AmirとEli Shragenheim 2人の投稿
物理店舗(あるいは実店舗)は、どんどん大きくなっている厄介な問題に直面しています。安価で豊富な品揃えを提供するオンラインショップから購入する顧客の数が増加しているのです。オンラインショップの方も、熾烈な国際競争にさらされており、価格以外明確な競争優位性を欠いていることから、ビジネス上の大きな問題に直面しています。しかし、だからと言って、物理店舗が自己改革し、顧客に真の代替品を提供するのが容易になるわけではありません。オンラインショップは、顧客にもっと豊富な品揃えを提供し、どれも家まで安く届けてくれるのです。
そんなに多くの顧客がオンラインで購入する理由の1つは、電子商取引を行うオンラインショップは、顧客固有の好みをより深く知っており、その人に有利な提案を持ってアプローチしてくることです。この理解の深さは、膨大な労力を費やして、自分のウェブサイトに来る顧客すべてから大量のデータを収集し、高度な方法を使ってそのデータを分析することによって獲得したものです。この努力は継続的なもので、インターネット経由の購入に顧客を上手に誘い込む点で、さらなる改善がなされるはずです。
なら、なぜ物理店舗も同様のことをしないのか?
物理店舗は適切な情報を利用するのがより困難なのです。たとえば、今のところ、探しているものが見つからない顧客を記録する良い方法はありません。顧客の行動パターンが記録されていないのです。店内にビデオカメラはあるかもしれませんが、目的はセキュリティで、それ以外の行動は何も考慮していません。そうなると、顧客をちゃんと研究できる物理店舗はそう多くないような気がしてきます。
でも、それは大間違いです。価値のある情報に加工できる入手可能なデータはたくさんあります。それに、さらに多くの情報を生み出すのに使える可能性のある、もっと多くのデータにアクセスできる方法もあります。
スーパーマーケットやドラッグストアといった、大きな店舗に来る顧客は、一度に複数の商品を購入します。それは、さまざまな類似商品からの選択での価格の働きに加えて、選ばれ易い商品の組合せやブランドへの個人的なこだわりを、より深く探るチャンスを提供します。
顧客が買った異なるさまざまな商品の購入全体には、顧客の好みと経済水準を示す隠れた情報が含まれています。その隠れた重要な情報を暴き出すためには、どの小売店もしないといけない最も重要な意思決定に関わる、下記の重要な質問に答えられるよう、確率・統計と機械学習(ML:Machine learning)の力を用いた確かな分析をしないといけません:
新しく仕入れないといけない商品は何か? どの商品を外すか? 商品の完璧なアベイラビリティを維持する相対的重要度はどれくらいか? どの商品を近くに展示すべきか? キャンペーンに使える商品は何か? オンサイト・ベーカリーなど、どんな付加サービスを追加する(または無くす)べきか?
