リーダーシップは常に肯定的なものなのか?
オーナーと取締役会にとって、上席のマネージャーの任命は、重要だが「情に流され易い」悩ましい意思決定のひとつです。その人は真の「リーダーシップ」を発揮できるのか? 天性のリーダーが真に良いマネージャーの必要条件なのか? 私には、そういう点について皆さんとオープンに議論したい疑問があります。
恐怖状態とリーダーの登場には直接の因果関係があります。恐怖状態は、何をどうすればいいか自分では分からなくなったとき感じる危機感から起こるので、人々はそれを知っていそうな者を探そうとします。一方、リーダーは、向かう方向に疑問を感じないほど、他の人々に大きな影響を与え、自分を信頼させ従わせる人物です。人を導くこの極めて稀な能力は、危機に直面してこそ放たれるリーダーの自信と、分かり易く魅力に溢れ大胆かつ率直なコミュニケーション能力が大きく関係しています。それらすべてが、「カリスマ」と呼ばれる、どこか神秘的な影響力の源になっているのです。
多くのリーダーは戦争中に現れています。それ以外は、経済に行き詰まりを感じたときや人々の人権意識が高まったとき現れています。また、画期的なブレークスルーの兆しも、何をすべきか知っているリーダーが現れる背景になります。そういうリーダーたちが、自分に従う人々を鼓舞して希望をもたらすのです。
写真の像は、たとえあなたがその方法論や哲学を気に食わなくても、偉大なリーダーであった毛沢東です。その他よく知られたリーダーには、マーティン・ルーサー・キング、チャーチル、スティーヴン・ジョブズ、ヒトラー、スターリン、ウゴ・チャベス、そしてロバート・オッペンハイマーがいます。その何人かは偉業を成したが、多くはその信奉者に悲劇をもたらしました。偉大でないものは、リーダーの目標にはなり得ません。リーダーは、自分に従う者を鼓舞するためなら、他の誰もしないような危険を冒します。多くの場合は間違いですが、時には危険を冒すことが正当化されるのです。
優れた経営者やマネージャーが必ずよいリーダーか?
ゴールを超える成果の達成を追求し続ける中で、必要な変化を起こすために、すべき事をすべて実行するよう部下を追い込む様々な方法を模索するマネージャーもいます。その中には、最終的に次のステップを決定するのに、長い時間かけて部下と話し合って、部下の意見、専門的なアドバイス、潜在リスクの予測にじっくり耳を傾けないとならない者もいます。多くの場合は、部下が提案するアイデアを承認するだけよいのです。本当に有能なマネージャーは、部下が納得してちゃんと理解できるよう、重要な意思決定であればその理由をちゃんと説明するくらいの気配りはするものです。しかし、しばしば彼らは、自分の思う通りにしようとして、取り引きをしたり、妥協したり、お世辞を言ったりします。それは、すべて知っていると思われていないとならないリーダーの普通の振る舞いではありません。信奉者の意見をやすやす受け入れては指導力が危うくなります。
ですので、リーダーに会ったら、彼に従う者もじっくり見て、彼らがリーダーにどれくらい魅力を感じているかしっかり確かめるべきです。リーダーの指導に一字一句従うには、その人の考え方や能力を称賛するだけでは不十分です。リーダーの全面的な優位性を認めて、自分の考えを彼に従属させる必要があるのです。ほとんどの組織は、何をするかはマネージャーが決定する責任を負った公式な階層から構築されていますが、部下は盲目の信者ではなく、自分の考えや批判を述べます。時には特定の変化を阻止しようとさえします。この潜在的な不安定さが、多くの人々に強いリーダーを求めさせ規律を回復するよう仕向けるのです。しかし、従業員すべてから偏見のないオープンな気持ちと批判が無くなれば、組織はもっと多くのものを失うでしょう。
リーダーのよい面:
- リーダーが自身で設定したゴールは、非常に明確であり、ほとんど達成不可能に見えても、すべての活動が集中的に取り組まれ、うまく同期が取られて、比較的短時間で非常に野心的な成果を達成できる、。
- 部下は、士気が高まり、リーダーが自分の能力を最大限引出してくれるのに満足する。
- 高い水準の規律は、見て明らかに分かるほど、組織の動きを非常に効率的かつ効果的にする。
リーダーの悪い副作用:
- 部下は、常に間違った考え方と正しい考え方を区別できるとは限らない。リーダーを批判すべきか、説得して別のやり方に変えてもらうべきか、判断するのは難しい。
- 大きな危険を冒そうとするリーダーの意欲が、時にはとんでもない破局を招く。
- リーダーが居なくなれば崩壊する危険性が大きい。
- リーダーが別のリーダーから火種をもらって、大きな対立を引き起こす。
リーダーにとって極めて有利な点は、泥沼から部下を助け出したり、多くの人には信じられない非常に野心的な目標の達成に導いたりできることです。
それほど野心的でない目標であれば、天性のリーダーとは思われず盲目の信者は居ないが、様々な技術を駆使して事を順調に進められる賢いマネージャーに任せるのがよいでしょう。何か大きな目標を達成するのにどうしてもリーダーが必要で、大きなリスクがあるのも分っているときは、形式的な権限者の代理として、盲目の信者ではない人をもう一人付けて置くとよいでしょう。もちろん、その人は、妨害されずにリーダーをうまく抑えられる人でなければなりません。賢い財務マンなら時にはそのニーズに応えられるかもしれません。
著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。
この記事の原文: Leaders and People who are Led