【ブログVol.51】アメリカン航空が開発したイールドマネージメントの良い面と悪い面を学ぶ

2016年5月10日
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収益管理(Revenue Management)とも呼ぶイールドマネージメント(Yield Management)は、どの航空会社でも使っている価格設定の手法で、他の事業分野にも広がっています。 ウィキペディアには、「イールドマネージメントとは、消費者行動を理解し予測して影響を与えることを通じて、供給量が固定または消費期限の短いリソースから得られる収益あるいは利益を最大化することを目的とする可変価格戦略である」と定義されています。

ここで興味深いのは、使わないと得られる収益を永久に失う「消費期限の短いリソース」です。特定のフライトの座席はそのうってつけの例です。とにかく、飛行機が飛び立ってしまえば、その空席を売る機会は2度とありません。

どんなリソースもキャパシティは平等なんですよね?

今日空いている機械はキャパシティの一部を永遠に失います。 TOCでは、特にボトルネックで失われたキャパシティはスループットの喪失に等しいのはよく知られています。イールドマネージメントでは、1回のフライトの座席を潜在的な制約と見なします。ホテルの1日や飛行機のフライト1回のようなミクロなキャパシティを、バッチごとにキャパシティをフルに埋めることで売上を増やせる独立した販売機会と見なすのは、それ自体は正しい視点です。その状況は、製造において複数の製品や製造指示を一つの炉にまとめて入れて、炉のキャパシティを目一杯使おうとするのと同じです。

乗客のほとんどは、特定の日の特定の時間の便に乗る必要があります。それは、相当混みそうなとき金額を高くするチャンスを生みます。なぜなら、出発日の変更は、多くの場合不都合な代替案を選ぶことになるので、全く同等のサービスを受けようと思うと、通常より高いお金を払わざるを得なくなるのです。それに対して、予約がそう混みそうにないときは、非常に安い料金設定にすれば他の航空会社から客を奪って、そうしないと逃しただろう収入を稼げるかもしれません。

イールドマネージメントは、クリティカルなリソース個々にキャパシティを最大限使い切る方式です。それに加えて、イールドマネージメントでは、需要が低いと予想される場合は、価格を下げて市場の需要を最大限活用しようとしますイールドマネージメントのこの基本的方針は、5段階集中プロセス(5 Focusing Steps)に完全に一致するものです!

しかし、この制約の活用方法は、通常のTOCのアプローチとは異なります。 TOCであれば、飛行機が制約だという前提で、全体のスループットを大きくするフライトを増やす方法を見つけて、まず飛行機を最大活用しようとします。それに対して、イールドマネージメントでは、制約のミクロなキャパシティ、つまり、フライト1回それぞれ単独孤立したものと見なします。それらのサービスは、物理的に特定の時間と特定の場所に顧客が居る前提なのが普通です。そうすると、そういうサービス組織は、製造より頻繁な山谷に晒されます。もう一つの違いは、動的な価格設定の乱用です。 ゴールドラット博士は、可能な限り多くの市場セグメンテーションに分けて、各々別々に高い価格を正当化する根拠として短い応答時間を使おうとしていたのは確かですが、航空会社やホテルのように、顧客に正当性を納得させられないほど気ちがい染みた価格設定はしませんでした。

イールドマネージメントの裏には、真の変動費(TVC:Truly-Variable-Costs)はゼロだという仮定が隠れているのです。この仮定は航空会社やホテルではおおよそ正しい。 実際、(最初に開発した)アメリカン航空のイールドマネージメントに関する最初の記事の一つには、この仮定がちゃんと述べてあり、フライトに乗客を追加するには一定のコストはかかるが、それは非常に小さく無視できると括弧書きで付け加えてあったくらいです。たとえば、イールドマネージメントをレンタルカー事業に適用するなら、収入(R:Revenues)ではなくスループット(T)を使わなければなりません。なぜらな、走行距離に比例する交換部品のコストのような無視できないTVCがあるからです。動的な価格設定が市場に受け入れられるなら、Rの代わりにTを使うイールドマネージメントの導入は、多くの企業にとって重要なヒントになるはずです。すでに指摘したとおり、どのリソースもキャパシティの「消費期限が短い」のです

イールドマネージメントの主な過ちは、度を過ぎた最適化の追求だろうと私は思います。航空会社は、座席が売り切れる確率どころか、ひとつの座席がある特定の高い価格で売れるかどうかまで予測する、超高度なアルゴリズムを開発しました! フライトごとに出発の2、3ヶ月前から毎日行われる予測で、顧客と旅行代理店には理解できないような価格変更が頻繁に発生します。顧客と代理店に共通するこの不満は、競合のどこかがその競争ルールを変えて業績を一気に伸ばすチャンスを生みます。

どの航空会社も、市場は動的な価格設定にそう過激に抵抗しないだろうと思い込んでいます。ところが、乗客の多くは、同じフライトの近い席の人が同じ料金を払った確率は極めて低いことは知っています。誰しもそれは嫌なのだが、どこの航空会社もこの動的価格設定を用いるので、乗客は、広く沢山の格安航空券を探して、タイミングの自由度を大きくするみたいな、対抗手段を見つけざるを得ないのです。最新の価格が1日で変わるかもしれない事実は、顧客には大きなプレッシャーになります。私は、どこかの航空会社が出発までの時間に相対的な厳格な価格付け方針を採用すれば、顧客の満足を高めてその航空会社の人気が高まるはずだと思っています。

この予測と最適化のアルゴリズムへの依存が、顧客の逃避を何とか避けられている理由は2つあります:

ひとつは、どの航空会社も互いに細部まで全部真似し合っているという単純な事実です。格安航空会社の参入で、航空会社の間に波風が立ったが、ある程度バランスが取れて、再び大規模な模倣が続いています。しかし、もし影響力の大きな航空会社が価格設定ルールを変えれば、すべての航空会社がそれを採用するかどうか決めるのに時間がかかり、その間に航空会社内のバランスが変わるだろうと、私は確信しています。

もう一つは、特定の航空会社へのロイアリティを生み出す得意客向けのマイレージサービスの効果です。これは特別な顧客価値を生み出したマーケティングの非常に大きな成功であり、気ちがい染みた動的価格設定の悪影響をある程度は中和します。乗客に無料チケット(本当に無料ではなく、単に非常に安いだけ)を提供するという気前のよさは、その変動コストは非常に低いという理解を根拠にしたものです。T(スループット)とOE(業務費用:Operational Expense)の違いを分かっているはずのTOCの世界にいる我々は、皆改めてこの教訓を学ばなければなりません

航空会社は、個々のフライトを制約として最大限活用するに必要なことは理解しているのに、飛ばすか飛ばさないか、どのルートがより儲かるかを判断するとなった途端、原価計算の欠陥の罠に陥るのです。だから、彼らの重要なリソースであるはずの飛行機(場合によってはターミナル)ではなく、個々のフライトの能力制約(Capacity Constraint)の影響にとらわれてしまうのです。

他の手法や他の事業分野の経営慣行の良い面と悪い面の両方を学び取ることこそ、TOCにとって本質的な価値をもたらすものに違いありません。

 


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著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: Learning the Good and the Bad from Yield Management, a methodology developed by American Airlines

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

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