【ブログVol.98】最も難しい経営スキルを養う

2017年8月28日
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Kiev Ukraine - October 29 2011: Steve Jobs founder of Apple Computers posted on the cover of Time magazine for April 12 2007.

マネージャー皆に不可欠な本当に重要なスキルが1つありますが、その要件を満たすレベルのスキルを持った人はほとんどいません。人を率いて定めた目標を達成する、あるいは、事業開発その他戦略上の課題に重点的に取り組む、または、製品の独自の価値を市場に発信するマネージャーは皆、自分以外の人が見ている現実を理解しないといけません

ある程度のスキルは誰にもあります。なぜなら、ほとんどの人は、配偶者、家族、隣人と一緒に生活しており、他の人の考え方をある程度理解しないといけないからです。違いはどこかといえば、私たちはそれらの人々を個人的に知っていることです。しかし、大部分の顧客やサプライヤーがそうですが、一度も面識のない多数の人々の反応を予測しなければならないマネージャーには、それは当てはまりません。交渉相手である組合の代表者の考えを理解している経営幹部はいったい何人いますか、知っていても本当はよく理解できていないのではないですか?

政治家は、大衆を理解できるレベルまでこのスキルを研ぎ澄まさないといけません。彼らはメディアを通して群衆を見ています。さらに重要なのは、彼らはチャットやブログを通して、群衆の中の個人の内なる恐怖や欲望の理解を深めようとしているのです。

「理解する」という言葉は、私たちが取る行動に対する相手の反応をおおよそ予測できるという意味です。そして、そうできるようになるには、カギになる重要な因果関係を相手の視点で再構築できる必要があります。

「他の人を理解する」ことは、通常は気高い気持ちを表すのですが、皮肉なことに、良い経営判断をするにも実務的に必要なのです。

しかし、知らない人が思う因果関係を理解するというミッションは、常に困難です。文化や社会経済環境が異なる人々の行動を理解しようとすると大きな障害が伴います。価値観が違えば行動もまったく違うものになるので、相手の行動の動機になっている重要な因果関係を知るのは困難なのです。

また、他人を敵やライバルと思うのは、感情的な障害になります。なぜなら、理解するとは、相手の立場に立つことだからです。そこが問題になるのは、相手の立場を理解することが一番必要なときです。歴史上で見ると、強い軍の将軍は、敵が何を考えているか深く分析できましたが、そうするには、それを理解するのは嫌だという感情を抑えなければなりませんでした。

ほとんどの経営幹部の問題は、自分以外の人々がまったく違う見方をしているかもしれないのに気づかないことです。マネージャーは、顧客や利用者が本当に望んでいるものを理解しなければなりません。それは自分が望むものとは大分違うはずです。競合の視点から見た状況の分析も随時必要です。ところが、顧客、競合またはサプライヤーの立場から見た因果関係の分析は、普通は行われていません。

他の人の気持ちになって、その人の立場で重要な因果関係を組立てるスキルを養うのは本当に可能か?

マネージャーが相手の考えを理解できないといけない人々は、次の4種類です:

  1. 組織のあらゆるレベルの従業員。
  2. 自分の組織と直接取引関係にある、またはそうなる可能性が高い他の組織で、公式な役割りを与えられている人。
  3. 自分の組織の製品/サービスの個々の顧客と利用者。
  4. 自分の組織と商取引以外の利害関係がある個人と組織。これには規制当局、メディア、近隣住民が含まれる。

TOCには、外から客観的に組織を見るのに役立つ汎用的なツールが2種類あります。それを使えば、組織の業績を左右する重要な部分の因果関係を素早くかつ正しく観察できます。個人経営の人の行動を予測するより、実は組織の中で意思決定をする個人、つまり組織の行動を予測する方が簡単です。しかし、組織に有効なものには、特定の個人を理解するにも役立つものもあります。どこが違うかといえば、組織では多くの個人の動きを同期させなければならないこと、それには組織はゴール(目標)と価値観、行動をシンプルにせざるを得ないことです。また、組織は理性を保とうとしますが、ほとんどの個人はそうとは限りまりません。

他の人や組織を理解する最初の種類のツールは、一見複雑で不確かに見える状況を単純にして、真に重要なことに効果的に集中するための一連の洞察、特に5段階集中プロセス(5 focusing steps)です。これは他の組織を見るにも同じです。避け得ない不確実性に気付けば、そのレベルの不確さ(ノイズ)を超えた影響を及ぼす、意味のある事だけに注意を集中できるというのは、それら洞察の一部です。

