【ブログVol.48】新製品の価値を発掘する - 第2部

新製品の価値評価に関する最初の記事の続きから始めます。

質問3: その制限を回避するために今行っているルール、規範または行動にどんなものがあるか?

この3番目の質問は、現在のルールややり方あるいは行動をじっくり見ることで、新しい視点を提供します。現在の行動を明確にする理由は3つあります。

  1. 価値を判断する基準になる。たとえば、制限の緩和で時間が節約できるなら、それが大体どれ程か知るのが重要。
  2. 今のやり方や行動を変えるときの惰性の力が分かる。
  3. 狙う市場セグメントの適切な表現になる。

一度にグラス一杯ずつしか飲まなくてもワインの味を長く保てるワインボックスを考えてみましょう。ワインの普通の飲み方は、標準750ccのボトルを開けて飲み干すことです。しかし、これからは、ゴム栓をしてポンプで空気を抜けば2〜3日は味を保てる、結構よい方法があります。

誰がそういうワインボックスに興味があるわけ?

何人か集まる社交行事や家庭行事には、ボトル丸々飲むのが合うでしょう。しかし、それしかないと、ワイン好きの個人やカップルで飲むときに困ります。

薬局の電子メールサービスは、行列に並んで待つ現状に比べたら時間の節約になります。しかし、薬局に一般顧客に対応できる十分な数の職員がいれば、薬剤師が調合に長い時間かかる処方箋でない限り、この新サービスに価値はありません。ですので、このサービスは比較的忙しい顧客、特に薬剤師が必要な処方箋を持っている人々向けのサービスだろうと理解できます。もちろん、近くに薬局が少なく混んでいることが多い地域では、時間の節約はもっとずっと高い価値があります。

質問4: その新しい技術の恩恵にあずかるには、今行っているルール、規範または行動のどこを変えなければならないか?

この質問は、どんな新製品または新サービスにも使えます。顧客にとって最大の価値を引き出すために顧客が必要なものはすべて認めるべきです。なぜなら、顧客がその価値を最大限活かせると保証することが、我々の重要な関心であり利益だからです。

3番と4番の質問が結び付いて、使い方の違いが対比され、完全な価値が暴きだされます。さらに、4番目の質問は、その価値の引き出し方に顧客が気づくかどうかは定かでないことを示唆します。Microsoftは、私みたいな普通のユーザーが、Windows 10をどう使えばその利点を最大限引き出せるか気づかない可能性を考慮すべきだと思います。

新しいものの敵は何と言っても惰性です。私たちは皆惰性の影響を受けますが、それが組織となると惰性の力が急に大きくなります。多くの組織は、インターネットがもたらした新たな可能性を未だ消化し切れていません。たとえば、従業員の大半が毎日事務所に働きに来なくても、どんなに効率的に働けることか。

ここで挙げた2つの例は、どちらも個人ユーザーに焦点を当てたものです。ワインボックスの例で3番と4番の質問をすると、丸々飲むつもりでボトルを開けるのと、その時飲みたい分だけ飲むのと、楽しみ方の違いが浮き彫りになります。しかも、ワインボックスのお陰で、美味しいワインのボトルを飲みかけで捨てる思いをせずに、食事に合わせて色々なワインを美味しく飲む楽しみを味わえるようになります。

ところで、薬局の電子メールサービスでは、薬局にただ薬をもらいに行くだけですが、その前に、処方箋をスキャンして、他の細かい条件を入力するなど、インターネットを使う作業が必要になります。

質問5: 抵抗されずに上記の変化を可能にするには、その新技術(製品)をどこにどう使うべきか?

これは、5番目の質問のゴールドラット博士による一番最近の表現です。これは要するに、前の質問の答えに応えて、その製品とマーケティングに必要な変化をどう実行するかです。これは新しいものに対する抵抗の一般的な影響を重視するものです。多くの場合、その抵抗の原因は、新しい製品やサービスのせいで生ずる悪い副作用です。ボール紙製のワインボックスでは低品質に感じられ、上等なワインの愛好家や社会的なステータスや品格を重んじる人には合いません。結論から言えば、「極上ではないが美味しい」ワインを入れるワインボックスというところでしょう。それでも美味さが必要なにに変わりありません。だって、そう美味くないワインを3リットルも欲しい人なんていますか? 普通、酔っ払いたい人はワインをそう飲みません。

開発プロセスでフォーカスすべき一番大事なことは、新製品の価値を高めて、ユーザーが価値を完全に認めるまでの時間を短縮するには何が必要かを考えることです。たとえば、薬局の電子メールサービスを分析すると、特定の市場セグメントに本当の付加価値を提供したいと思うなら、薬の宅配サービスを提供する価値があると分かるかもしれません。

質問6: それをビジネスとして、どう構築し、どう収益化して、どう持続するのか?

この6番目の質問は、他の製品やサービスへの影響を含めて、全体像を描いて、その新製品と組織の全体戦略との依存関係を突き詰めないといけないことを、改めて皆に思い起こさせます。

ここで、組織の戦略に不可欠な3つの要素(訳注:構築、収益化、持続)の基本的な意味を改めて強調しておきます:

  1. 開発し、生産して、顧客に価値を提供するのに必要な能力・機能のすべてを築き上げる
  2. 上記の能力・機能を駆使して狙う市場に大きなインパクトを与えて、その市場が製品(サービス)の価値を認め、それを買えるようになってもらう。ここはマーケティングと営業に焦点を当てたもの。
  3. 成長を持続する! ゴールドラット博士は、成功するには適切な準備が必要だと常に強調していた。なぜなら、持続することの影響は、能力(特に大きな組織を運営するマネージメント能力)とキャパシティ(能力をどれだけ使えるか制限するもの)の両方に波及するからだ。

ここで述べた6つの質問には、より徹底した分析とおそらく拡張が必要でしょう。たとえば、明らかに、製品やサービスのポートフォリオの有効性をどう検証するかの指針が必要です。確かに、上記の6番目の質問は、そうする必要性を改めて思い起こさせます。私は、これらの問題をさらに深く突っ込んで皆さんと一緒に考えることができたら喜しい。


著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

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