【ブログVol.77】TOC流の製販調整

2016年11月10日
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製販調整(S&OP:Sales and Operations Planning)とは、通常直近の短期間にフォーカスして、何をどれだけ生産し販売するか販売部門と生産部門で調整する、よく知られた慣習です。

しかし、見込めるスループット(T)と、残業や特殊なシフト、派遣やアウトソーシングも含めた必要なキャパシティのコストを計算に入れて、有望そうな市場機会のアイデアを分析することが本当に可能なら、もっとずっと大きな価値を生むでしょう。因みに、私は、ある一定のコスト(ΔOE)を費やして短時間にキャパシティを確保する手段をキャパシティ・バッファと呼んでいます。

オペレーション全体に余剰のキャパシティがあれば、私たちはその状態を「市場に制約がある」と言います。そういう状況では、追加の案件はどれも歓迎です。問題は、その状況が代理店にどう影響するかです。彼らは、新しい顧客と市場を獲得するために本当に大きく変化せざるを得ないのか、相変わらず今の顧客にフォーカスして、本のわずか売上を増やすのに数少ない小さなチャンスを追いかけ続けていられるのか?

仮に営業マンが新しい市場セグメント向けの新しいアイデアを持ってきたら、はたして彼らは耳を傾けてくれるでしょうか? 有望な機会をもたらすだけでなく、問題を引き起こすかもしれない。経営トップはそういうアイデアをどうやってチェックするのでしょう?

異なる製品をいくつかパッケージにして、含む製品全部の合計価格より安く売るアイデアが出たとしましょう。そうすると、直ちに次の質問がでてきます:

  • そのパッケージを売れば、どの製品も売上が減るのは間違いない。そこで質問: どれだけ減るか? 全体のT(総スループット)は増えるのか減るのか? 業務費用(OE:Operating Expenses)に影響が出るのか?
  • 新しい潜在需要に応じられる十分な保護能力(Protective Capacity)があるのか? そうではないとするなら、キャパシティ・バッファを使っても、業務費用の増加(ΔOE)よりスループットの増加(ΔT)の方がずっと大きいのか? それとも、足りないキャパシティの単位当たりスループット(T)が低い製品の売上を意図的に減らさないと駄目か?
  • そういう新しい提案に対する需要は誰も正確に予測できない - 損する危険性と大きく儲かる可能性を両方とも確認するなんて可能なの? 言葉を変えれば、その決定の良い面と悪い面は何なのか?

普通の製販調整ではこういう質問は出ません。ある特定の値が現実を反映した予測と見なされ、単位原価を根拠に財務的な影響を考えます。そういうプロセスの欠陥は、単位原価と1点予測という2つの誤った考え方で、販売チームとオペレーションチーム双方で良かれと思ってやってるにもかかわらず、間違った意思決定と平凡な結果に終わるのです。

実際、ほとんどの組織は、既存の顧客と市場セグメントに執着して、組織の業績を飛躍的に伸ばす手をほとんど打っていないのです。

Vector Consulting Group Indiaの共同創設者でディレクターのKiran Kothekar氏は、2016年のTOCICOカンファレンスのプレゼンテーションの中で、次の重要な見解を示しました。

目標を使うと、組織全体としてのパフォーマンスを落すことになる!

これはつまり、目標がパーキンソンの法則と非常に似た振る舞いをするということです。皆その目標を達成しようとはしますが、後でもっと高い目標を課されるのは嫌だから、目標を超えようとしない方が良さそうだと分かっているのです。もうひとつ悪い副作用は、ほとんどの目標は局所的だということです。目標の設定は全体の予測を考慮して行われますが、どこかある部分で目標に届かなかったとき、別の部分で全体の目標を達成しようとすれば害を及ぼします。つまり、ある部分が目標を達成することが組織のどこかで問題を起こすのです。たとえば、特定の製品に努力を集中して目標を達成しようとすると、他の人の責任または将来の売上を犠牲にするかもしれません。長期的な目標を満たすために行った販売プロモーションが、一時的でも大規模なキャパシティの不足を生じると、他の製品の売上に悪影響が及んで全体の純利益(= T - OE)が減少します。

得られた利益はどれくらいか別にして、実際の副作用は目標を設定すると、TOCのどんなインプリメントも最終的に崩壊するだろうということです。Kiran氏は、彼のプレゼンテーションの中で、目標としてTOCの業績評価尺度を使っても、同じ悪い副作用を生ずるだろうことを明らかにしました。私は全面的に同意です。

経営者の頭の中には目標を設定する理由があります。つまり、営業マン、現場の担当者、中間管理職に良い結果を出すに必要な努力をさせることです。定量的な評価尺度がないと、従業員は常に自分ができる事とすべき事未満の事しかしないだろうという懸念があるのです。

個人や部門全体のパフォーマンスが大体思う通りか判断するには、定量的な評価尺度に頼っては無理です。だって、バラツキが大き過ぎる上に、個人、部門、外部の出来事の間に依存関係が沢山あり過ぎです。モチベーションの低下を見つけるには、行動パターンを観察するのが良い方法です。自ら進んで改善のアイデアを出し易くして人々にやる気を起こさせ、全体のゴールへのその貢献を分析することで、出たアイデアを真剣に扱うことが、望ましい文化を維持する一番の方法です

不確実性にうまく対処するには、予想される結果の範囲を使う必要があります。その範囲を下回ったら、まず分析を求めるべきで、反射的に非難してはいけません。もちろん、範囲を上回っても、分析を求めます。その原因は、ほとんど常に、誰かのパフォーマンスの低下や上昇ではなく、我々が多少とも知り得る現実の変化が現れ始めた兆候であって、不確実性にうまく対処して、強い競争力を獲得するための鍵を握るものです。

私は、以前の記事で、DSTOCと呼ぶTOCをベースにした意思決定支援のための継続的な製販調整プロセスについて述べました。そこで私は、オペレーションの現場はもちろん営業マンの勘も取り込んで、それに基づいて結果の範囲を予測し、正当な最悪のケースと正当な最良のケースの財務的な影響を確認することをお勧めしました。それは、不確実性な環境の下で賢明な決定をするためだけの方法ではありません。それは、部下に彼らがすべきと知っている事をさせるのに、目標を使うという習慣を止める賢明な方法でもあるのです。

 


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著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: Sales and Operations Planning the TOC Way

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

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