【ブログVol.54】市場にTOCの価値を売り込む

TOCが最高の経営手法であるなら、なぜ我々はそれを売り込むのに苦労するのか?

これはTOCに熱心な人々すべての最も普通の疑問だと私は思います。これは包括的な手法の潜在的な弱点を突いた現実のひとつではないでしょうか。私は、TOC陣営の外にいる人々だけでなく、ゴールドラット博士本人を含む沢山の人々から、何度もその説明を聞きました。現状のTOCの重大な好ましくない結果(UDE:Undesirable Effects)を挙げると次のようになります:

  1. TOCでは、今だに、故ゴールドラット博士が、唯一のリーダーで教祖であり、非常に有名で影響力の大きな人物である。
  2. TOCは多くの考え方を敵にし過ぎる。
  3. TOCが何なのか合意された定義は何も無い。
  4. 世に現れて長い時間が経ったにしては、TOCの評価は低い。
  5. 広範囲のTOCに満足しているように見える人々はほんの少数しかいない。
  6. TOCは、ゴールドラット博士が開発した多くの示唆に富むコンセプトを含むが、それら全体に渡る明確な一貫性を欠いており、それ全体をインプリメントする効果的な方法が見当たらない。

最初の5つは多くの人々から聞きました。6番目は私なりの意見であって、ゴールドラット博士が亡くなる直前まで感じていたのとは違います。ゴールドラット博士によれば、TOCは既に、テンプレートにしてもよいくらい再現性の高い、ロバストな知識体系の域に達していました。私は、現状がそうだとは思いませんが、そうなり得ると信じています。

自分の視点と理解に基づいて、このようなTOCのCRT(現状ツリー)を書いてみました。もちろん、ツリーのすべての繋がりが正しいかどうか、皆さんに吟味していただけるなら歓迎です。これによると、最終的に2つの大きなダメージが生じます:

多くの有望な顧客と学者がTOCを学ぶのを拒む

そして、

今日TOCが実際に生み出している価値は全体的に不十分である

後者は現状の最終的な評価です。問題は、それはゴールドラット博士の何千人もの部下、学生、信奉者が信じる次のことと矛盾することです:

TOCは、ほとんどの組織に極めて大きな価値をもたらす力を秘めている

TOCがマネージメント手法として一般に認められ、極めて大きな価値を生むというゴールをいつか達成するには、今の我々には、TOCコミュニティの指導権を引き継げる、カリスマ性、知性、資質を備えた一人の人物を欠いています。

TOCを未来に継承するには本当にただ一人のリーダーが必要なのか?

これは最終的に、各々自分の力と知識の深さを頼りに単独で活動するか、それとも、他の多くの人々と歩調を合わせ協力し合って上記のUDEを克服して、特に、マーケティングとセールス、インプリメンテーションで大きな効果を発揮し極めて大きな価値をもたらすことができるように知識を統一するか、どっちにするかという個人的な中核対立(ジレンマ)になります。

TOCICOは、TOCコミュニティに新たな成果をもたらす必要条件をいくつか提供しています。そこでは、新しい人々が様々な方法で知識にアクセスできるようにしており、年次のカンファレンスで世界中から集まる人々に会える場を提供しています。そこは、TOCの専門家が自分の能力を示す機会が与えられる場でもあります。しかし、TOCICOは、事業を立ち上げないし、教育もしない、しかもインプリメントの支援は何もしません。 TOCICOは、知識体系を発展させるためのホワイトペーパー開示のプロセスを始めたが、今のところ、あまり多くの反応は無く、新しい知識も出ていません。

TOCのコンサルタントとして取り得る基本的な戦略をいくつか挙げておきましょう:

  1. 個人での活動
    1. TOC、ゴールドラット博士、「ザ・ゴール」というブランドを頼りに、仕事に恵まれるチャンスを高める。それらのプロジェクトは、適用するメソッドに応じて、S&T、TP、TOC流サプライチェーンあるいはCCPMなどと呼ばれる。
    2. TOCという名前を使うのを止めて、顧客のためにどんな重大な問題あるいは大きなチャンスにも挑戦する万能な問題解決者というイメージで自分を売り込む。顧客に大きな価値をもたらす限り、TOCのテクニックを使う使わないには拘らない。
    3. リーンやDDMRP(Demand Driven MRP)のような他の方法論とTOCを組み合わせて、自分だけの特別な優位性としての化合物を提供する。
  2. 実在または仮想の大きな組織に参加するか立ち上げる。そうすれば高いスキルを持つ人々をより多く集められるので、顧客にとって本当に大きな価値を提供できるチャンスを高めことができる。
    • 大きな組織の方が、不足した知識を効果的に開発できるし、正しい軌道を保つ仕掛けとして監査を提案し易い。

少しだけ言うと、大規模なコンサルティング会社は、特定の方法論には執着しないが、大きいことで非常に幅広い経験があるのが競争力になっており、本当にそれが決定的な競争力になっているところもいくつかあります。

そもそも、TOCには非常に強力な国際的な広がりがあり、うまくその経験を持ちよることができれば、極めて広大な経験の蓄積になります。

TOCコンサルタントのあなたが決定的な競争力を獲得できるようなアイデアは他にないですか?

業績を大きく飛躍させるための変革を実行しようと組織の中で一生懸命努力している導入推進者には、注意深く対処しなければならない脅威がいくつもあります:

  • ゴールドラット博士の狂信者と見なされること。
  • 他部門の違う視点の考え方を理解できないこと。
  • 導入推進者が組織図でどの立場にいるかによって、組織内の個人的なパワーゲームに気付かないこと。
  • リスクを特定できず、それを軽減することに目が向かないこと。
    • リスクとは大きなダメージを被る危険性のこと

非常に知識豊富なTOCチャンピオンが内部にいても、外部のTOCコンサルタントをインプリメンテトに関わらせた方が成功の確率が高くなるというのが、私の持論です。部外者の外見としての客観性が内部の緊張を和らげます。もう一つの理由は、部外者の方が、特定の事業エリアでは考えつかない本当に新しいパラダイムを発見する可能性が高いことです。そういう新しいパラダイムは、競争相手が消化するのに非常に長い時間がかかるので、極めて高い価値を生む可能性を秘めているのです。

私たち全員に共通するこの問題について、オープンに話し合いませんか。あなたが思う解決の方向性はどんなものか是非意見をください。


著者:エリ・シュラーゲンハイム
飽くなき挑戦心こそが私の人生をより興味深いものにしてくれます。私は組織が不確実性を無視しているのを見ると心配でたまりませんし、またそのようなリーダーに盲目的に従っている人々を理解することができません。

この記事の原文: Marketing the Value of TOC

全ての記事: http://japan-toc-association.org/blog/