【ブログVol.8】相乗効果(シナジー)の不思議なパワー

相乗効果とは、システム(組織)が部分の総和より大きな成果、時には遥かに大きな成果を達成できるということです。しかし、その飛び抜けたパワーは、簡単には理解し難く、それ故そのパワーを引き出すのも容易ではありません。

スポーツだと相乗効果の価値は見てすぐ分かります。それぞれ特定のポジションに卓越した名選手ばかり集めたバスケットチームを作って試合をさせたら、まあ勝てるでしょう。でも、いつも勝てますか?

うまくいったときのチームのパワーは、選手各人の力を全部合わせたレベルを遥かに超えたものに感じるはずです。それは相乗効果の不思議なパワーが発揮されたときです。

相乗効果が効かないときは「チーム」というより単なる優秀な選手の群れに過ぎず、各自好き勝手に試合をしているだけです。TOCではこれを全体思考ではなく局所思考と呼びます。しかし、私が思うに、人が自分の利益を考えて行動するのは極めて自然です。ですから、人に全体思考で考えてもらう唯一理に適った方法は、相乗効果を発揮して全体として大きく成功することこそ、自分一人がどう頑張っても及ばない、遥かに大きな利益が自分にも得られるということを納得してもらうことです。

理論的には、どの選手の利益も全体思考で考えた上記のものに全く等しくなる明確なWin-Winの構造を構築する方法があります。しかし、私は、理論は解っていても、これまで実際そういうWin-Winのネットワークを構築できていないことを白状します。それでも、非常に大規模な相乗効果が存在するという直感的理解は、様々異なる部分を連携させてひとつの全体システムにする助けになると思います。

非常に大きな組織は、自然な相乗効果を利用してより大きな価値を生み出します。私たちは、そういう相乗効果の原因のいくらかは理解できるし、それによって「不思議さ」は小さく感じるようになります。大企業のある製品/サービスが高い評価を得ると、同じ会社の他のサービスも認められるものです。大規模な組織が放つ安定感と安心感は、相乗効果の産物であり、その因果関係は極めて明らかです。

他の多くはそれほど分かり易く明確ではありませんが、相乗効果が全く無いということではありません。ちょっと妙な言い方ですが、互いに相手を深く知る2人の選手がプレイして相乗効果が生まれる効果を「相性 (chemistry)」と呼びます。因果関係の解読が困難なものを「科学的」な名前で呼ぶのは、面白くて私の好みです。それでも、実際、ある製品ミックスが他よりなぜ効果が大きいか分かることもあります。あるサプライヤーの他のサプライヤーに対する優位性を理解するには、製品各々の詳細よりも、「パッケージ」全体としての特質を見る必要があります。それは木を見て森を見るのではなく、森を見て木を見るのと全く同じです。

プロジェクトポートフォリオは、相乗効果の評価が求められる経営課題です。つまり、新しいプロジェクトを検討する際は、そのプロジェクトをポートフォリオに追加した際のかなり不確かな影響を評価し、ポートフォリオ全体としての組織へのトータルな影響を予測しければならないということです。

そういう評価の大部分は直感的なものなので、「部分的な情報」であり本質的に不確かな情報だと思わないといけません。しかし、単に影響を正確に見積もれないというだけで相乗効果を無視してはいけません。「決して知っていると言わない(分かった気になるな)」という戒めはもちろん分かっていますが、「我々は何も知らない」という姿勢も間違っています。なぜなら、実際ちゃんと知っていることいくらかもあるからです。相乗効果の影響の妥当な範囲(訳注:最大と最小)を注意深く見積もり、その範囲を意思決定プロセスの中で役立てることはできるのです。

どんなに優れた戦略であれ、一つの決定的な競争力に結実していく、すべての取り組みから相乗効果を引き出すことを目指さなければなりません。未来永劫繁栄し続ける組織になるには相乗効果が不可欠であり、それには全体的な観点(全体思考)に加えて、直感を拠り所にした「不完全で部分的な情報」を意思決定の指針として使うくらいの寛大さが求められます。


著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: The Mysterious Power of Synergy

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