【ブログVol.82】キャパシティバッファ - ひどく見くびられた戦略的コンセプト

2016年12月22日
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どんな組織や企業であれ、自由に使えるキャパシティがどれだけあるかは重大な関心事です。顧客に価値を提供するには、その提供者には異なる2つのものがなければなりません。価値を生むにはそれに適す能力(技術や機能)が必要だし、相手が満足するよう需要に応えるには、その能力各々に自由に使えるキャパシティが必要です。

2つを比べると、能力の方が扱いが容易です。能力を使う上で比較的に難しいのは、さまざま異なる能力をどうやって効果的に同期させるかです。たとえば、新製品を設計するにはエンジニアリング能力が必要だし、それを生産するには製造能力が必要です。ところが、エンジニアと生産管理者のインターフェースは、とても容易と言えるものではありません。そういう同期能力は、管理能力に求められるより包括的な条件の一部です。それに加えて、新製品からスループットを生み出すには、購買、販売、財務の他にITも必要なのが普通です。それらをちゃんと統合するには、すべてを巧くコントロールしなければならないのです。

それに比べて、価値を生み出す上でキャパシティの扱いはもっと厄介です。「十分なキャパシティがあるか?」という問に答えるには、すべての需要を勘定に入れた負荷を計算して、使える量が限られたキャパシティと比較しなければなりません。たった1つでもキャパシティが足りないリソースがあれば、最終的にそのせいで納入が遅れることもあり得るのです。ですから、次の質問の方が実務的に的確です:

今ある需要とキャパシティの制限を前提として、我々には約束どおり納入できる十分高い信頼性があるか?

キャパシティの管理で共通した厄介な問題は、平均としては十分なキャパシティがあるのに、ある時ボトルネックが出現して、多分顧客の許容時間を遥かに超えるくらい、顧客に約束した価値を提供するのが遅れることです。

そういう負荷のピーク時に評判を落して、後の売上を減少させるのは非常に深刻です。そこで問題は:

使えるキャパシティを非常に短い期間で増やすことは可能か?

非常に短い期間でキャパシティを確保するとなれば、相当割高になるのは明らかです。しかし問題は、その犠牲を払わなかった代償として、将来遥かに高いつけが回ってくるかもしれないことです。

ある夜勤のホテル支配人が、予約が入っている客2人が空港から到着予定なのに、手違いでその夜はスタンダードルームに空きが無いことに気付いたとしましょう。

これは、特定のリソースのキャパシティ不足が非常に高くつく例です。問題を解決しないといけないのはホテル側なのは極めて明白で、顧客側の責任ではありません。さもないと、顧客がホテルを訴えて、単に補償するだけでは済まない、もっと悪い結果になり得えます

ホテルは一体どうやって追加の部屋を見つけるのでしょう?

スイートルームのようなランクが上の部屋が空いていたら、それをその顧客に使ってもらうのが第一の選択肢です。元々それらの部屋はスタンダードルーム用に使うキャパシティには含まれませんが、スタンダードルームのキャパシティを素早く増やすのに使えるところが味噌です。第二の選択肢は、同種の別のホテルで同等の部屋を探すことです。

因みに、市場の変動は、あらゆる組織が備えておかなければならない最もたちの悪い不確実性です。その種の不確実性に備える一般的な方法は在庫を持っておくことです。しかし、注文生産する工場を含む大部分のサービス環境では、在庫を持っておくのは現実的ではありません。それに、在庫は特定の製品の需要のピークに対する守りにしかならず、同時に多くのSKUに需要のピークが来てそれを凌げるのは十分なキャパシティだけです。

では、(特定の能力を提供する)リソースのタイプそれぞれに、自由に使えるキャパシティをどれくらい確保しておくか?

内部に非常に高レベルのキャパシティを抱えて、一時的な負荷のピークをすべて凌ごうというのは、まずい経営手法で、OE(Operating Expense:業務費用)を相当に高め、それを賄うために非常に高いT(Throughput:スループット)を生み出さざるを得ないプレッシャーが掛かることになります。しかし、たとえそうだとしても、すべての需要に応えられることは、将来に渡って会社の安定性を維持する必要条件であることに変わりありません。

それを解決するシンプルなソリューションは、全く自由に使えるキャパシティ必要に応じて使うキャパシティの2種類のキャパシティを区別して扱うことです。この2つを私は以下のように定義しておこうと思う:

自由に使える(アベイラブルな)キャパシティ: 組織として定期的に購入し、全部使うか否かに依らず支払う、特定の能力用に確保したキャパシティの一定期間の総量。

たとえば、毎月180時間勤務で雇用された一人のオペレーター。そのオペレーターが継続的に毎月20時間の残業代を貰っているなら、その残業時間も上記の自由に使えるキャパシティに含めて、残業代は経常費のOEに入れるべきでしょう。

キャパシティバッファ: 比較的少量単位で素早く購入できる追加のキャパシティ。

通常、キャパシティバッファは、残業、派遣や臨時職員、フリーランサー、アウトソーシング、あるいは長い待ちを解消するのに店長にレジ係をさせるみたいに、主に別の能力用に使われるリソースの代用から成ります。

このキャパシティバッファは、一時的な需要のピークから組織の売上と評判を守ります。キャパシティバッファを使う代償は、明らかにそれを使うコストが割高なことです。

キャパシティバッファは、前もって計画し、常に管理しておくべきものです! ギリギリになってから策を探すのは、長期的に見て大きな損失になります。しかし、キャパシティバッファを維持しておくには、追加のコストが発生します。たとえば、作業現場に特別なシフトを入れるには、臨時職員が必要です。しかし、何ヶ月も仕事を与えないでおく人を臨時職員として集めることはまずあり得ません。ですから、急ぎで呼び出せる臨時職員を確保しておくには、その人々に毎月最低限の仕事が与える必要があります。

したがって、よい評判を得たい組織の全体戦略には、キャパシティバッファを維持する明確な戦術を定義しておくべきです。つまり、その戦略的な計画には、自由に使える常備のキャパシティの大きさを維持するルールとキャパシティバッファの使用ルールを詳しく述べておかないといけません。

いくらキャパシティバッファでも、そのキャパシティを使い切るかもしれない!

これは相当大きなリスクです。なぜなら、このバッファを使い切ったら、もうどこにもバッファが無くなり、そのダメージは誰も想像しなかったくらい大きいからです。ですから、バッファ管理を使ってキャパシティバッファを常に監視しておかないといけません。

バッファ管理を実施するということは、バッファを通常のキャパシティと同じ指標で測ることです。キャパシティを測る最も一般的な単位は、特定のリソースの1時間(訳注:人なら「人時」)です。そうすると、製造現場のオペレーターのバッファは、おそらく週当たり120人時になるでしょう。1日で60人時を追加で使うと、そのバッファを50%消費することになります。さらに30人時消費すれば、短期的警告を発するレッドゾーンに食い込んで、バッファの大きさが不十分かもしれないことを計画立案にフィードバックします。市場のニーズを満たすために組織としてどれくらいの柔軟性を維持しないとならないか、そして業務費用(OE)をうまくコントロールするにはどうすればよいか、より深く理解するには、詳細かつ定期的にキャパシティバッファの効果を分析しなければならないのです。

 


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著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: Capacity buffers – a grossly underrated strategic concept

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

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