この記事は、私Eli SchragenheimとShoshi Reiter博士の共著です。
経営するということは共有するゴールを達成することです。ビジネスで最も一般的なゴールは、現在から将来にわたってお金を儲け続けることです。病院は、患者をより健康にすべく一生懸命努力します。教育機関の目的は、人、特に若い人々を、知識豊かで貴重な市民にすることです。
教育のためのTOC(TOCFE:TOC for education)では、カリキュラムや学生の行動を中心に教育の分野で沢山のインプリメント事例があります。
教育の支援と改善への組織的貢献とは何か?
あらゆる学校や学部の長期的な目標は、言葉にすると次のように言うことができるでしょう:
生徒が、自分の力を最大限に発揮して、社会の中で貴重で貢献する存在になれるようにする。
当然、個別の教育組織は、もっと具体的で長期的な目標を宣言しなければなりません。それには、教育機関個別の社会環境も影響するのは明らです。貧しい地域の学校は、豊かな地域の学校とは違うところに重点があります。工学系大学の学部には、ビジネス系の大学とは違うゴールがあるはずです。固有の価値と特定の分野の知識が最も重要であり、それが他と差別化するゴールかもしれないのです。
経営者あるいはマネージャーは、多くの場合、実際には短期的な中間目標をゴールにしています。たとえば、「もっと多くの学生を募集する」、「国家試験で高い成績を取る」、「中途退学を防ぐ」、「学校の福利厚生の向上」…。これらはどれも最終的なゴールではありません。むしろ、それらはマネージャーが今時点でフォーカスすべきだと思うものを表しています。
教育機関の経営にTOCが貢献できるならそれは何だろう?
教育の質の向上はゴールを達成するに重要な要素です。しかし、学校経営には他にもチャレンジングな課題があります。我々の組織は、様々なグループのリソース(たとえば、人的資本、不動産、お金)、様々な圧力をかける利害関係者や団体が関わっています。以下の議論では、すべてのマネージャーが組織(学校、学部、…)の運営にいくらかの自由度を持っていることを暗黙の前提としておきます。以上のことから次の重要な疑問が出てきます:
より多くゴールを達成するためには、どうすれば教育組織を効果的に運営できるか?
実行している間にゴールの相対的な達成率をどうやって測るか? 遅れてしまったと気づくまでにどれだけ時間がかかるか? ひょっとして、取ったアクションに効果がなく、ゴールに近づけないのではないか? いつ間違いから学び必要な変化を実行すればよいのか? 遅れる前に間違いを正す助けになる仕掛けはどんなものか・・・
今日の主な評価指標は、試験の成績や教師の個人的評価がベースになっています。問題は、問題発生の兆候を素早く発見して、知識とスキルおよび価値を学生に伝えるまでの教育上のフローを正すには、どれほどの分析が必要かです。
私たちは、教育機関とそれ以外の組織では「フロー」の意味が大きく違うことを強調したい。学生は一定の期間教育を受けます。したがって、リードタイムという概念は教育では無意味です。何より重要なことは、学生がこの定まった期間の内に何をどう学んでどう消化するかです。
ゴールドラット博士は、複雑さ、不確実性、対立という、マネージメントにおける3つの恐怖を提唱しました。多くの教師を抱えて学校を運営すると、各自独立した仕事をしているように見えますが、最終的にはどの生徒の教育も全体のミッションである事実を考えると、対立の発生が予想されます。外部の利害関係者、特に両親まで考慮すると、学校の典型的なマネージャーの多くの時間は、対立の解消に割かれています。ですから、TOCの一般的なウイン・ウインのアプローチと具体的な対立解消の技術(対立解消図:Evaporating Clouds)は、より良い解決法を導くだけでなく、対処スピードを速めて、どうやって学生への知識とスキルの伝達のフローを向上させるかにフォーカスする余裕をマネージャーに与えるはずです 。
難しいのは、フローの実質的な質をどう可視化してどう測定するかであり、特に学生全員への教育の全体的影響をどう測るかです。 その厄介な領域では、思考プロセス(TP:Thinking Process)を導入する必要があり、ただ単に学生に教えるのではなく、彼らの成績とその科目や学年との関係を含む様々なシグナルを構造的分析法を開発して、その教育システム固有の制約と中核問題の両方を突き止めなければなりません。
ここに5段階集中プロセス(5 Focusing Steps)を適用することは、制約リソースをどうやって最大活用すべきかに経営のフォーカスを絞れる大きな可能性を秘めています。ほとんどの教育機関は公的部門に属し、自治体または政府が決めた予算に基づいて運用する必要があります。
予算固定の環境では、上位の制約が下位の制約を生む!!!
教師と教室は予算で制限されます。生徒1人当たりの教師工数が大きいほど達成できるゴールが高くなると仮定すれば、予算による制限で教師工数が運営の制約になります。また、予算は全教員のうち何人が本当に優秀な教員かも制限するでしょう。ですので、マネージャーが優秀な教師X人と並みの教師Y人を与えられたとして、それら教師の最大活用は、優秀な教師X人の生徒への配分が如何に効果的か、それ以外の教師を如何にその能力の限界一杯までやらせるかに掛かっています。
頻繁に新しい教育方法が学校に導入されます。時には、特定の新しい方法を導入するかどうか決める権限がマネージャーにあることもあるし、もっと上位の権力者が決める場合もあります。しかし、後者の場合でも、マネージャーが実際の導入をリードしなければなりません。最も重要なのは、本当にその方法が期待した成果を出せるかどうか早い段階で吟味することに集中することであり、もしそうでないと分かれば問題を解決するに必要なアクションを取らなければなりません。良い結果であれ悪い結果であれ、どうやってその兆候を分析するか? ひょっとしたら、TOCの思考プロセス(TP)と一度きりの出来事から学ぶ組織学習が、この困難なミッションに極めて大きく貢献する可能性があります。
私Eli SchragenheimとShoshi Reiter氏は、2016年1月30日にhttp://www.TOCICO.orgで、この話題をテーマにした無料のウェビナー(訳注:http://www.tocico.org/events/EventDetails.aspx?id=740382)を行う予定です。
著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。
この記事の原文: Managing Educational Institutes