重要な意思決定にTとIおよびOEを使う シリーズ第2部
チャンスまたは機会は様々な形で現れます。しかし、疑うのが無意味なほど良いチャンスには滅多にめぐり合えません。どんなに有望なチャンスに見えても、ほとんどは疑いが付き物です:それは本当にチャンスなのか、ひょっとしたら罠じゃないか?
経営上の典型的な対立が生じるのは、営業から複数の製品を一定の値引きで売る販売プロモーションが提案されたときです。営業のマネージャーは、その製品の翌月の売上はそれにより大幅に伸びると信じており、その確信は過去の経験に裏付けられています。
一方、販売プロモーションは、生産現場にとって大きなプレッシャーになり、他の製品の売上を減少させる可能性があり、大概はプロモーションが終わった後一定の期間は売上が減少します。けれども、時には予想外の収入( - 変動費)が得られることもあり、特に新規の顧客に売れて値引きのマイナスを補って余りある将来の購入需要を獲得できるかもしれません。
- プロモーションの正味の財務的影響をどうやって確認するか?
- 別の市場セグメントに参入する財務的影響をどうやって確認するか?
- 新製品を次々発売する財務的影響をどうやって確認するか?
- 新しい生産ラインを購入して現在の能力制約(Capacity Constraint)を強化する場合の財務的影響をどうやって確認するか?
私たちは、正しい意思決定をするには単位原価は間違ったツールだと気づきました。そうだとするなら、どうすれば正しい意思決定ができるのでしょう?
最も単刀直入な方法は、恣意的な「単位当たり」の類の怪しい尺度に頼らず、目下問題にしている意思決定の最終損益への財務的影響を見積もることです。それは様々な費用が入り組んでいて、非常に難しそうに見えます。しかし、その意思決定を今より少しでも儲けが増える策の選択だと思うなら、状況を単純にしてくれる曖昧さのない因子が2つあることが分かります:
- 入るお金の変化: 新しく追加になった売上と既存商品の売上の減少を合わせた売上の変化による収入の正味の増加から、それらの販売に関わる真の変動費の正味の増加を引いた金額。それをスループット(T)と呼ぶ。
- 出るお金の変化(上記以外のすべての費用で業務費用(OE)と呼ぶ): この費用の増加は、すべて使用可能なキャパシティに必要な増減によることに注意! その点は、キャパシティのコストの振る舞いに関する前回の記事で述べた。
上記から次の関係式が得られます: Δ(P) = Δ(T) - Δ(OE)
このΔ(P)は、税引前の純利益の変化です。目下問題にしている意思決定では、このΔ(P)が正か負かを知りたいのです。
では、上記の式から十分よい見積もりを得るにはどんな情報が必要でしょう?
明らかな問題のひとつは、意思決定する時点で我々が知らないすべてを含んだ不確実性の影響です。その問題は後の記事でまた取り上げることになるでしょう。
これまで説明した一般的な方向性からすると、最初にすべきことは、組織の現状を明確にすることです。なぜなら、その新しい提案を実行した場合としなかった場合の状態の違いを評価しかたいからです。
現在の状態を記述する主な情報は次の2種類です:
- 現在の売上: 売れた製品各々の数量と売価、真の変動費(主に材料費)から、製品ごとに得られたスループット(T)を計算して、全体の総スループッを計算すれば、入るお金の流れが分かる。
- 使用可能なキャパシティと現在の売上による負荷:
- 負荷を計算するには、リソースそれぞれに、販売した製品すべてを処理するにどれだけキャパシティを使うか知る必要がある!
次は、新しい販売機会/取引/アイデアそれぞれについて、次のような種類の情報が必要です:
- 新しい売上とスループット(T): 長期的な影響も含め、そのアイデアから得られるスループット
- 新しい売上の既存の売上への影響: 既存の売上がいくらかでも減少するか?
- 新しい提案実行後の負荷と使用可能なキャパシティの対比: 使えるキャパシティが不十分なリソースが一つでもあるか?
- キャパシティが足りないリソースがひとつでもあるなら、何か具体的な選択肢はあるか?
- お金を出してキャパシティを追加する(費用はいくら?)
- 他の販売には事実上影響を及ぼさない前提で、どれか販売を減らす!
さらに先に進むに欠かせない質問:
- 上記の情報をすべて集めることは可能か?
- 意思決定するには、どれくらい先まで見通す必要があるか?
- 様々沢山ある販売機会に同じ期間の中でどう対応できるか?
- 不確実性の影響をどう検討するか?
- 理に適った意思決定をするための組織化されたプロセスはどんなものか?
- そのプロセスは複雑すぎないか? もしそうなら、その意思決定プロセスを歪めることなくシンプルにできないか?
著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。
この記事の原文: Is it really an opportunity?