【ブログVol.3】「日常的で避けられない不確実性」にまつわる問題

2015年12月17日
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マネージャーがすべき意思決定すべてにリスクがあるかといえば、必ずしもそうではなくて、深刻な損失を被るものもあれば、相当の利益が得られるものもあります。実際そんなリスクが大きな意思決定は非常に稀です。私がいつも言うように、大部分の組織はマネージャーが過度に保守的になるよう仕向けますが、「日常的で避けられない不確実性」に対する間違った対処方針で被る巨額な損失に比べたら、その人々が行う意思決定による損失は取るに足りません。

たとえば、CCPM(TOCのプロジェクト管理向けソリューション)を見て、プロジェクトに目に見える明確なバッファを加えるという、プロジェクトバッファの考え方が、どれほど劇的に新しい知見か、自分なりに考えてみてください。そもそも、タスクの期間は明確に決められると人々が言い張るのはなぜでしょう?

ゴールドラット博士は、組織というものは不確かなのに無理やり確かに見せたがるものだ、とよく言っていました。 

確かさのごり押しで、経営者やマネージャーが不確実性の悪影響を増幅しているのは、なんとも皮肉です。私たちは、時間がかかり過ぎるプロジェクトや、過剰な仕掛かりの処理に追われる製造現場をよく見かけます。組織の多くは、相対的に安いリソースである人手不足に苦しんでいるのです。

ここに共通する原因は、人間のマネージャーなら誰でも感じる「無駄」にしているという非難への恐怖です。

私が好んで使う典型的な例は、実は間違った使い方ですが売上予測の使用です。不確実な変数を記述するには、最低2つの数字、通常は平均値と標準偏差が必要だと確率論や統計学の講義で教わりました。ところが、様々な決定に用いる予測レポートの大半は、ひとつの数字しか含んでいません。

因みに、分散がない一点予測とは、一体どういうものでしょう? たとえば、製品-134の翌月の売上予測が10,000だとして、実際の売上が4,776、8,224、13,004あるいは18,559になる確率はどれほどですか?

10,000というマジックナンバーの出所が担当営業の見積もりだとしたら、それは推定平均(数学では期待値という)なのは明らかですよね? 未来を見通す魔力のない営業担当に都合のよい数字を言っている可能性はありませんか? 予測を根拠にした売上目標の達成で評価されるなら、彼らは見積もりを下げるでしょう。しかし、安定供給の保証(アベイラビリティ)が求められるなら、見積もりを膨らませるでしょう。

結局、予測なしでは組織を運営できないのだと私は思います!

私は、動的バッファ管理(DBM:Dynamic-Buffer-Management)にしても、売上と在庫を見比べて、在庫バッファがおおよそ適正か否かを予測するものだろうと思っています。

しかし、単一の数字を予測に使うのは致命的な間違いです。単一の数字に頼ると、経営トップは営業と現場を都合よく評価できるでしょうが、その評価には間違いが多く、営業と現場のマネージャーは経営トップの無知から自分の身を守らなければならなくなるのです。

いつどこでも起き得る日常的な現実である不確実性への対処を間違えば、全体への影響は甚大です。経営者が保護能力の必要性を理解せずに高い「効率」を要求すれば、価値を生むか否かに関わらず、人は「何かやること」を探し出して、常に忙しい振りをするでしょう。

しかし、需要の一時的なピークだけでなくマーフィーにも対処できる十分な柔軟性を保持しておくには、本当に保護能力(Protective capacity)が必要なのです。TOCのバッファは、フローを安定させ全体のパフォーマンスを改善するのに大きな効果を発揮しますが、自分たちだけの隠れたバッファを使って大きな損失を起こす領域まですべて面倒をみるのは無理です。たとえば、採用では、学習力ではなく技術的適正を100%求めるおかしな採用条件に根本的な間違いがあり、予算化では適正な予備費を確保しないという問題があります。また、複数の市場セグメントで存在感を維持する必要性すら、多くの組織が十分には理解していません。

不確実性への対処の仕方、特にいつ起きるか分からない日常的な不確実性とのうまい付き合い方を学べますか? 大半のマネージャーは、基本的な統計学は学んでいても、ガウス分布(正規分布)とはまったく違い、明確な確率分布を持たず、短期間に似たことが起きるのが極めて少ない不確実性の扱い方は教えてもらっていません。

本質的に避け得ない不確実性とうまく付き合えるポリシーに改めるのに乗り越えないといけない本当の障害は、「最適な決定」という幻想を捨てて「十分よい決定」に置き換えて、不確実性と依存性両方の影響を受け易い不確かな数字で人を評価するのを止められるかどうかです。

どうですか、やれますか? 私が思うには、それがTOCそのものです。

 


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著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: The problems with “Common and Expected Uncertainty”

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

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