【ブログVol.88】TOCの重要な洞察: 「つまらないこと(チュープチック)に時間を使うな」

ゴールドラット博士は、TOCに「チュープチック(choopchik)」というヘブライ語のスラングを取り込みました。それは元々ロシア語で、非常に小さなつまらない問題を指す言葉です。ゴールドラット博士に言わせると、チュープチックを解決すればひょっとして価値があるかもしれないが、それは顕微鏡を使わないと分からないようなものです。

ここから出てくる洞察は:

我々の周りはいつもチュープチックで溢れている。 そういうチュープチックに時間を使っていたら、価値のあることはひとつも達成できない。 だから、そういうチュープチックに拘わるのは一番無駄だ。なぜなら、我々には成すべきもっとずっと価値が高いことがあるからだ。

ここで重要なのは、我々の究極の制約である注意力(訳注:マネージメント・アテンション)です。これは個人か組織かに関わらず当てはまることで、要は、より大きな価値をもたらすものに注意を向けよということです。この洞察の背後の因果関係をもう少し掘り下げると、個人であれ組織全体であれ、理論上達成可能な潜在的価値をすべて獲得するのはとうてい無理だと解かります。ですから、ちょっとした付加的な価値を生む小さなチャンスは諦めて、もっと価値の高いことの達成に注意を向けないといけません。

因みに、洞察とは、現実に対する新しい認識です。もしそれが当たり前になっているなら、今のパラダイムをうまい表現に言い変えただけです。でも、チュープチックを無視するのが、本当に当たり前になっていますか?

つい先日、誰だったか、自分の部下一人ひとりが契約どおり毎週・毎月フルに働いているかどうか確認するのに長い時間を費やすという、道理をわきまえた良いマネージャーの話を私にしてくれた。これってチュープチックですよね? でも、これは割とよく見かけませんか?

当然のことが普通にできていないなら、なにか理由があるはずです。

これと関連があるもうひとつの洞察:

相当に高い価値を得ようと一生懸命になるのはリスクが高いが、チュープチックに時間を使うのは簡単で確かだ。

危険を感じるのは本当に恐ろしく、その恐怖でマヒして、人は何か別の事で気を紛らわそうとします。大きな価値を生み出そうと一生懸命になるのがそんなにリスクが高いことなのか? 必ずしもそうとは限りませんが、リスクの高い状況を見極めて、そのリスクを軽減または除去する方法を見つけ出さなければなりません。潜在的に価値の大きなリスクの高い取り組みを考えずに済ます普通の方法は、チュープチックに注意を集中して、ほんの小さな価値の達成で気分良くなることです。

ですから、夢に抱く本当に大きな価値を生むには、リスクに挑んで必死に努力しないといけないのではないでしょうか? それがまさに、チュープチックを相手にするなという洞察の言うことです。重要でないことを大層に扱うという妙な言い方をしたのは、目に見える形でそれを示して、人々が本当に重要なことに自分を引き戻すようになって欲しいからです。

因みに、チュープチックに構うなという、もっと普通の洞察は、次の疑問を自分自身に問うことです:

自分が今忙しくしていることで、なにか本当に大きな価値が生まれるのか?

私個人はチュープチックな話題について書くつもりはありません。でも、私が書く話題が常にチュープチックではないという確信はないので、その疑問は気になるのは確かです。だから、多分完璧ではないけれども、私は多くのチュープチックをうまく避けていると思うことにしています。

ベルリンで開催される次のTOCICOカンファレンスを改めて紹介させてください。そこには、新しい洞察を知るよいチャンスがあります。私は、そこで多くの皆さんと知り合いになって、互いにオープンに話し合い、洞察を共有したいのです。 他の人々から重要な洞察を学ぶのは喜ばしいことです。その洞察をより深く理解して、どうやればその価値をさらに大きく引出せるかより深く考えることが可能か否かは、私たち次第です。


著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: A key TOC insight: “Don’t Spend Time on Choopchiks”

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