これまでの主なTOCアプリケーションは、市場に至る価値の流れ(フロー)を改善することに焦点を当ててきました。実際、5段階集中プロセス、DBR、CCPMそしてTOC流の補充はすべて、顧客への信頼性の高いデリバリを達成するのが目的です。
それを達成した後の明らかな課題は次のとおりです:
もっと売上を伸ばすために、大幅に改善したオペレーションの強みをどう収益にするか?
この記事では、大幅に改善したオペレーションの付加価値すべてを、どうやって顧客に知ってもらうかは述べるつもりはありません。それは間違いなく簡単な仕事ではありません。しかし、その仕事に火がつく前に、次の事を明確にしておかねばなりません:
市場に何を新たに提供するのか?
たとえば、現在の市場の標準リードタイムが6週間で、そのオペレーション(生産等)を3週間で終えられるとした場合、市場に対して「私たちなら確実に3週間で納入します」と言えますか? それが大丈夫だとして、価格は前と同じでないといけませんか?
真にフローを改善する能力は、効率第一主義に挑戦し、制約を最大活用して、制約以外をそれに従属させる(訳注:5段階集中プロセス)ことで、注意をシステムの制約に集中することからもたらされます。
しかし、フローを詰まらせる重大な要因の1つは、一時的または常態的なキャパシティ不足です。 念のため言っておきますが、キャパが十分でないからといって、負荷が使えるキャパを超える正真正銘のボトルネックだとは限りません。十分な保護能力が無いというだけで、フロー停滞の一因になる一時的な負荷のピークを起こすに十分なのです。しかも、自由に使える保護能力が小さいほど、予期しない遅延が長引く可能性が高くなります。
需要が以前と同程度で増えないなら、こういう心配はせずに済みます。そもそも市場に提供するものが変わらない限り、新しい顧客が来る理由がありません。TOCをベースにしたオペレーションの改善が進むと同時に、相当大きな余剰キャパシティが解放されて、自由に使える保護能力が十分に確保できるからです。
しかし、市場に新しいものを提供したらどうなるのか?
理想的な決定論の世界なら、新しく提供するものが、短納期で納期を確実に守るという高付加価値だが価格が高いとすれば、量的な需要はさほど変わらずに、価格が高い分総スループットは増加して、業務費用(OE:Operating Expenses)はいっさい増えないはずです。
残念ながら、世の中はそう甘くはありません。高い価格で高い価値のものを提供すれば、予想より需要がずっと小さいことも、予想より需要がずっと大きいことも、どちらも起き得ます。航空業界のように動的な価格設定が市場で規範として受け入れられているなら、比較的簡単に状況をコントロールできます。そうなれば、簡単な試行錯誤で容易に高い業績を達成できるでしょう。しかし、動的な価格設定は、他のほとんどの業種では全く一般的ではないし、敢えて言うと、航空業界もその全面的な効果は再検討しないといけないと私は思います。
最初はとにかく、高いお金を要求せずに、短納期で信頼性の高いデリバリを約束するのはどうでしょう? これは、短納期で信頼性が高いデリバリなら顧客が得るものが大きい時には、うまくいくかもしれません。
問題は、組織の存続が危うくなるくらい話がうますぎることです。あまり需要が大きいと、新しい約束どおり納入できなくなります。それは、組織に悲惨な未来をもたらすかもしれません。
大きな市場を獲得できる絶好のチャンスなのに、あまり注文が多すぎると対応できません、一体どうすればいいのでしょう?
一般的に言うと、解決の方向性は2つあります:
- 提供するものをゆっくり変えることで慎重に進める。つまり、新しく提供する部分は、既存の市場に今時点で提案可能なものの一部に抑えておくということ。そうして、小さな変更を徐々に加えて提供内容を改善し続ける。
- 最も合理的なシナリオを用意する。 これにはさらに次の2つの機能が必要である:
- 入ってくる注文を調べて、すぐに所要キャパシティを計算し、それを受けても十分な保護能力が残るかどうか確認するコントロールメカニズムを設ける。
- 通常使うキャパシティよりかなりコストが高くても、相対的に小さな単位で素早くキャパシティを増やせる手段を用意する。これは、以前の記事で「キャパシティバッファ」と呼んだもの。
私が大雑把に見たところでは、ほとんどの組織は一見より安全なルートを選びますが、改善の効果がほとんど出ないという犠牲を払っています。ここで大事なポイントは、第2の方向性は第1の方向性と同様に安全なものになり得るが、2つの重要な機能がちゃんと機能しないとダメなことです。
入ってくる需要の流れに焦点を当てた上記のコントロールメカニズムは、互いに補完し合う2つのメカニズム(バッファ管理と計画負荷)の連携を前提としています。
バッファ管理は、予め計画にバッファを含めておけば、バッファの実際の消費量を監視することで貴重な情報を引き出せるというアイデアが根拠になっています。その大きなメリットは、バッファ管理では計画に入れたバッファの状態だけを調べる点です。確かかどうか分からない他のデータには一切依存しません。
もし読者が計画負荷(Planned-Load)の考え方に精通していない場合は、以前の記事「計画負荷の背後にある重要な情報」を読んでください。
このジレンマとその2つの解決法のデモンストレーションは、私のTOCICOウェビナー「The TOC Challenge」から提供しています。TOCICOメンバー向けのライブのウェビナーは、2017年9月9日(土)と9月10日(日)の2回予定しています。そのウェビナーの録画ビデオは、2017年12月10日からTOCICOのウェブサイトで一連のウェブセミナーと一緒のところに公開されますので、TOCICOのメンバーならいつでも自由に視聴できるようになります。
詳細はhttps://tocico.site-ym.com/events/をご覧ください。
著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。
この記事の原文: We have significantly improved Operations – what we should do next?