スループット(T)は、組織として生み出した正味の付加価値です。そして、業務費用(OE)は、そのTに値する価値を顧客に提供できる、適切な能力を備えたすべてのリソースのキャパシティを供給するために必要な財務コストです。
訳が分かりませんか? タイトルをもう一度読んでください。そこに経営上の意思決定をするに必要なデータの大部分があります。売上データに注目したTと内部リソースに注目したOEの区分は、経営上の意思決定をすべて単純にするという、非常に大きな価値をもたらします。
大まかに図にしたので見てください:
粗末な図で申し訳ありません。グラフィックツールはちょっと苦手なのです。
OEはキャパシティを供給するだけのコストです。組織のゴールは、スループット(T)をOEよりずっと大きくして、OEより速くTを増加させる方法を見つけることです。それは、組織のマネージャーが行う、あらゆる意思決定の唯一の目的に違いありません。そのための分析は難しいかもしれませんが、目的はどれも同じです。営利組織のTは、売上高から真の変動費(TVC)を引いた金額と定義されています。この真の変動費は、一つひとつの取引個別で発生するコストです。ですので、Tは、お金を払う顧客が認めた付加価値です。もちろん、顧客から見た価値には、販売した組織に属さない人々が貢献した分も含まれています。
ですので、スループット(T)は、その組織自身の成果に対する真の評価尺度です。一方、業務費用(OE)は、そのTを得るのに組織が払わなければならない対価です。
まあ、私としては、「投資」を意味する「I」も、Tの達成を可能にするための投資と考えて、資産に含めるべきだった。としても、「I」と「OE」の概念的な違いはないと私は思います。 最たる違いは、期間の違いです。つまり、「I」は1年を超える支出です。これについては、複数年に渡る経費を年間経費の等価な流れに変換する仕組みがあり、それがOEの一部に入ります。ですから、10年間稼働する見込の一千万ドルの機械があったとすれば、その年間経費を百十万ドル、あるいは、あなたが妥当と思う変換率で計算した金額にすればよいのです。
少々込み入った話しですが、当初、ゴールドラット博士は「I」を「在庫(棚卸資産)」と定義しました。彼は後にもっと一般的な言葉に変えました。それに絡んで、前述の大雑把な図に少し欠けている点は、購入した材料は、最終の商品が売れてTに入るか、廃棄されてOEに入るまでは、一時的に在庫(投資の一部)の状態にあることです。しかし、それを入れたところで、あの簡単な図がそう複雑になるとは私は思いません。
ここで重要な点は、OEはTを生み出すカギを握る存在だという理解です。また、商品の種類が多いと、目標のTを達成するのに、業務費用(OE)がどれだけ必要か予測するのに技術的な問題が生じます。たとえば、Tの倍増計画があるとすれば、現在のOEに対するOEの増加(ΔOE)は、予想より大幅に大きくなることも、大幅に小さくなることも、どちらもあり得ます。
経営判断の大半は、Tの水準を今より高めるか維持するかに関わるものです。詰るところ、営業はTをどう達成し、オペレーション部門はデリバリに労力をどう注ぐかです。しかし、常に組織を脅かすのは主にOEなので、絶えずOEを削減しろというプレッシャーがあります。十分大きなTを生み出したか否かに関わらず、OEという対価を払わないといけないからです。OEの節減で用心しないといけないのは、ほとんどの場合、Tに対する悪影響が無視されることです。ですから、Tを重視することで、Tを減らさないよう、細心の注意を払わないといけない事に気づかせる必要があります。
したがって、TとOEの依存関係は理解しておかないといけないのですが、OEが一見独立した非常に多くの商品のキャパシティに関わるので、それは非常に複雑なものに見えます。
しかし、5段階集中プロセス(集中の5ステップ)の大きな効果、計画立案でのバッファの役割りと計画の実行でのバッファ管理の役割についての理解がある前提で、TOCは、スループット会計を用いて、下記ようにOEとTの繋がりを非常に簡単に説明できます。
重要な洞察-1: 手持ちのキャパシティを超える負荷がかかれば、期待するTが大きく損なわれる危険性が生じるのは、OEを大きく追加しない限り、過負荷なリソースが一つあれば十分だ。
重要な洞察-2: 市場の変動とそれ以外の不確実性を克服するのに十分な柔軟性を確保するには、保護能力(一定の余剰キャパシティ)を保持しておくことが絶対必要。しかし、保護能力がどれだけ必要か正確に計算する安全な公式はないので、控えめに見積もらざるを得ず、それで十分か随時確認する適切なフィードバックがないといけない。
重要な洞察-3: 内部のリソースはどれも、OEの一部で賄われる有限のキャパシティしかないが、殆どの場合、費用を払えば、正規のキャパシティより単価はずっと高くても、一次的にキャパシティを増やす手段がある。そういう手段も保護能力の一部と考えてよいが、その真の価値は、明らかに今のOEでは賄えないほど大きなキャパシティが必要なチャンスでも物にできることだ。したがって、業務費用の増加(ΔOE)を慎重に検討して、予測したスループットの増加(ΔT)と比較し、適切な選択をしなければならない。
Tを大きくする方法に関する意思決定はどれも、クリティカルなリソースが1つでも過負荷になる可能性を分析して、もしそうなら、他の売上を落すか、特定のリソースのキャパシティを増やすか、どちらかの手段を見つけなければなりません。
キャパシティのコストは階段状の不連続な変化をするので、OEの挙動は明らかに非線形になります。問題をややこしくしたと思う人もいるでしょうけれども、そのせいで「単位当たり」の尺度の概念は、現実役に立たなくなります。しかし、不確さの最大限の影響がどういうものか理解できれば、「起き得る」シナリオをシミュレーションすることで、どんな場合TとOEが意思決定の十分な裏付けになり、どういうときには疑わしいか、明らかになります。
もう1つ理解されているのは、Tを増大するための構想は、普通はかなり大規模で、売上・スループットおよびその達成に必要なキャパシティの双方に及ぶ影響は、とても決定論的と言えるものではないことです。したがって、控えめで現実的な予測ともっと楽観的な予測の両方をチェックする手段は、それ自体慎重にチェックしないといけません。
もう一つ別の洞察: 売上への影響を判断する場合、控えめな予測がすでに十分満足できるものなら、それよりずっと貢献が大きな選択肢はチェックしなくてよい。それはむしろ間違いだ! 市場の反応が非常に好ましいときは、デリバリの遅延を引き起こすキャパシティの問題の方をもっと心配しないといけない。つまり、あまりうまくいきすぎると、明らかに負の影響が出る。それは「祝福の逆襲」と言ってもよい。私はShimon Pass氏からこの興味深い洞察を聞いた。まだあなたがこれを知らないのであれば衝撃的な洞察に違いない。
これは「シンプル」ですか?
ほとんど常に正しくあろうと頑張るのと同じくらいシンプルだと私は思います。
ここで私が大雑把に述べてことをもっと知りたい方は、OEを大きく超えたるTを達成するための意思決定を評価する具体的な方法である「スループットの経済学」のプレゼンテーションとデモを私に依頼してください。
著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。