組織の場合は、求められるいくつかの価値あるいは必要条件に制約された、ただ一つの明確なゴール(目標)がなければなりませんが、人間個人の場合は人生目標が複数あってもよいというのが、私の主張です。
個人として最も重大な対立(ジレンマ)は、今この瞬間を楽しく過ごすか、自分の欲しい未来を築くかです。それは、私たちが自分自身の決断を下したときから死ぬまでずっと続く対立です。人間はいずれ死ぬという現実がその対立の一因です。なぜなら、今楽しく過ごしておかないと、いつまた楽しく過ごせるか一切分からないからです。
さらに、自分の家庭を持つと決めたら、その対立に新しい次元が一つ加わります。つまり、今を楽しむ、家族のために尽くす、自分の将来の役に立つことをする。なんと今度は3次元の対立です!
「自分の将来のために何かすること」の本質は年齢とともに変化します。初期の主な目標は、豊かでいつまでも幸福でいることです。そしてそれは、死後も残る貴重なものを何か遺したいという願いに、時間とともにゆっくりと変わります。その点で子どもたちが重要なのはもちろんですが、非常に長い間変わらない価値を生み出し、自分を他の人の記憶の中に生かし続けておきたいのです。アーティストや政治家は、その不朽の名声を得ようと一生懸命努力します。
この対立を解消するよい方法は、自分の将来の役に立つことをして今を楽しく過ごすことです。それは、学校での勉強を楽しんだり、将来のキャリアのために働くのを楽しんだりすることかもしれません。決して常にではないが、しばしばこの楽しみが本物になります。しかし、自分の将来のために何かやって本心から楽しんでも、それは対立の一部しか解消しません。なぜなら、我々は常に絶対に嫌いなことも何かはしなければならないからです。例えば、試験を受けたり、赤ちゃんのおむつを交換したりしなければなりません。
自分の将来の展望を開発していく中で、何か独自のものを生み出すと期待させるような能力を獲得します。例えば、他の人々に提供したい誰も真似できない価値を探究する、あるいは人生を通して変わらない価値を子供に遺そうと懸命に努力する献身的な親になることです。新しい事業を起こすために一生懸命に働くなら、あなたの将来の顧客に自分独自の価値を提供したくなるはずです。もし昇進したいと思うなら、あなたが勤めている組織に良い変化を起こすだろう何かをする努力をすべきでしょう。
これは、組織の決定的な競争力(DCE:Decisive Competitive Edge)を獲得することに非常によく似ています。ある特定多数の人々から特定の分野でユニークな存在だと認められることが人間としてのニーズなのです。人は、相手が提供できない価値を加えて、「競争相手」から自分を差別化しなければなりません。しかも、その人は、特別な価値をもたらす他にない素養があると認められる必要があります。
それは、自分の将来にある特定の野心を抱く人は誰でも、そのゴールを彼らが達成するに必要な戦略を見つければ、うまくいく可能性がより高くなるだろうことを意味します。
これは、ゴールドラット博士が、充実した有意義な人生を送るには必要だと言ったものです。ゴールドラット博士が若者に将来の「夢」は何かと尋ねた直ぐ後に、その夢を達成するために何をするつもりだと尋ねているところを、私は何度も見てきました。余りに多くの若者が自分の夢を語るのを知って驚きましたが、その夢を実現するのに何をする必要があるか思い浮かべようとする者が居るようには思えませんでした。
その計画は、関係者にとって他にはない独自の価値を生み出す一つカギとなる個人的な武器を何か含んでいなければなりません。個人的な戦略のそれ以外の部分は、自分の私生活の他の次元にどう取り組むか、そして他の人々に納得して協力してもらうために、どうやって自分以外の人々に自分の素養を伝えるかを述べてあればよいのです。ただし、他人を説得するときには、彼らにとって得られる価値はどんなものか直に伝えるのを忘れないでください。
あなた自身を特別な存在にしてみるというのはどうでしょうか?
著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。
この記事の原文: Developing our Own Personal Decisive Competitive Edge