【ブログVol.43】豊富な品揃えの提供か、安定したアベイラビリティの保証か

商品の品揃えの仕方には、潜在顧客への基本的なメッセージが異なる2つのタイプがあります:

  1. 私たちは、お客様が本当に必要なものは何でもご用意しております。万一在庫に無い場合でも、お客様のために直ぐお作りできますので、ご安心ください。
  2. 私たちは、お客様に相応しい魅力的な品揃えをご提供いたしております。

一般的に言うと、最初のタイプは主な価値が実用ニーズにある商品に当てはまります。そして、顧客が事前に自分のニーズを正確に分かっているという前提です。

選ぶ」ことを重視する2番目のタイプは、ウインドウショッピングを楽しみ、「娯楽・趣味」の価値をベースにする潜在顧客が対象です。まだ読んでいないなら、先ず「価値のカテゴリー」に関する記事を読むとよいでしょう。

価値の種類が違えば、それに合うロジスティックスも違うのです。最初のタイプでは、アベイラビリティの維持が販売にとって不可欠です。欠品は、特定の顧客が本当に欲しい商品が無いということで、次善の品を代わりに買うか、他に行くかはその顧客次第です。

ファッション、書籍、音楽、芸術、その他同様の商品を扱う2番目のタイプは、自分にとってそれ自体価値のあるウインドウショッピングに相当の時間を使う顧客にフォーカスしたものです。(たとえばGrishamの前作というふうに)何が欲しいとよく分かって来る客も時には居るでしょうが、ほとんどの客は、気に入ったものがあればどれか買うだろう豊富な品揃えに触れたくて店に入るのです。

この特性は補充方法にも影響します。売れたら補充するのは同じですが、必ずしも同じ商品である必要はありません。実際、ファッションでは品揃えを頻繁に変えないといけません。ある特定のデザインに高い安定した需要が見込まれるなら、同じものを補充するのが道理でしょう。しかし、特別に広い人気がある証拠が見当たらなければ、おそらく別の商品を補充する方が良いと思いますが、どうですか?

私は、魅力的な品揃えを生み出すのは、直感に裏付けられた「職人技」だと思うので、明確なガイドラインを見つけるのは困難です。最終的に売上に結び付くウインドウショッピングに誘い込むには、同じ品揃えに含まれる商品の大部分が、ある特定の市場セグメントにアピールするものでなければなりません。時には、どれも好きで一つ選ぶのが難しいというだけで、ひとつの品揃えから一人で複数の商品を買うこともあります。そういうことは、実用ニーズ向けの商品を売るところでは決してあり得ません。

ですから、商品の選定は品揃えの善し悪しを分けるカギです。その品揃え全体を通したある一定のテーストはなければなりませんが、見て回って楽しみを味わえる多様さも必要です。

もう一つ重要なのは、ひとつの品揃えでの品数です。潜在顧客を呼び込むのに効果的な品揃えとして、似ているが異なる商品を店舗にいくつ展示できますか?

ファッションのような流行品は品数が過剰になりがちです。見るのにあまり時間がかかると、顧客は選ぶのを諦めて買わないかもしれません。入る客の数は多いのに、品数が多すぎて実はあまり売れないという現象は、よく知られています。もちろん、品数が少な過ぎると間違いなく売上げは減ります。

なら、どうやって品数を決めるの?

TOC全般で一般的なやり方は、まず開始時点の予測値で始めて、その後は、最初または現在の予測値が大き過ぎる・小さ過ぎるというシグナルを確認したら修正するというやり方です。そういうシグナルのひとつは、特定の品揃えを見る来店客の割合でしょう。もう一つは、そこでの平均滞在時間。その時間が短いなら、全体のテーストが合わないか、品数が少な過ぎるという、失望のシグナルかもしれません。逆に平均滞在時間が非常に長いのは、品数が多過ぎる可能性を示唆するもので、それが本当かどうかは、そこを見に来た客数と買った客数の比を確認すれば分かります。これらすべての情報を収集しなければなりません。週に何度か観察すれば、品揃えの品数と内容を見直すべきかどうか判断するに十分なシグナルが得られるはずです。

品揃えに含まれる商品ごとの売上分布も一つのシグナルですが、それはそう単純ではありません。売上分布上のテール、つまり売れ行きの悪い商品の部分が非常に長い場合は、品数が多過ぎるのが原因の可能性が高い。しかし、品揃えの豊富さは、殆どの顧客が結局ごく少数の特定の商品しか選ばないとしても、顧客を引き込むには重要なファクターです。また、品揃えのタイプが違えば、見る楽しさを味わうのに効果的なテールの長さも違うでしょう。売れ行きの悪い商品を慎重にいくつか外して、その結果品揃え全体の売上にどう影響するか実際に見て、有効なテールの長さを検証することが絶対に必要です

品揃えのコントロールは、アベイラビリティの維持と結びついて、多くの難しいジレンマを生みます。いくつかのサイズがある多数の商品/デザインを販売しているとしましょう。そうすると、ひとつのデザインが品揃えに含まれる限り、そのすべてのサイズのアベイラビリティを保証しなければなりません。しかし、あるデザインの販売を中止する決定が出た場合、その後はそのデザインの商品全体を補充してはいけません。そうすると、そのデザインの残った商品をどうするのか?という問題が生じます。私のお勧めは、残りの商品を別の場所に持って行って、アベイラビリティは一切保証せずに安く売ることです。

ある一定の品数を維持するという考え方は、新しいデザインをひとつ追加する度に既存の商品を一つ外すということで、逆に、あるデザインを外すなら、代わりに入る新しいデザインが用意できていなければならないということです。ということは、特定の店舗の品揃えに加わる機会を待つ新しいデザインのバッファを管理しなければならないということです。特定の店舗に展示し販売する機会を待つ新しいデザインの商品が、不足せず、且つ多すぎもしないように、バッファ管理を用いてそのバッファを上手にコントロールしなければならないということです。

もっと一般的で重要な点は、人間の直感をソフトウェアに支援された体系的分析と結合した、より実用的で効果的な方法を見つける必要があることです。私は、スループット会計の発展形としてTOC流の意思決定(DSTOC:the Decision-Support the TOC Way)を開発する中で、直感と厳密な分析の結合の必要性を感じていました。しかし、お分かりのように、直観と論理的な体系的分析との結合の必要性は、そこで終わりではありません。


著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: Managing assortment vs. managing availability

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