【ブログVol.96】もっと多く達成しようとする組織を邪魔するのは、いったい何なのか?

2017年8月1日
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制約と中核問題(Core Problem)の違い

このタイトルの疑問は、組織で働くマネージャーとコンサルタントは皆、常に自問自答すべきものです。また、この疑問は、組織のゴール(目標)に焦点を当てたものです。ですので、その答えを得るには、今現在組織全体のパフォーマンスを制限している、相対的に一番弱いところを見つけないといけません。

本当は間違っているが、どこでもよく聞く答えは、「業績を制限しているものは沢山ある…」というものです。 たとえば、もしCEOがもっと賢くて、規制が緩く、経済的に支出を十分賄え、且つ、競合の動きが我々より非効率だとするなら、我々の組織の業績はもっと良くなるはずだという。しかし、そのひとつ一つのインパクトは仮に有っても非常に限定的です。ですので、そんな漠然とした答えをするようでは、疑問そのものに答えていないのはもちろん、その重大な制限要因を大幅に改善するアクションが、何故今まったく行なわれていないのか説明することからも逃避しているのです。

一般的に言えば、TOCにはその疑問に対する答えが2つあります

1つの答えは、顧客までの製品/サービス/価値のフローを今現在制限しているものを探すことです。それをTOCでは「制約」と呼びます。 もうひとつの答えは、Xを行うことが絶対必要だが、Yを行うことも絶対必要で、両方同時にやるのは非常に困難に思われる実務上重大な内部的対立(ジレンマ)を探すことです。その中でも、それら重大な対立の大半を引き起こす源になる対立は、組織全体としてのパフォーマンスを阻害している「中核問題」です。

では、制約と中核問題の違いを理解するために、次の例を考えてみましょう:

Auto-One社は車を国内生産している。実際には、Auto-One社は外国の有名な国際企業が設計した車を組み立てているだけである。政府の支援を受けたこのアイデアは、高い輸入車を買う余裕のない人々に安い車を提供することだった。それで、組み立てた車は違うブランド名で売っているが、元の車のレプリカなのは皆気づいている。元のメーカーの品質が高いというイメージから、元のブランド名で同じ車が相当数輸入されているが、国内生産の車より価格が30%高い。

Auto-One社は、元のメーカーから部品を購入し、ライセンス生産の契約金を支払っている。その会社は組立ラインの能力に内部的に制約されており、顧客への新車の供給リードタイムは6カ月以上になっている。安い車の方を買いたい潜在顧客の中には、長い間待たされるのが嫌で、結局輸入車を買う人も多くいる。

Auto-One社の制約は何でしょう? それを特定したら、どんな改善につながりますか?

中核問題は何でしょう? それを特定したら、どんな改善につながりますか?

上記の自動車を国内生産する会社の簡単な説明には、以下を推測するに十分な情報があります:

  • 組立ラインの設備稼働率の向上は、自動車の生産をスピードアップし、供給リードタイムを短縮する。現在の長い供給リードタイムが潜在的な買い手を締め出しているのだから、このステップを実行すれば、売上/スループットが増加し、スループットの増加で純利益も増加する。
    • 生産ラインの稼働率の向上には、多額の投資と業務費用の増加は不要だと仮定してよい。
    • 上記の仮定は、制約の存在を公式に認めて、それを最大活用し、その活用プランに他のすべてを従属させる、その結果、レスポンスが速まり、完成車の数が増加するという、改善に必要な一連のステップを実行するTOCの方法論に基づいている。(訳注:いきなり投資しないで、先ず現有のリソースで制約を最大活用するという考え方)
  • もう一つの方法は組立ラインのキャパシティを増強すること。しかしこれは、TOCの方法論に従って組立ラインのキャパシティを既に最大活用できており、且つ、以前よりレスポンスが速くなったにも関わらず、まだ供給リードタイムが長くて、顧客を取りこぼしているということなら、理に適った方法である。(訳注:生産ラインのキャパを大きくすれば、スループット(または利益)の増大に効くのかという観点)
    • 組立ラインが24時間年中無休稼動していないなら、単純にシフトを追加すればよい。しかし、増員が必要。望ましい条件は、増員コスト(ΔOE)がスループットの増加(ΔT)よりずっと小さいこと。
    • 最大活用と従属のステップの段階で既に組立ラインが24時間年中無休稼動している場合は、組立ライン内のどこか制約になっている特定の工程を強化しないといけない。
  • これらとは非常に異なるアプローチは、品質が低いと感じられていることを重大な制限因子と見なすこと。市場の価値認識を高めても、組立ラインのキャパシティを増強しない限り、販売台数は増やせない可能性もある。しかし、国内生産車の価格を高くできる可能性が高まる
    • 疑問: 国内生産車の品質は、本当に輸入車の品質より低いのか?
    • もう1つの疑問は、潜在的な顧客の認識を変えるためにマーケティングとして何かできることはないのかということ。本当に品質が劣っているなら、それはそれで1つの課題だ。品質に対する認知が低いだけなら、それはまた別の課題である。ここで理解しておかないといけないのは、品質向上の努力だけでは売上を伸ばすには不十分だということだ。

制約は、現時点で顧客に至るまでの価値のフローを制限しているものです。つまり、その制約がフローの直接的なレバレッジポイントになるのです。言い方を変えれば、制約を最大限に活用し、組織の残りの部分をその活用プランに従属させればよいのです。因みに、この制約の最大活用は短期にフォーカスしたものです。

我々には、この国内生産企業での今の制約は、組立ラインだと分かっています。そして、その能力制約(Capacity Constraint)からより多く引き出す、つまり、月々の生産台数を増やすのは、容易に達成可能な目標です。

一方、中核問題の方は、品質が低いという市場の認識と、その問題を解決しようとする会社を邪魔する要因を論理的に結び付けなければなりません。それに、組立ラインのキャパシティ不足が原因の長すぎる供給リードタイムのせいで、獲得できる市場の需要が不十分だという、もう一つ好ましくない結果(UDE:Undesired-Effect)があります。ですから、「取りこぼす市場の需要を放置したままで、いったいなぜ内部に能力制約がある状態にしておくのか?」という疑問にも、その中核問題は答えられるものでなければいけません。

制約を強化するステップでは、前々から重大な懸念が提起されています: 強化するための投資は、経済的に価値があるのか?

