たちがこの疑問を挙げる理由は、我々の見たところでは、組織は意思決定に最適化の価値観を押しつけているように思えるし、それによってマネージャーはほとんど満足化を超えたところを目指さざるを得ず、結果として全くフォーカスを欠いてしまう上に、意思決定が遅くなり、かつ/または誤ったものなるからです。
  2. 間違った決定/行動を非難される恐怖で、回避できたはずの意思決定の間違いや遅延が、今でもどの程度多数起きているのだろうか?
  3. データの中の何か重要なものを見逃してはいけないという恐怖から、マネージャーは今でもどのくらい過剰なデータ/評価指標を詳しく調べることを強いられ、心の動揺でマネージメントアテンションを浪費し、意思決定の間違いや遅延を起こしているのだろうか?
  4. ノーベル賞受賞者Simon教授による上記の洞察の時代を超えた重要性に合意が得られているのだとしたら、一体なぜ、これまで彼以外の多くが彼に従ってその重要な仕事を継続してこなかったのだろうか?

ひょっとして、これらの質問に対する答えが、TOCに対する認識と導入が未だ我々の期待よりはるかに低いのは何故なのかを示唆するのかもしれない…

 


関連記事:

マネージャーは組織のことになるとなぜ自分のこととは違う判断をするのだろうか?

合理的な疑いと妥当な範囲

「決して知っているとは言わない」という警句と(十分確かな)知識の限界


著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: From a TOC perspective: Paying tribute to a Great Pragmatic Thinker

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

Share

Comments are closed.