【ブログVol.72】フォーカスって一体どういうこと?

2016年8月31日
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Finding the needle with magnifying glass in the haystack ** Note: Shallow depth of field

経営者やマネージャーの大半は、組織の経営にフォーカスすることが絶対必要だと思っています。

しかし、それだけだと、TOCの肝を表わすフォーカスという言葉でも、そのマネージャーに与えられる恩恵はごくわずかです。

パレートの法則で考えたらどうなるでしょう。普通の会社は顧客の20%から収入の80%を得ています。なら、20%の大口顧客にフォーカスして、残りの80%を捨てたらどうでしょう? あなたはそれで納得できますか?

本当に重要なのは、フォーカスするかしないかではなく:

どこにフォーカスするか?

そして、もっと重要なのは:

フォーカスしないのはどこか?

ここでフォーカスしない部分を強調したのは、そもそもフォーカスが必要なのはキャパシティが有限だからであり、すべてにフォーカスしてその価値を全部引き出すのは不可能だからです。その制限の正体は、おそらく、我々にそのリソースを最大活用することにフォーカスせざるを得なくしている能力制約(Capacity constraint)なのでしょう。部下に権限を与えるのは、マネージャー個人が組織の制約になることなく重要な課題にフォーカスする手段です。多くの場合、本当に重要な問題への対処が遅れないように経営幹部にマルチタスクさせられないことが、クリティカルな制限です。これはマネージメントアテンションと呼ばれ、組織の将来をデザインするための究極の制約だと考えられているものです。

市場の需要を一部放棄することが理に適っているのは、全体としての売上とスループットの増加が実現し得るときだけです。ある程度需要を放棄して、T – OE(純利益:スループット - 業務費用)が改善する水準までOE(業務費用)が減少することは、極めてまれです。売上高の20%しか占めない小口顧客である80%の顧客を放棄しても、それで失うT(スループット)を補填するに必要な20%を大きく上回るOEの減少は、ほぼ確実に見込めません。これは、キャパシティの要求量が減少しても同じ割合でOEが減少しないという、OEの非線形性によるものです。組織が所有するスペースを考えただけでも、顧客数が減ればスペースが狭て済むかどうか疑わしいし、もしそれが可能だとしても、OEの節約にならないかもしれません。

特定の一つの領域にフォーカスするものと決めつけてはいけません。使えるキャパシティをフォーカスして、他の領域やテーマの取り組みに大きな遅れを出すことなく、どれくらい効果があるか考えないといけません。ゴールドラット博士の次の洞察を思い出してください:

市場の方をセグメントに分けなさい、リソースをセグメントに分けてはならない!

つまり、リソースの多くは、複数の異なるセグメント向けの異なる製品やサービスに貢献できるということです。これは非常に有益な能力です。しかし、効果的にフォーカスするには、キャパシティの制限に従って最も弱いリンクを最大活用しないといけません。ほとんどの場合、最大活用するとは、複数の市場セグメントのために働くよう促すことですが、あまり多すぎてもいけません。

フォーカスするのはどこかという質問は、TOCのすべての部分に浸透しており、常に、まず何が制限になるかに目を向けて、そこから答えを導き出します。DBR(Drum Buffer Pope:ドラム・バッファ・ロープ)ではそれは制約です。バッファ管理(Buffer Management)では、質問にちょっとひねりが入って「従属が崩れないために、今やらないといけないことは何か?」となります。現状ツリー(CRT:Current-Reality-Tree)は、組織の将来像を描くために最初にフォーカスすべき組織の中核問題を明らかにします。CCPMは、クリティカルパスではなくクリティカルチェーン(Critical Chain)にフォーカスしながら、フォーカスの喪失させて甚大な損失を引き起こすマルチタスクにも注意を払います。戦略・戦術(S&T:Strategy and Tactic)ツリーで重要な概念は、決定的な競争力(DCEDecisive-Competitive-Edgeで、これもやはりどこにフォーカスすべきかを示します。実は、DCEは顧客の側に見つかった制限をベースにしたもので、我々の組織にそれを除去または緩和できる能力があることが前提です。したがって、ひとつのDCEを獲得するには、すべてのマネージャーと専門家に相当大きな負荷が加わる極めて困難な挑戦なので、一度に複数のDCEを構築しようとするのは避けた方が賢明です。

ゴールドラット博士が、組織の業績に本のわずかしか貢献しない些細な事柄を、実はロシア語が語源の「チュープチック(choopchik)」というヘブライ語のスラングで表現したのは見事でした。ここで重要なのは、チュープチックには、やってみようかなくらいのプラスのインパクトはありますが、もっとずっと重要なミッションを怠ったことで極めて大きな損失を出すという点です。私は、チュープチックという概念は、どこが正しいフォーカスか探す中で直接導き出されたTOCの重要な概念だと思います。

TOCに基づいたフォーカスという概念は、経営への不確実性の影響を理解するには重要です。 組織のパフォーマンスへのチュープチックの貢献は、通常は変動よりも小さく、「雑音」以下のレベルだと言えます。現実の世界でそんなに小さな効果しかないと、実際何か利益があったかどうかすら分かりません。やる価値のあるミッションなら、雑音よりかなり大きな効果を及ぼすもののはずです。

ずっとパフォーマンスを改善し続けるカギは、どこにフォーカスするかです。それに関わる要素は、現状の問題の診断と、全体のパフォーマンスを左右し、どこに問題が起きるかを示す、ごく少数の変数です。どこにフォーカスするかの間違いは、あちこちあふれており、破綻する組織と生存競争で精一杯な組織が沢山ある一番の原因です。

 


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著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: What FOCUS means?

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

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