【ブログVol.104】サプライチェーンを改善する目的と課題 - そして、もっと重大な幹部たち個人のジレンマ

2017年12月21日
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サプライチェーンの改善には2つの領域があります: 

  1. 顧客へのフローとサプライヤーからの供給フローを改善することで、自社のパフォーマンス(業績)を向上させる。
  2. 最終の製品/サービスのエンドユーザーとそこに至るまでの様々多くの組織のいたる所、サプライチェーン全体のパフォーマンスを向上させる。 

私の想定では、大きな改善の今の焦点は、比較的狭い視点のサプライチェーンである第1の領域です。と言っても、特に、サプライヤーと顧客の両方が対象に入る点で、改善がサプライチェーン全体にどう影響するか、多少の考慮と展望が既に含まれています。

ゴールドラット博士が開発したサプライチェーン全体の長期ビジョンは、直ぐにでも特別な記事を書くに値します。今回は、サプライチェーン内の1つのリンク(訳注:属すひとつの組織)のビジネス改善における課題に注目しましょう。通常、ひとつの組織には、様々な顧客に提供する様々な製品があります。また、様々なサプライヤーと良好な関係を保たないといけません。組織が生み出す価値の一部は、顧客からみた製品の価値と品質、および顧客の活用水準で決まります。重要なのは、その製品を本当に欲しがる市場セグメントの規模です。もう一つ価値の重要な部分は、顧客への納入品質(訳注:リードタイムや納期遵守率)です。こちらは、完全にフローのコントロールに依存します。

市場が求める製品のフローを妨げるのは、本当は何なのか?

高速なフローを妨げる2つの重大な障害の1つは、多数のピースをひとつに纏めて、ワークセンターからワークセンターを移動させ、一括で処理するバッチ処理です。当然、どのバッチも、多数の顧客に提供されるものを含みます。因みに、そのバッチ処理は、可能な限り一個流しに近づけようとしている、かつて「ジャストインタイム」と呼ばれたリーンの攻撃の的です。

バッチ処理は、時間がかかる段取りか、炉や輸送車両などバッチ全体に長く拘束される特定のリソースのどちらかで発生します。リーンでバッチ処理を大幅に減らす手段の1つは、段取り時間の短縮です。もう1つの手段は、小型トラックで高頻度に配送するみたいに、キャパの小さいリソースをより多く使うことです。しかし、これらに共通の懸念は、追加のコストが必要になることです。

もう一つフローを妨げる重大な障害は、キャパシティの不足であり、そのせいで待ち時間が長くなります。第1の障害、バッチ処理は、この第2の障害、キャパシティ不足に影響を及ぼすのは明らかです。バッチを小さくすると、段取りが増えてキャパシティがより多く費やされるので、コストの浪費に見えます。しかし、TOCは必ずしもそうではないことを示しています。かと言って、あまり段取りが多くなり過ぎると、特定の非制約リソースがボトルネックになって、大幅な遅延を引き起こす可能性があるのも確かです。

TOCにはこれらの障害にうまく対処できるツールがあります。それらは、あまり厳格になり過ぎることなく、現実に即してキャパシティを実務的に管理し、コストと需要(あるいは負荷)への実際の影響をよく観察することで、速いフローを維持します。

ここで述べた2つの障害は、製品やサービスのフローに大きな影響を及ぼし、それによって組織のゴール(目標)達成にも大きな影響を与えるので、一見重大な問題に見えます。ところが、そのゴールをよく調べると、すべてのマネージャーの生活を非常に困難にする、さらに重大な障害があることが分かります:

需要の相当大きな不確実性にうまく対処しなければならない

フローの管理との関係はすぐ後に検討します。その前に、一般的な経営慣行としてどういう風に不確実性に対処するのか理解しておきましょう。

ほとんどの企業での不確実性への一般的な対処法は、予測を通して将来を予想することです。問題は、その予測がせいぜい部分的な情報に過ぎないことです。確率論によれば、確率的な挙動はすべて、少なくとも2つのパラメータで表現しなければなりません。最も一般的なのは、予測の「平均値」と標準偏差です。その予測方法は、過去の実績と前回の予測を用いて、平均値を推定して、この後の予測の等価な標準偏差を見積もるための「予測誤差」を生成するというものです。予測を使う大きな問題は、ずっと先の週ごとの需要を知りたいとすると、「予測誤差」の見積もりが困難になることです。実際、ある場所の1つの商品(SKU)の3ヶ月先の週当たりの需要を知りたいといった、誤差がかなり大きいときは、予測誤差の考え方は疑わしくなり、意思決定者の精神的な負担が相当大きくなります。そうすると、需要は正しく予測できたことにするのが良さそうに見えてきます。

間違いが暴露されるのが怖いという、どの意思決定者にもある個人としての恐怖が、現行の慣習を支配しているのです。普通は、予測は正しかったが、実行が間違っていたということになります。こうして、誰か人を責める逃げ道ができてくるのです。

