【ブログVol.107】マネージメント・アテンションという制約の元々の考え方

2018年1月31日
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Woman businesswoman working isolated on white

ゴールドラット博士が、マネージメント・アテンション(経営者とマネージャーの注意力/集中力)こそ究極の制約だと言ったのは、決定的な競争力の獲得で市場の需要を高めることを含め、その外の制約をすべて強化してしまった後も、組織の成長ペースは、マネージメント・アテンションのキャパに制限されるという意味です。

人は、一定の期間にどれくらいの注意を払うことができるのでしょう? その言葉自体そもそも捕えどころがなく、ただ一人に限ってもそれを評価するのが非常に難しいのに、人の集団の注意力となれば更にそのキャパシティの大きさを評価するのが難しくなります。しかし、考えたり管理したりすべきことを増やしていくとカオスになる、一定の限界が存在するのは間違いありません。特にマルチタスキングは最悪なのはよく知られていますよね。

マネージメント・アテンションのキャパシティとは、一定の期間でどれくらいの数の異なる問題を処理できるかということです。この記事では、とにかく、特定の問題に対処する能力やスキルについては評価せず、単純に一定の期間でいくつちゃんと処理できるかという議論にしておきます。

その難しさの原因は、私たちは常に目一杯何かに注意を払うことにしているという、単純な事実です。私たちは「ぼーっと」しているのが耐えられないのです。私たちは常に何か考えています。そうして、いつも頭の中を忙しくしているせいで、自分はもう限界に近いのかどうか、簡単には答えられないのです。どのみち、緊急なことが起きたら、どんなことに頭が忙しかったにせよそれを放棄して、すぐ応急処置が必要な別の問題に頭を切り替えます。それで、我々に伸し掛かる問題がいくつあろうが、時間を使う価値が高い問題をほぼ常に選んでおけばよいのは言うまでもありません。

TOCのフォーカシングは、相対的に重要度が低い問題は一端脇に置いて、より価値の高い問題の解決に我々を専念させる最大活用スキームです。しかし、私たちは、自分がフォーカスすると決めたことに完全には集中できていません。確かに、私たちは、中断する前にどれだけの時間一つの問題に深く集中できるか制限されています。これは、複数の問題をマルチで考えないといけないということです。しかし、ごく少数の問題に意識を集中する努力をしないと、重要なことは何も達成できません。

だから、私たちの注意力を最も有効に活用するには、ここが重大な問題なのです。私たちはいくつかの問題に気を回さないといけませんが、あまり多くの問題に気を散らすわけにはいきません。そこで、どの人も、ある程度自分の心を操れる方法をとにかく習得したとしましょう。それはつまり、自分を必要とする重大な問題が多すぎて、自制心を失い常軌を逸した状態になりかけたとき、それを自覚できるという意味です。そのとき私たちにできるのは、どれを自分の頭から追い出すか全力で決めることです。そうすれば、キャパを超えて注意を払わないといけない状態には至らないはずです。これは非常に難しい行動の変化ですが、完璧にはできなくても、かなり大きな効果が期待できます。

マネージメント・アテンションが、組織の日常でどんな風に問題になると思いますか?

幹部マネージャーでさえ、業務上注意を払わないといけない自分の仕事は、彼らが注意を払うべき範囲全体のほんの一部分にすぎません。ですから、私たちの注意を必要とするものは、仕事と無関係なものもあります。仕事が大好きな人々は、結果を出そうという意欲が強く、職場での重い責任を感じ、業務上の問題により多く注意を払います。しかし、それでも、家族、健康、趣味など、仕事以外の個人的な問題のどれにも、相応に気を配らないといけません。

組織にすれば、マネージャー全員の限られた注意力を適切に利用しないといけませんが、ミスを犯して重大な決定が遅れるような混乱を起こす寸前まで追い込むのは許されません

以前のいくつかの記事とウェビナーで、どんな組織にも2つの重要なフローがあるという私の考えを述べました:

  1. 今顧客に提供している価値のフロー。これには、短期計画の立案と実行、管理を含めて、現在の顧客にサービスを提供するために行うすべてが含まれる。
  2. 将来に向けた新しい価値のフローの開発。これは、組織のゴールに向かって組織を優位な立場にする取り組みのフローである。

この価値のフローの中に、マネージメント・アテンションという厄介な制約が生じ易いということですか?

