【ブログVol.17】売上、キャパシティそして利益の改善

小さな織物メーカーG社は翌四半期の見通しを立てようとしています。同社は、何か思い切った決断をしないと、次の四半期の総スループット(T)は$485,465だろうと予測しています。しかし、その期間の総業務費用(OE)は$485,000で、税前純利益はたったの$465です。それでは採算割れギリギリだし、それも見込みに過ぎません!

営業は、共食いの恐れがない限り見込み客に有利な条件を提示する売上増大策を見つけろと言われています。直感的に他の売上に多少とも悪影響がでると感じるなら、それを勘案した提案に変えて、スループット(T)と負荷の計算に反映するのはもちろんです。初期の交渉がうまくいきそうなことが分かりました。それで、いくつか新しいオプションが経営陣に提案されました。

予想される負荷は次のグラフのとおりでした:

図の各行は、それぞれ一つのクリティカルなリソースのキャパシティに対する相対的な負荷を表わします。青紫は通常の販売の負荷で、ピンク色が提案の特別セールスで増加する負荷です。現在の「最も弱い輪(訳注:最も弱いところ)」である染付け工程は、負荷が使用可能なキャパシティに対して約91%になります。

そして、財務状況への影響は下の表のとおりです:

今のところ、負荷の増加は現有のキャパで賄えそうです。なぜなら、染付けのリソースでも、最も弱い輪の保護能力(Protective capacity)の限界値95%を越えないからです。ですので、業務費用の増加はゼロ(ΔOE=0.00)で済みます。

つまり、営業をプッシュするだけで、利益が$465から$45,965まで一気に伸びると見込めるのです。

ですから、現場にどれだけ本当の余剰能力があるか分かると、もっと多くの販売機会を見つけ出せという営業へのプレッシャーになるということです。もちろん、時には新しい売上が既存の売上を奪うことを勘定に入れると、新しい販売機会は全体としてより高いスループットを生むものでなければなりません。

もうひとつの必要条件は、能力プロファイル(Capacity profile)が、受けたものはすべて市場の要求どおり納入すると保証できる適正なものであることです。つまり、すべてのリソースに十分な保護能力が必要だということです。

G社の状況が改善して売上がもっと増やせると分かれば、G社の経営者はさらに売上を増やせと営業をプッシュし続けるに違いありません。

最も弱い輪である染付けのリソースは、保護能力の限界までまだ3~4%負荷に猶予があります(訳注:限界は95%だとして、今のところ91%だから)。それ以外は皆、それよりずっと大きな余力があることになります。ですから、染付け工程以外のクリティカルなリソースのキャパを多めに使う製品の販売は、スループット(T)次第では見入りが良いかもしれません。

一番の懸念は、売上の増加でリソースに過剰な負荷がかかるかもしれないことです

そうなれば2種類のアクションを真剣に検討しなければなりません: 

  1. キャパシティバッファを使って使えるキャパシティを増やす。当然、計算によりΔOEがΔTより小さいことは確認しておく。
  2. 過負が超過したリソースのキャパシティの使用量に対してスループット(T)が相対的に低い製品の販売を減らす

最初の売上増進企画をチェックした後、まだ売上を増やせる余地があると分かって、さらに別のアイデアを含めてチェックしたら、次のような望ましくない能力プロファイルになったとしましょう:

G社の経営陣は、こんなに負荷が超過したら、すべての見込み案件を約束どおり納入できないと悟りました。それで、最終的に利益が大幅に伸びるという条件で、いくつかの案件を諦め、キャパシティの増強に追加出費する覚悟をした上で、何か手を打たなければなりませんでした。

前述の2種類のアクションを両方とも慎重に検討しました。営業担当重役から約束を破ることにはならないという確認が取れたいくつかの商品の販売を減らせば、業務費用は増加する(ΔOE>0.0)が、いくらかリソースのキャパシティを増やすことで、コンピュータの高速な計算によると、能力プロファイルは最終的に次のとおり妥当なものになるようでした:

そして、最終的な利益は次の表のようになりました:

以上のシナリオを整理すると、キャパシティのデータを慎重に分析するのと並行で、営業をプッシュして新しい販売チャンスを探し出させます。次に、負荷が超過するリソースのキャパシティを使い過ぎる案件の受注をいくらか抑えます。そうしてさらに、手持ちのキャパシティを増強することで能力プロファイルを適正にして、たった$465だった最終利益を$130,065まで大幅に伸ばしました!!!

以上のように、コンピュータ化した高速計算の支援で、翌月、翌四半期または翌年の活動計画を、営業、製造・開発、財務の主な幹部が同席して共同責任で決める会議を設ければ、会社のビジネスに莫大なインパクトを与える優れた意思決定ができます。


著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: Sales, Capacity and improved Bottom-line

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