たとえば、根拠が不明な仕組みに従うよう部下に要求したら、抵抗するだろうことは容易に想像できます。どんな評価尺度を使うにしても、「その評価尺度に従業員はどう反応するだろうか?」と訊かれたら、それがどう行動を変えるか容易に答えられるような反応をするに違いありません。

それと非常に関係が深いもう一つのツールは、TOCの思考プロセス(TP:Thinking Processes)です。これは、組織、潜在的な顧客の集団または個人が、我々の特定の行為に対してどう反応するか予測できる類のツールです。

乗客が飛行機から強引に引きずり下ろされる様子を目の当たりにした多くの人々の圧倒的に否定的な反応を考えてみましょう。実は、この厳しい反応は、ユナイテッド航空の経営陣には驚くべきものになりました。でも、周りの乗客がビデオを撮ってバラ撒くだろうことも思い至らないほどややこしいことですかね? SNSやメディアの反応を予測できないほど複雑過ぎるのでしょうか? 現地のマネージャーは、急速に拡大していく脅威に気づくのに、一体どれだけ時間がかかったのでしょう? 結局、経営トップが深く謝罪し、乗客に多額の賠償金を支払わざるを得なくなり、会社の評判を大きく損なう羽目になりました。

次の図は、この状況を大雑把に示した簡単な因果関係です:

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重大な疑問: 一体なぜ、現地の幹部は乗客の反応に思い至らなかったのか? 答えは単純です: ややこしそうになので、他の人がどう反応するかそれまで考えないことにしていた

双方の必要条件を理解できる言葉にしたひとつのクラウドで示す2つの集団の対立みたいな明確な例外を除くと、思考プロセス(TP)は、私たち自身の問題の因果関係に焦点を当てるのが普通です。ところが、その同じ因果関係を分析するツールが、他の人の立場で見た変化の悪い副作用に注目した小さな因果関係ツリー(訳注 NBr:Negative Branch)を綿密に構築するのにも役に立ちます。我々の直感が効かないところは、論理的な推論と有意義な情報の先見的な絞り込みから得られるのです。

では、製造業の会社がある製品ファミリの生産停止を検討している場合を考えてみましょう。問題なのは、その製品は単位当たりのスループット(T)が相対的に低い上に、今現在他の製品の販売拡大を妨げている負荷の高い貴重なリソースのキャパを大きく消費することです。

その会社は、直接の顧客である流通業者がその決定にどう反応するか考えなくて大丈夫でしょうか?

事前に流通業者の意見を訊かなくてもよい正当な理由があるとして、流通業者がどう反応するか予測する方法はありますか?

ゴールドラット博士は、顧客やサプライヤーの業務を分かっていない幹部が多すぎると嘆いていました。それは、現実に対する他の人の考え方を理解しようという意欲の無さと非常によく似ています。

そもそも流通での業務経験のない者に、流通業者の立場が解かるのか?

流通業者について単純な事実をいくつか挙げておきましょう:

  • 膨大な数の商品(SKU)を取り扱っている。
  • 顧客のほとんどが様々な品物を買う。
  • すべてのSKUではないが、彼らが提供するSKUには、ほとんどの顧客が許容可能な代替品がある。
  • 事業を営む上でロジスティクスが大事な役割を果たす。

このすごく短くかなり明白なリストを見ただけで、もしサプライヤーがひとつの製品ファミリの生産を止めたら、流通業者に大きな問題が生じて反発せざるを得なくなるのは、容易に想像がつくはずです。

流通業者の立場からすれば、その製品ファミリの代替品として顧客が快く受け入れてくれる他の商品を既に持っているかどうかで違います。その答えが肯定的なら、流通業者にはサプライヤーの行為はそう大きな痛手になりません。

しかし、期待に沿う代替品が手に入らないと、どこか他で代替品を探し当てて、別の店で買うようになる顧客も出てきます。そうなると、流通業者は他のサプライヤーから代替品を仕入れざるを得なくなって、新しいサプライヤーがさらに多くの商品を供給するようになる危険性が高くなります。

もう一つの懸念は、そういう相当な損害を被る行為に対する流通業者のマネージャーの感情的な反発です。

ビジネスパートナーの行動を予測する必要性は誰にも明らかなはずです。しかし、実行していません。否定的な反応はもちろん、どんなことが大きく肯定的な反応を生むかも予測することが重要です。

とにかく、他の組織の立場を理解するスキルは、TOCで大きく向上する可能性が高いのです。そのためには、それは達成可能で、且つ大きな利益をもたらし、絶対に必要だということに気づかないといけません。それは、ものごとの本質にあるシンプルさを見抜くことの一部に他なりません。

 


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著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: Developing the most difficult managerial skill

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

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