そういう状況になれば、ちゃんとデリバリをコントロールできなくなります。忘れられたり長く放置された注文があって、「約束の納期間近」になって顧客が騒がないと、約束どおり届く可能性も殆どありません。その状況では、組織がカオス状態になって、パフォーマンスが混沌として、人間が作った仕組みはどれも長生きしなくなります。

明確なのは、この価値のフローで、マネージャーの注意力が制約になるようなことは耐え難いということです。それで、どの組織も、競争相手と互角に戦える一定レベルの安定性をもった価値のフローを維持するために、それに適すスキルを持つマネージャーを探すのです。その典型的なオペレーション・マネージャーは、積極的に火を見つけて消せる人です。そういうマネージャーを新しいビジョンを考え出す仕事に向けるのは難しい。

ところが、将来に向けた取り組みのフローを見ると、状況はかなり違います。現状のパフォーマンスを改善するためのアイデアは、それを開発し、念入りにチェックして実施に移すに使えるマネージメント・アテンションを大幅に超えるほど、沢山あって普通です。マネージャーの注意力に過度な負担がかかる結果、将来に向けた改善計画を実行に移すのに長い時間がかかり、新しい製品のフローも遅くて不安定な状態なのに、あまりに長い間、同じ顧客、同じ製品、変わらないプロセスの現状に捕らわれ身動きが取れないでいます。

アイデアは無限にあるのだから、マネージメント・アテンションが将来への取り組みのフローの制約なのは当然だとして、マネージメントがフォーカスを失わないためには強力な規律が必要です。それは、まずその戦略にコンセンサスを取り、それに基づいて、素のアイデアのどれを吟味するか同意を得てから、どのアイデアを詳細に検討するか決めるプロセスを踏んだ後、実行に移すものを小数に絞るということです。現時点では我々の知識不足で注意力のキャパを測るのは無理なので、マネージャー・チームでそれぞれ対処すべき未解決問題の量を指示する、何か大まかな規則を採用すべきでしょう。

この種の規律では、各マネージャーが完了責任を負う「ミッション」として課題をモニターし、それぞれ期限を割り当て、未完了のミッションの数を監視することが求められ、遅れているミッションが多過ぎないか確認して、一人でも負荷が超過したマネージャーがいる兆候があれば、ルールを更新しないといけません。

しかし、些細な問題まですべて「ミッション」に数えるのは現実的ではありません。マネージャーは、火消しを終えたら、それ以外の緊急な問題と短時間で終わる多くの小さな問題を処理しないといけません。部下に権限を委譲すれば、どのマネージャーの片にかかる重荷も大幅に軽くできます。しかし、習慣を変えるというのは難しいもので、ほとんどの場合、マネージャーはそういうものだと諦めて、結局、マネージャーとして管理しなといけない小さな問題すべてに加えて、典型的なマネージャーなら中規模と大規模なミッションをどれだけ処理できるかというレベルの、公平で平凡な判断にごく近いものになってしまいます。

それ以上にマネジメントのキャパシティが必要になったらどうなりますか?

マネージメント・アテンションという制約を強化するのはどれほど難しいのか? 簡単なのは、マネージャーを増やすことです。でも、それには問題が2つあります。1つは「限界利益/生産性の低下」と呼ばれるものです。既にいるマネージャーたちとのコミュニケーションの負荷が増えるので、新しいマネージャーを増員しても、以前ほど大きくマネージメント・アテンションの総キャパは増えません。もう1つの問題は、管理構造全体を再チェックして、変えないといけないかもしれないことです。

部下への権限委譲は、マネージャー一人の肩に負わせる負担を増すもう1つの方法で、管理階層を再構築する必要はありません。ここで問題になるのは、マネージャーが部下を信頼するように変わることは、どの問題に注意を集中して、どれは脇に置いておくかの統制を改めるよりずっと難しいことです。

ですから、部下に権限を委譲して管理者ピラミッドを拡げるのは、マネージメントのキャパシティを高める正しい方法ですが、経営トップとしてずっと続けなければならない義務は、現状を上手にコントロールし、新たな脅威出現の予兆を見つけるのにも一部注意を割きながら、経営トップとして選択した最も将来性の高い関心事に、全マネージャーの注意を集中させることです。

 


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著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

70歳にもなってブログを書く理由

自己紹介

この記事の原文: Raw Thoughts on the Management Attention Constraint

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

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