[訳注]アベイラビリティ: 欲しいときに、欲しいものが、欲しい場所(あるいは店舗など所定の場所)で手に入ること
顧客の購入全体を調べると、ただ単に商品個別の売上を調べるよりも、はるかに沢山の情報を暴き出せます。一度に購入する商品の組み合わせから、より広いニーズ、好み、お金の使い方が明らかになるのです。もし合法的に購入者を特定することが可能なら、その購入履歴を分析して、その顧客が属す市場セグメントを今までより綿密に定義できます。ファンクラブをずっと維持する価値のひとつは、様々な日時の様々な購入を同じ顧客に関連付けできることです。つまり、顧客のプロフィールを推定できるようになるのです。
最も分かり易い成果は、セグメント間の特性の違いに留意した市場セグメントごとの顧客マッピングです。購入履歴を調べると、顧客の配偶者や子供のだいたいの年齢、経済状況、好みなど、家族の特性が浮かんでくる可能性があります。これらの特性は、購入の履歴と頻度の分析から明らかになります。喫煙や菜食主義など、具体的な嗜好も特定できます。また、市場セグメントをいくつかの層に分けるに不可欠な特性も、一緒に分かってきます。
購入履歴の分析から推測できる、もうひとつ重要で価値のある情報は、商品間の依存関係です。たとえば、商品Xを購入すると、商品Yも購入する可能性が高いとか。この依存関係は、時にはマネージャー中には直感的に気づく者もいて、2つの商品のアベイラビリティの維持、店内での配置、さらには、パッケージとして一緒に売る可能性に関わる意思決定に間違いなく影響を及ぼします。商品間の関係の理解は、時間の経過で購買習慣がどう変わるか確認するのに役立ちます。たとえば、景気が悪化した場合、様々異なる市場セグメンにどういう影響が出るかは、単に個別の商品にどんな影響が出るかに注意するよりも、はるかに高い価値があります。一般的により安い商品に流れるだろうとは予想できますが、どのブランドが安いものに取って替わられ、どのセグメントでその変化が他より大きいか、経済に実際変化が起きる前に、そういう変化を予測する上で価値が高いに違いありません。
市場セグメントで異なる典型的な購入構造は、その理解を活かすような市場戦略を促すのは明らかです。支店それぞれの具体的なニーズが認識されるにつれて、分析から得られた知識は運営方針に翻訳されて、小売チェーンのさまざまな支店の業績に影響を及ぼしますが、一般的な洞察(知見)の中にも、その影響を受けるものがいくつか出てきます。
特定の顧客のすべての購入をその人の過去の購入履歴と関連付けできれば、そこから得られる購入頻度情報が、特定の市場セグメントの典型的な購入構造に影響を及ぼすような戦略に導くでしょう。
店舗がものやサービスを提供する様々多様な市場セグメントをうまく分類できる機械学習(ML)モジュールを開発すれば、小売の店舗それぞれのマーケティングとロジスティックは、どちらも強化できるはずです。売行きの悪い商品を常備しておくに必要なロジスティック系の労力の大きさを考えると、その商品の在庫を持っておくことには、常にジレンマがあります。売行きの悪い商品の販売による財務的寄与が完全に分かれば、本当の優先順位が見えてくるので、どの商品の在庫を持っておくべきかの判断がより正しいものになるでしょう。売行きの悪い商品の相対価値には、他の商品の売上への影響も含みます。その問題の商品の特定の市場セグメントでの相対的な重要度が分かれば、当該セグメントの視点でみた店舗の魅力に、その商品が影響するかどうか判断するのに役立ちます。
MLを用いることによって、小売業者は特定のブランドや商品に対する顧客のロイヤリティをより深く理解できます。ある市場セグメントでは商品Yより商品Xが好まれることがすでにハッキリしているなら、意図的にXが手に入らない日を1日設けて、そのセグメントの多くの顧客がXの代わりにYを買うか、それとも代わりの商品は買わないかを探ることができます。また、代わりの品物を買うことでブランドのロイヤルティに影響が出るのか否かという質問にも、答えが得られるでしょう。キャンペーンでは顧客はそう好きでない商品を買うことにもなりますが、代わりの商品の購入がブランドのロイヤリティに影響を与えるか否かは、重大な関心事です。
何か購入する時点で全商品のアベイラビリティの情報にアクセスできることは、極めて望ましいことです。そうなっていたら、たまたま商品Xが店にない場合も、そのブランドに拘りがありそうに見える客が、簡単に代わりの品に乗り換えるか否か確認するよい機会になります。
スーパーマーケットとドラッグストアは典型的な小売業者で、一度の購入に複数の異なる商品が含まれるのが普通です。そういう小売チェーンは、MLの開発と活用に労力を注いで、自分の顧客の購入習慣をより深く学び、その知識を最大活用した優れた意思決定ができるプロセスを開発することが、絶対に必要だろうと思われます。
著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。
この記事の原文: What Brick and Mortar Retail can learn from Big Data?