あらゆる組織の究極の制約は市場の需要です。提供する価値に対する市場の認識は、内部の能力制約がアクティブなときでも、その時々の価値を制限します。 このブログの以前の記事「短期と長期のTOCあるいは2つの重要なフロー」で、その話題についてもっと深い考察が述べてあります。

品質が劣っているという市場の認識への対処はリスクを伴います。今の例では、キャパシティを増強すれば販売台数も増えるのはまず間違いないが、唯一心配なのは、十分高い投資対効果が得られるほど売上が伸びるかどうかです。とにかく、大衆のイメージを変えようとすると成功する保証は全くありません。かといって、品質が低いという印象を変えずに、価格だけ高くしようとするのは無茶です。

では、中核問題は何だろう?

事業を成長させるための投資が必要なときは、失敗するのではないかという強い不安が常に付きまといます。投資の失敗による損失が引き起こす極めて好ましくない結果は2つあります。

第1の好ましくない結果は、現状を維持して、現状よりも悪化させないことへの組織の執着です。一時的にでも現状が悪化するのは、内部と株主の双方にとって大きな懸念なのです。

もう一つの問題は、CEOとその企画を提案した人の個人的な懸念です。失敗したということは、決定に関わった個人に重大な悪影響が及び、キャリアが危うくなるということです。

経営陣が、品質が低いという市場の評判を覆そうとせず、キャパシティ増強の明確なプランも無いとすれば、その会社の中核問題は、資金と労力を投じて事業(または会社)の現状を大きく改善するか、それとも現状より悪化させないように大きなリスクは犯さないか、その2つの間の長年の対立だろうと思ってよいでしょう。これはどこにもある中核問題です。

「クラウド(対立解消図)」と呼ぶTOC流の対立表現を使うと、この対立は次のようになります:

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この例では、業績を伸ばす2つの方法を提起しています。1つは、まず能力制約を最大活用して、それができたら制約を強化することです。もう1つは、品質に対する市場の認識を改善して、国内で組立てた車に対する市場の価値認識を高めることです。

制約を強化するとなると、お金と労力(マネジメント・アテンション)を投資する必要があるので、明らかに長い時間が必要でしょう。極めて高い不確実性を計算に入れないとならない場合は、売上の増大を目的とした投資の意思決定が非常に難しいことが中核問題です。

対立の解消、つまりこの中核問題の克服は、対立全体の背後にある根本的な仮定を1つ以上覆すことでしか達成できません。そこで大きな障害は、組織内の幹部全員、普通はどの競争相手も、皆が共有している隠れた仮定(訳注:当然だと思っていること)を暴露しないといけない事です。

たとえば、上記の対立の下段は、新たに大きな投資をしなければ、組織の現状に大きなリスクはないと仮定しています。しかし、国内経済のどんな変化も需要に悪い影響を与える可能性があるので、通常これは間違った仮定です。

車を国内で組立て生産する会社の例に戻ると、元のメーカーが価格を下げたり、もっと安いモデルを投入したりで、国内市場の競争を激化させるような恐ろしい変化も起こり得ます。

下段の背後にあるもう一つの仮定は、投資はすべて非常に危険だというものです。不確実な意思決定をチェックする優れたプロセスを導入することで、ステップをひとつ実行するごとに効果を示すシグナルを注意深く観察するような、段階的な投資方法を採用すれば、その仮定が無効になって対立が解消するかもしれません。大きなブレークスルーを達成する絶好のチャンスを獲得すると同時に、現状を著しく損なわないよう十分注意することは可能なのです。

いづれにしても、提案された変革のリスクと会社が成長しないリスクの両方を認識することは、価値ある第一歩です。小さなリスクは冒す覚悟をすると同時に、潜在的なリスクを少しでも減らす良い答えを見つけだす挑戦が、この中核問題を解決する方向性ではないでしょうか。ゴールドラット博士のチェンジ・マトリックスをベースにAlan Barnard博士が最近開発したテクニックでは、良い答えを考えようという気になる実務的な質問をうまい具合に述べた、一種の二重対立図を提案しています。(訳注:https://www.youtube.com/watch?v=8Ga5o4Fhk90

中核問題とは、現実をじっくり見て、長く当然だと思われてきた仮定に挑もうとする経営者を邪魔するものです。それに対して制約は、より直近の問題であり、我々はもっとずっと良い結果を達成し得ることを、我々自身で実証するのが効果的です。一方、安心できる組織の未来を描くには、中核問題に面と立ち向かい、自分の快適ゾーンに根ざした前提条件に勇気をもって挑戦する必要があり、とにかく結果の不確かさへの恐怖に打ち勝たないとダメです。

 


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著者: エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: What blocks the organization from achieving more?

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/

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