コンサルタントはそう冷やかされても仕方がない。経営コンサルタントは、組織の管理階層に属さないので、組織内の駆け引きでは外野です。しかも、コンサルタントは一切責任を負わず、マネージャーの実務経験者も本の稀にしかいません。
経営コンサルタントにはタイプが2つあります。第一のタイプは、自分の役割りはファシリテーターだと思っていて、人々が彼ら自身の考えを述べるよう動機づけて、それを周囲に巧く伝えられるようファシリテートするのを仕事にしている人たちです。そういうコンサルタントは、どんな問題であれ自分の考えを述べるのを敬遠します。私はここでこの種のコンサルタントに言及するつもりはありません。
もう一つのタイプのコンサルタントは、非常に強く鋭い意見を明確に述べます。 そういうコンサルタントの大部分は、顧客の組織のニーズを徹底的に調べあげて、その組織が何をすべきか厳密に述べたドキュメントを作成します。マッキンゼーのような大手の戦略コンサルティング会社はこのアプローチに従っています。それとは別のアプローチは、コンサルタントが何かアイデアを思いついたら、意見の一致が得られるまで顧客と話し合うことです。私は、それがTOCのコンサルタントが取るべきアプローチだと信じます。
経営幹部がコンサルタントを必要とするのは一体なぜか?
法律顧問やマーケティング・エキスパートのように、コンサルタントが非常に特殊な分野の専門家なら、価値は非常に明確です。 TOCは主に製造など業務運営系のコンサルティングで知られていますが、TOCの知識体系は経営の広範に及び、狭い分野に特化したものではありません。つまり、TOCのコンサルタントは、会社の経営幹部が幹部として当然すべきと思われている仕事を支援しけないといけないのです! そこで起きそうな新しい問題は、自分の仕事を自分でちゃんとできないから、代わりにTOCのコンサルタントがやっているという、幹部にとって不利な印象を持たれることです。
容易に手に入らない新しい知識や知見をコンサルタントが与えてくれなら、彼を使うある程度の正当性があるに違いありません。問題は、組織として幹部が担当する分野すべてに高度に精通するのを期待すべきでないのかどうかです。つまり、TOCは特に専門性は高くはないが、組織とその部門をうまくマネージメントするには重要で適すものだとするなら、経営幹部は関わりのあるTOCの知識に精通していなくてよいのでしょうか?
これは、1980年代に始まったTOC内部の重大な対立(ジレンマ)まで私たちを引きずり戻します。私はTOCの発展に関するウェビナーに備えて準備をしているところなので、この対立は私にとって相当考えさせられるものです:
AGI(Goldratt Institute)立ち上げ当初は教えることで頭が一杯でした。しかし、多くの顧客がその教育コースで習った一般的なソリューションを短時間でインプリメントできずに、成果が出るのが大幅に遅れて、彼らはその方法論を信用しなくなり、終には元の間違った普通のやり方に戻ってしまうことが大きな問題になりました。
経営トップ相手のコンサルティングに完全に切り替えたら、はるかに早く結果を出せるようになったが、さらに良い結果を出そうとする気力を保つことが大きな問題になるのも分かりました。
この対立を解消する唯一の方法は、教育とコンサルティングを両方とも提供することで、対立そのものを解消することだと私は思います。必ずしも両方同時にする必要はないが、最終的に両方ともやらなといけないのです。
先ほど述べたとおり、コンサルティングにフォーカスすると、本来自分がやるべき仕事を外部のコンサルタントに任せてお金を浪費しているという、マネージャーに不利な印象の問題が生じます。大手のコンサルティング会社は、「ベストプラクティス」を確立するために似た組織がどこも行っている一般的な方法に関する知識を提供することで、その問題に対処します。そのために、コンサルタントは、皆に広く知られた問題に他がどう対処しているかという、国際的な経験を教える者だと思われています。そういうわけで、他がうまくやっていることを真似ることで成果を出せて有利だという仮説が支配的です。これが正に、経営トップは一体なぜ国際的なコンサルティング会社を招いて組織を変えようとするのか、卓越している証拠であるベンチマークを拠り所にした説明になるのです。
私個人は、ベンチマークは悲惨な結果を招くと思います。なぜなら、それは現実の因果関係とあまり一致しない一般的類似性から導かれたもので、特にどの組織も持っているある種独特な個性の効果を無視しているからです。それどころか、どの組織も、ベンチマークとはまったく逆の明確に独自な能力を活かした成功法を模索すべきだと私は思います。
経営者がすべきことを外に投げてお金を浪費するという印象に対する答えは、外部のコンサルタントは特定のビジネス分野の外から見た観点やアイデアを提供できることです。TOCの教育トレーニングは、問題の本質を捉える力を与え、それを克服する包括的な方法を示します。さらにTOCは、たとえば部分最適思考から生じた間違ったパラダイムを見つけ出すのに最適です。これは、最も優れた経営者でさえ簡単には得られない能力です。なぜなら、彼らはキャリアのほとんどを同じ分野で過ごしており、それ故、外部の者しか間違いが分からない、その分野共通のパラダイムに捕らわれているからです。ですから、競合も皆信じる共通のパラダイムが、ある特定の環境で正しくないと分れば、それを改めたパラダイムから生まれるチャンスは極めて大きいのは知っておいてください。
外部のコンサルタントに有利な点がまだ他にあります。経営幹部、特にCEOは、厳しい辛い意思決定では非常に孤独です。組織の中で他の誰かに相談すると、その経営者に対する組織内のイメージに悪い影響がでます。経験豊かな賢いコンサルタントへの相談は必須のニーズに対する答えです。厳しい辛い意思決定は好ましくない影響を生むかもしれないのは皆分かっています。これは、皆に付きものの様々な先入観も絡んで、不確実な現実に生きる宿命です。ですから、何がプラスの影響で何がマイナスの影響か、そして、そのマイナスの影響をどうやって取り除くかの議論が、真のニーズなのです。
そうだとすれば、本当の価値を提供するために外部のTOCコンサルタントに求められるものは何でしょう? TOCの形式的な知識なら、教育研修や書籍から得る方が効果的です。多くが定着したパラダイムに対する挑戦であるTOCの一般的な知見と組織固有の特性をうまく繋ぐには、経営幹部とコンサルタントの間で批判的対話が必要です。それは「それとあれをあーやってください...大丈夫です、私を信じてください」というのではありません。効果的な解決策を見つようとする、内部と外部両方の本気が必要なハードな思考プロセスなのです。
一般的な考え方と今相手にしている環境の板挟みで、コンサルタント自身動きが取れなくなったら、どうなるんでしょう? それはごく普通に起こります。なぜなら、一般的な考え方を特定の環境に翻訳するのは決して簡単ではないからです。ある特定のプロジェクトで働くコンサルタントが、その環境に馴染みのない別のコンサルタントと問題を議論する場面を想像してください。それこそ、私のようなベテランの価値があると、私が信じる場面です。
著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。
この記事の原文: The Role of the Consultant in the Life of an Organization