現実には、どこであれ地理的に特定の場所の需要は、サプライチェーン全体の在庫よりはるかに大きく変動します。もう一つ厄介な因子は、時間とともに不確実性のレベルが急激に大きくなることです。期間が長くなればなるほど、毎週/毎月の需要予測の不確実性が大きくなります。1年も先の毎週の需要は、新製品の登場や別の経済的状況のせいで意味がなくなることさえあり得ます。

どのサプライチェーンでも、実務上の問題は、サプライチェーンの上流になるほど、何を生産(または提供)するか、各々の品物の在庫をどれだけ持つか、より難しい決定をしないといけなくなることです。なぜなら、何を生産する(売る)か決めてから、実際それが売れるまでの時間が相対的に長くなり、不確実性がより大きくなるからです。

もし我々の世界が決定論的であったとすれば、フローを妨げる上記の2つの障害は問題ではなく、優れたごく普通のソフトウェア・アルゴリズムを使って、最適なバッチサイズでキャパシティの稼働率が最大になる、最適なソリューションが提供されていたことでしょう。もちろん、それは現実ではありません。

次の重要な洞察はよく理解しておくべきです:

予測精度の向上は、そもそも、不可能か、できても微々たるものだから、そんな事をするくらいなら、サプライチェーン全体のフローを加速して、素早い反応で、実際の需要に素早く合わせる方が、見込が大きい!

実際の需要に素早く対応できるとしても、当座の需要を満たすには、十分な在庫が手元にあるか手配済みである保証が必要です。需要は不安定で不確実なので、正確な在庫量を予測するのは無理だと思いますが、おおよそ十分だと思う見積もりをして、需要の実際の動きに応じて調整するのは可能です。

適正在庫の見積もりも、一種の予測です! それでも、システム内にどれだけ在庫を持っておけばよいか、おおよそ正しく見積もるには、不完全な予測も上手に使わないといけません。TOCでは、正しくないかもしれない兆候が得られない限り、明日の需要は今日とおおよそ同じだという、裏の前提があります。ですので、現在の在庫水準が正しくないかもしれないという警告は、うまく利用しないといけません。正確な数値を決める現実的な方法は無いわけだし、実際の需要に素早く適応するフローがちゃんと機能しているなら、少々「間違った」としても気にする必要はありません。

これらは、サプライチェーンの運営でTOCの核になる重要な洞察です。ですから、このプロセスはもっと詳しく述べないといけませんが、それは明らかに今回の記事の範囲を超えています。

実は、もっと厄介な問題があります:

最適化を重んじる組織にとって、「まあ十分(good enough)」といっても、素直に受け入れられるのだろうか?

サプライチェーン分野の幹部マネージャーのほとんどに妙なジレンマがあります。彼らは、一方で、すべてが常に変化しているので改善の必要性を認識しています。製造マネージャーは、間違いなく、臨機応変な対応に慣れています。しかし、それには、突然の変化に応じる十分な在庫と手持ちのキャパを確保しておくといった、適切な基盤を整備しておかないといけません。ということで、他方では、そのマネージャーは、臨機応変な対応には柔軟性を維持するための追加のコストが必要で、そういう方法は最適化ができず、さらに厄介なことに、それは今日のベストプラクティスからほど遠いものと思われていのを十分承知しています。ベストプラクティスに背くのは恐ろしいことで、上司や取締役会みたいな他人からの評価でキャリアが左右されるマネージャーは皆、一般に「正しい」と思われていることと違うことをするのを非常に怖がります。

このジレンマをクラウドにすると次のようになります:

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実を言うと、TOCの不確実性への対処ルールは、そう頻繁に臨機応変な対応をしなさいとは要求しておらず、速いフローを維持できるマネジメントの結果として、ただ常識に従って、より短期間で意思決定するだけでよいと言っているのです。

そのように不確実性に対処する結果として、市場の目にはほとんどの競合他社より優れて見え、会社が大成功する可能性が高まります。

このTOC流のアプローチは、上記のクラウドの目的を達成するための必要条件「C」の正当性を覆します。その結果、対立解消後のクラウドは次のようになります:

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一般的に正しいとされる慣習に逆らうことへの自然な恐怖は、考え方の正しさを確認する実証実験を行うことで克服できると思います。それは十分な「証し」になれば良くて、それを満たす範囲に制限してよいので、失敗してもそう大きな損失は出ないはずです。概念実証(Proof-of-Concept)についてもっと詳しく知りたければ、以前の記事 https://elischragenheim.com/2017/02/26/looking-for-the-right-pilot-as-proof-of-concept/(日本語訳:概念実証のための正しい実証実験の追求)をご覧ください。

 


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著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

70歳にもなってブログを書く理由

自己紹介

この記事の原文: The Objective and the Challenge of Improving the Supply Chain – and the Personal Dilemma of the Key People

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

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