【ブログVol.83】TOCの医療への貢献

2017年1月16日
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差別せずすべての患者を治療し、決して害になるものを与えないという誓いは、すべての医師の生活を支配します。そうして、同時に複数の患者が治療を必要としているとき、実に不幸な対立が現れるのです。それでも、医師の能力を必要とするケースのピークが散発的であれば、「競合している」患者の病状をベースにした一定の優先順位づけの仕組みがあれば、そういう状況にうまく対処できます。

しかし、医療スタッフの負荷が大きいと、患者の競合で多数の患者を危険にさらす深刻な遅れが生じ、本当に医療システム全体のパフォーマンスが危うくなるようなことになります。

医療への現在の TOCの大きな貢献のエッセンスは、医療システムというチェーン(鎖)の中の弱い環を最大活用し、バッファ管理(Buffer Management)を使って優先順位を付けることで、患者の流れを加速するところにあります。この流れ重視の考え方(フロー第一)は、Alex Knight氏の優れた著書Pride and Joyでうまく表現されています。彼は、製造とマルチプロジェクト環境に適用されたTOCの洞察を、これまでとは非常に異なる環境に「翻訳」して、TOC全般にブレークスルーをもたらしたのです。医療は、他と異なる価値観と行動パターンに支配された世界です。しかも、医療は、大きな変動にさらされても、どんな要求でも受け入れなければなりません。

その他にもTOCコミュニティの多くの人々が、患者の流れを改善する基本的な考え方に貢献しています。その中には、Boz Ronen教授、James Cox教授、Bill Taylor氏、Gijs Andrea氏がいます。

患者の流れを早めるための核になる洞察は、その大きな不確実性、必須な能力のキャパシティ不足、人類にとっての医療の価値全般を思うと、主に時間を考えた単一の優先順位付けの仕組みの構築がベースになるはずです。救急手術だけは既に決まっている優先順位を乱すことになるでしょうが、その頻度は素人が思うよりずっと低いのです。病院における患者の流れが製造やマルチプロジェクト環境での流れと大きく異なるのは、生身の人間の流れだというだけではありません。患者の治療プロセスには、治療の合間に患者がただ休んでいるだけの相当な時間が含まれ、その時間は絶対必要な「正味の作業時間(タッチタイム)」の一部なのです。治療と検査の手順は、初期段階で大体決まりますが、不確実性がかなり高いのです。したがって、救急患者の流れは、間違いなく、システム全体に影響を及ぼす非常に高い不確実性にさらされるのです。

ですから、事前に計画を組めない患者の流れの渦中にある緊急治療室の流れの改善において、TOCが医療に普及し始めたとしても不思議ではありません。本当に緊急な処置が必要な患者はごく僅かしか来ません。ほとんどの患者は、治療の必要性は高いに違いないが、定期的な治療で通院するのです。これまでの幅広い経験のお陰で、今や私たちは、バッファ管理による優先順位システムを導入すれば、緊急治療室での最長の滞在時間はもちろん、平均の待ち時間も大幅に短縮できることを知っています。この効果はチームの行動の変化を見れば解かります。彼らは進んで積極的に患者を早く解放しようと努力し、滞在時間がレッドゾーンに食い込むや必要な処置を取るようになります。また、毎週バッファ管理ミーティングを開いて、レッドとブラックの手術のパレートリストを分析して問題にフォーカスした改善をすれば、流れはさらに大きく改善します。

TOCは、担当医の割当てと手術のスケジューリングの包括的なルールの構築にも貢献しています。それらのルールは、病院内の緊急でない治療と外部の通所診療所にも適用できます。タイムバッファーを使って、治療予定の患者が本当に直ぐにでも治療を受ける意欲と覚悟ができているか綿密に確認するのも、治療プロセスの一部です。与えられた時間スロットが空いたら直ぐ入るよう患者を呼び出せるのは、そういう風に呼び出される準備が整った患者のバッファを実際管理しているからです。

病院の患者の流れを改善するのは、患者が病院で過ごす時間を短縮するのが目的です。これは、多くの場合病院がより多く患者を受け入れようとするのを制限しているベッドのキャパを解放するにも、非常に重要な目的です。「病院は過ごすには非常に不健康な場所だ」というAlex Knight氏の意見には私も大賛成です。

TOCが医療に貢献できるところは他にもあるのだろうか?

すべての人に完全かつ平等な治療を施す義務キャパシティと資金をなんとかやり繰りすることの間のそもそもの対立は、医療機関はもちろん、政府にとっても厄介な忌まわしい対立(またはジレンマ)です。それは、どの政府にあるもう一つの大きく普遍的な対立、予算制約の最大活用に繋がるものです。医療の改善は、人の人生をより長くより質の高いものにし、その両面で改善した医療を維持するには、より高い予算を必要にするという、悪循環を引き起こします。

この政府のジレンマは広範囲に影響を及ぼします。資本主義と社会主義の基本的な価値感は、その対立をどう処理するかに大きな影響を与えました。私は、「どんな対立でも解決できる」というゴールドラット博士の公理を信じる一方で、どの政府にもあるこの共通の重大な対立をどうやって解決したらよいか分からないことは、正直に認めます。私や他のTOCの専門家は、この対立を和らげることはできると思いますが、完全には解決できないだろうと、私は思います。

我々にできることは、妥協の予算を受け入れ、すべての市民にとっての最高の医療のためにその予算を最大活用することです。もちろん、何が「最良」でそれをどう評価するかの価値感は、阻害要因にもなれば解決策にもなります。しかし、相反する価値観を素直に受け入れたとしても、現在の一般的なポリシーが医療予算の最大活用を歪める行動に仕向けることを我々は知っています。その最終的な行動は、実は元々の価値感に従ったものではありません。一般的なポリシーの多くは、歪みを起こす間違った前提に基づくもので、我々が一般企業で知っているものと非常によく似ています。実際、TOCの核心は、組織のゴールの達成を歪める間違った前提や仮定を暴き出すことです。 TOCは価値感そのものには口を出しません。

いつかは、どの医療機関も、今の状態を改善して医療の価値を生む戦略を作らないといけません。

医療機関の重要な例として、ひとつの病院のレベルまで下りれば、その病院と政府の間のポリシーは与えられたもので変わらないと考えるしかありません。しかし、そういうポリシーの中でも、その病院が何を提供するかの詳細と、病院内部のポリシーとプロセスには、その病院が生み出す価値を向上させられる余地が沢山あるはずです

皆団結して、医療機関の全体としてのパフォーマンスを左右している因果関係を描いてみるべきではないでしょうか? 政府や強制された方針が医療機関の行動にどう影響するか理解すれば、私たちはひょっとしてこの忌まわしい問題に対するもっと普遍的な解決策を生み出せるかもしれません。

 


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著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: The TOC contribution to Healthcare

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

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